神様、最強の使い魔2
老神龍が間合いを取る。それを見て飛ぶルシエラ、ダンタリオン、ザガン。
「あ、言い忘れてた。虎神と同じで老神龍も神龍も人型でも飛べるからな?」
「貴殿は鬼か!!」
とダンタリオンが叫ぶ。いや、説明し忘れてたの言ったからいいじゃん?
老神龍はトントンと踵を鳴らし空中を見据える。俺は神龍と並んで飛んでいる。先程掛けた補助魔法はまだ効果が続いているだろうから…
「『攻撃力魔法性能上昇』」
コレで黒刀を受け流す事は出来るだろ。神龍が目を輝かせて老神龍を見ている…憧れの爺なんだろな。
老神龍が構えてから一言。
「行くぞ」
一言呟くとその場から消えた老神龍。いや、消えたのでは無い。居合で間合いを詰めたのが消えたかの様な錯覚を起こしただけだ。
ダンタリオンの背後で切りかかろうとする老神龍。しかしさっきレベルが上がったからかダンタリオンは反応して太刀で防御しようとする。でも、それを見ていたロキは「あ…コレはヤバいわ」と判断して魔法を放つ。
「『風波』」
ダンタリオンは柔らかい風に包まれて吹き飛ぶ。老神龍は、
「やり損ねたではありませぬか主よ」
と言う。何事かと此方を見るダンタリオンが居たから説明してやる。
「ダンタリオン…防御するのは良いが、あの居合だとその太刀諸共切られてたから感謝しろ。あの刀は俺特製の業物なんだよ。どんな物でも切れる斬鉄剣だ」
「そんな?!」
驚愕するダンタリオンとそれを聞いて血の気が引いてるザガン。
「主よ。手の内を明かされては困りますぞ」
やっぱり知ってて切りかかろうとしたのか此奴は…補助魔法だけでは補えない戦歴があるな。俺が補助に回ってて良かったわ。ルシエラでも判断出来てなかったみたいだし。
「老神龍?此奴らにも俺の武器で戦わせても良いか?じゃないと死ぬ」
「そうですな…仕方あるまい。汝ら主の寛大さに感謝せよ」
ルシエラは俺の武器だから良いとして、
「ダンタリオンはこっちの太刀でザガンはこっちのレイピアな」
俺の魔力を纏った武器を渡されてどう違うのか分かってないみたいだから説明する。
「魔刀流にしてみろ。性能の差がひと目でわかるから」
2人は「?」となりながら刀に魔力を流し魔刀流を使う。すると驚いて此方を見る。
「「何ですかコレは!!」」
そんな反応になりますよねー?俺の武器って無意味に強いんだよな…ミアのアクセサリーの時も思ったけどさ。
「それで戦え。老神龍といい勝負出来たら記念にやるよ」
「本当ですかロキ殿!!」
ザガンの食いつきが思いの外良い。あぁ、武器注文してたもんな。コレあれば他は要らないからな…喜ぶのも当たり前か。
ダンタリオンは感心してまじまじと太刀を見ていた。
「主よ、そろそろ良いですかね」
「あぁ、いいぜ?」
トンと地を踏む老神龍。また居合か?いや違う。これは…
「お前ら防げ!!」
ロキが声を上げると同時に老神龍が呟く。
「桜花一閃」
フッと消えてまた空中に佇む老神龍。
ルシエラを見る、防御が出来ている。次にダンタリオンを見る。ギリ防御が間に合ったのか体勢が崩れただけだった。次にザガンを見る…
やっぱり戦歴差があり過ぎた。ザガンはレイピアを持っていた左腕と左翼が切り落とされて地上で蹲っていた。
「老神龍…手加減て言葉、辞書で引いてきてくれないか?」
「本気ではありませぬよ?ちゃんと加減をした桜花一閃ですから」
ふぉっふぉっふぉと笑っているロマンスグレーな紳士。
ロキは地上に降り立ち収納袋から部位欠損も治す完全回復薬取り出しザガンに振り掛ける。呻いてたザガンの意識が戻りザガンは手と翼を見遣る。元に戻っているのを見ながら、
「私は…」
ザガンはカチカチと震えながら言葉を探していた。
「あー、無理すんなよ?アレでも加減をしたらしいから、悪意も殺意も無いんだわ老神龍は…」
「私には…私には見えなかった…」
まだカチカチと震えているザガン。それを見たダンタリオンも降りてくる。
「ザガン、先程のは私でもギリギリでした。貴方が弱い訳では無い。あの者が強いのです」
「そうか…」
そう呟くザガン。戦意喪失したかなコレは?と思っていたら意外な言葉を続けて言うザガン。
「彼に勝つとどれくらい強くなりますか?」
お?意外な反応。老神龍に勝つとかなぁ…んー?
「ルシエラもしくはサタンくらいにはなるんじゃね?」
多分?サタンの力量イマイチ分からないんだけど。
「分かりました…続けます。あの者に勝ちたいです」
ザガンの目にギラりと光が宿った。試合続行だな。
ザガンは戦意喪失せず逆に燃えていた。うーん…魔族ってやっぱり戦闘狂なの?部位欠損も治す完全回復薬なかったらお前らヤバいのに。仕方ない1つだけ助言してやるか。
「あー、お前ら不利だから助言。老神龍の間合いなんだが…半径20mだ。この闘技場の広さを考えて行動したらお前らにも勝機はある」
この闘技場約50mくらいだから10mしか隙ないけど。
「主よ…それをバラされては困りますぞ?」
困った感じを1つも見せない老神龍。本当は困って無いだろお前…まぁ、いいや。
「では再スタート」
空中に再び飛ぶルシエラ、ダンタリオン、ザガン。また地を踏む老神龍。トントンと韻を踏む様にリズムを取り老神龍は呟く。
「一刀仙花」
フッとまた消える老神龍。ルシエラを見る、防御をしていた。次にダンタリオンを見る、先程よりも確実に防御をしている。次に…あれ?ザガンが居ない?
魔力探知する。あれ?コレってまさか…
空中に立つ老神龍の背後から左胸辺りにレイピアを突き刺しているザガンが居た。マジかよ。
「ぐふっ…汝よ…やる…な」
金色の粒子になる老神龍。え?一体何があった?
気になったのでザガンに問い掛ける。
「ザガン?お前確実にあそこに居たよな?何で老神龍の背後取れたんだ?」
そう。確実に最初に感じた魔力はあの位置…ダンタリオンの右側から感じられた。でも今は老神龍と神龍の間くらいに居る。俺鈍ったか?
「いや、先日の件が役に立ちましたよ…あの事が無ければ自分はまた地に落ちていたでしょう」
先日の件?何だそれ?
「先日の件って何だ?何かあったっけ?」
ザガンは驚いて此方を見る。
「ロキ殿はもう忘れられたのですか?シトリーの件ですよ」
シトリー?亜空間に封じ込まれたのが役に立ったのか?
「その顔を見るとなんの件か分かってませんね?ドッペルゲンガーの原理ですよ」
あぁ、そんな事あったなとポンと手を叩く。
「て事は…自分のドッペルゲンガーを作って影移動で背後から刺したって事か?」
「その通りです…う…」
ザガンが振らつく。ダンタリオンも同様に振らついている。あー、魔力酔いかな?老神龍クラスの経験値なんて無いもんな。神龍は少し不満気にしていた。
取り敢えず地上に降り立つように皆に言い、酔い止めと冷えた飲み物を配る。
「皆お疲れさん。ザガンは特にお疲れ様、お前の機転で勝てたものだからな」
そう言いダンタリオンはザガンの肩を叩く。
「そんな…自分もいっぱいいっぱいでしたから。それに一度敗れてますし、ロキ殿の助言のおかげです」
「あんな助言でも役に立ったのなら良かったわ」
飲み物をごくごくと飲み干したダンタリオンが言う。
「ザガン、もっと誉れに思うと良いですよ。貴方の機転が無ければ更に延長戦だったんですから」
そう言われて現実味を帯びたのか照れているザガン。
そうこうしていると闘技場の出入り口に誰かが立っていた…あれ?サタンじゃねぇか。何かぼーっとしてる。
「おい、サタン。居るなら声掛けろよ」
「いや、オレ結構前から居たんですけどー?」
「…因みにどの辺くらいからだ?」
「んー?何かロマンスグレーな紳士が刺された辺り?誰あのカッコイイおじ様ー?それとそこの美少年も」
「あ?あぁ、てめぇは知らないんだよな。顕現せよ老神龍」
さっき人型で送還されたからか傷口は塞がって人型のまま普通に現れた。
「こいつは老神龍、そっちの美少年は神龍。2体の神龍の使い魔だ…訳あって人型になってるだけだぜ」
紹介された2体はぺこりとお辞儀する。
「ふーん…使い魔ねぇ。後さー、何かココ異様に魔力波強いのオレの気の所為?」
あ、やべぇ。俺とルシエラ+神龍2体+虎神と老神龍の経験値でレベルが馬鹿上がりしたダンタリオンとザガンが居たら異様な魔力になるわな。
「あー…すまん。勝手にレベル上げしてた。ダンタリオンとザガンはルシエラかてめぇレベルまで上がってる筈だぞ」
「ちょっと!!何してくれてんのさ!!配下が魔王レベルとか辞めてくんない?!」
ダンタリオンとザガンはバツが悪そうに跪き、
「「私共の忠誠は変わらずですよ魔王様」」
とダンタリオンとザガンが言う。サタンはそれなら仕方ないかと諦めた様子で、
「もうそれ以上強くなんないでよー?オレより強いのゼウスかハーデスかロキかお嬢さんくらいで良いんだから」
「「分かりました我が主」」
と頷く2柱。
「ロキもこれ以上の訓練無しだよ!!」
「へいへい。そう言えば此処に居るって事は準備終わったのかよ?」
「あー。うん、玄関先にアモンも待機させて呼びに来たら異様に魔力強くて当てられてたんだ」
だからぼーっとしてたのか。まぁ、それじゃあ使い魔全部見せれてないけど迷宮に向かいますかね。