神様、訓練の結果
皆の覚悟を見てからロキは空中に浮かぶ。
顕現した神獣虎神は「グルル…」と唸り様子を伺う様に地面をうろついている。ダンタリオンとザガンは翼を出してルシエラと3人で空中に飛び様子を伺っているみたいだか、空中だと安心してはいけない。この金毛の虎は空中戦も出来る。
ルシエラが一番に気付いたのか、
「皆さん来ます!!」
と言い右にステップを踏み避けるルシエラ。他の2人は何事かと見ていると避けたルシエラの横すれすれをその虎は横切って空を踏む。
「そんな!」
「まさか?!」
ダンタリオンとザガンが叫ぶ。
「あー、言い忘れてた。虎神は空中戦も出来るから飛んでても来るからな?」
「本気ですか…」
はははと乾いた笑いのダンタリオン。
「ロキ殿は鬼ですよ!!」
と怒るザガン。
「レベル上げの訓練だろ?コレくらいの事で根は挙げないよな?」
「「くっ!」」
2人は黙り集中する。ルシエラは援護の為にダンタリオンとザガンの後ろまで飛んでいき、
「『物理防御率上昇』」
と唱える。物理攻撃吸収の魔法だな…当たり前か。ルシエラは続けて、
「『魔法防御率上昇』」
魔法攻撃吸収の魔法か…ルシエラ基礎は出来てたんだな。俺何にも教えてないけど、書物でも見たのか?
ダンタリオンとザガンも補助魔法が掛けられたのが分かったのか体勢を変える。ダンタリオンが右から周りザガンは左から回り込む。
俺?虎神の後ろで浮遊してるよ?
ダンタリオンの太刀が虎の脇腹を振り被る。左にステップした虎をザガンがレイピアで突く。だが、ザガンの武器が弱いのか魔刀流が上手く出来てないのかカキンと弾かれる、ザガンはバックステップを踏み体勢を立ち直すとそこにダンタリオンが大きく太刀を振り下ろす。背中に僅かながら傷を負った虎。
「おー。初めて対峙するにしてはやるじゃんか。ルシエラも基礎が出来てるぞ」
ルシエラは何処か嬉しそうだ。ザガンが、
「ロキ殿!この神獣には弱点はあるのですか?!」
「教えたら訓練にならないだろ?」
「ちっ」と舌打ちをして体勢を整えるザガン。それに比べてダンタリオンは何処か余裕があるような気がする。
ダンタリオンが太刀を構えて見据える。魔刀流のオーラが強くなったか?気の所為かと思ってたけど、確実に強くなってる。ダンタリオンて実はやれるヤツ?
「ザガン!右に半歩避けてください」
ダンタリオンが言う。ダンタリオンの指示に従うザガン。ステップを踏むと虎はザガンを捉えてるのかダンタリオンの動きに気付かずザガンを追う。ダンタリオンは左から真横に向けて虎の首に太刀を振る。
すとんと虎の首が落ちる。
あれ?やっぱりダンタリオンて実は強い?金毛の虎はキラキラと消えていった。虎は死んだのかって?そんな訳ないだろ。送還されただけだ。
「ふぅ…」
肩で息をするダンタリオンと必死だった様子のザガン。ルシエラは出番があまり無くて不服そうだ。
「なぁ、ダンタリオン…お前って実は強いのか?」
ダンタリオンは照れくさそうに、
「昔聖戦でやんちゃした賜物ですよ」
「それにしては力量に合わない魔力量じゃないか?」
「あぁ…それは私は止めは刺してないからではないですか?天使族の翼を切って放置していただけなので」
あー納得。絶望させて放置か…悪魔だな。くつくつと笑ってしまう。ザガンはどういう事だと言う感じで見ている。
「ザガン?お前が弱い訳じゃねぇよ…ダンタリオンはメンタリストだろ?心理的に絶望感を与えて止め刺してないから、それ程経験値を得てなくて魔力量は少ないんだが実技は上級者なんだよ。慰めになるか分かんねぇけど、ザガンのがまだ歳いってないんだろ?見た感じ同世代にも見えるけどサタンて例が居るから年齢なんて当てにならないしな」
笑いながら話していると経験値が入っていっているのが分かるのかダンタリオンとザガンが手をグーパーグーパーと握ったり開いたりしている。
「何か内側から力が沸き上がって来るんだが」
とダンタリオン。
「確かに何か大きな力が湧いてくるな」
ザガンも言う。そりゃあそうだ、天使族500人分の経験値を侮るな。
「ザガン、元素魔法何でも良いから唱えてみろよ。無詠唱でもいけるかもだぜ?」
ザガンは「?」となりながら、
「では試しに無詠唱で…」
ザガンの指先からボワッと炎の柱が上がる。実験室で出た威力より大きいからかビックリしてるザガン。訓練の成果は出たようだ。
「所でロキ殿?先程の虎は死んだのですか?」
あー?やっぱり気になるのか。
「いや?死んでねぇよ?送還されただけだ…顕現せよ神獣虎神」
ふわりと降り立つ傷一つない金毛の虎。
「ロキ殿には驚かされる事ばかりだ」
はははと笑うダンタリオンとザガン。ルシエラは虎神の毛並みが気に入ったのか撫でまくっていた。取り敢えず訓練の成果は出たな。
ダンタリオンとザガンを観察する…もう少し上げても良さそうだな。今でルシエラの半分くらいかな?
まじまじと観察していたらルシエラが飛んできた。
「虎神さんの毛並もふもふで気持ちいいんですけどー」
虎神に抱き付きながら満足そうに笑みを浮かべるルシエラ。
「なんだ?気に入ったのか?」
「勿論ですよ♪」
そういえばうちペット飼ってないもんな。ルシエラはもふもふ属性だったのが分かった事だし今度は他の神獣も見せないとな。
一方その頃。
サタンはと言うとロキ達が訓練してる間に荷物の整頓をしていた。いつも眺めていたお宝は片付けて侍女達が部屋の掃除に入ってきても良い様に隠しておく。この時のサタンは知らなかった…ロキの千里眼によってセーレに部屋を見られていた事に。
「んー?こんなもんかな?後はオレの必需品を収納袋に入れてっと…あれ?これは…」
片付けてた端で1つの本を取る。
「あー!!懐かしい♪ロキの初めての写真集じゃん」
手に取りペラペラと捲っていく。
「この頃にはオレって魅了されてたんだよな…フフフ」
色んな角度で撮られてる無表情のロキ。この頃には珍しいカラーの射影機をロキが作って、そのモデルにされたんだっけ?可愛いけど…今のロキが一番最高。劣化しない神…少年とも青年とも呼べる表情をするロキ。魔性を落とす呪いにでも掛かってるかの様に、周りを魅了する容姿。ダンタリオンも認めた無表情に思考が読めない強者。それをサポートするお嬢さん。あの2人に認められたオレ…くぅー!!死神の目持ってて良かった!!お店にも通い続けて良かったー。
あれ?でも、オレってお嬢さんが認めなかったら友達になれなかったのかな?そう思うと異質な目で見たのは当たりなのかなー?でも、ハーデスもお店に行ってるのに何故オレなんだろ?ハーデスも死神の目持ってるのに疑問に思わなかったのかな?
むむむと考えてるとサタンの部屋にノックの音がコンコンと響いた。なんだろ?とサタンは、
「誰ー?」
と扉に向かって問いかける。すると扉越しで侍女頭のマモンが応える。
「サタン様、マモンです。ロキ様とルシエラ様はダンタリオン様とザガン様と闘技場で何か訓練をなさってる様子ですが、まだ準備が掛かる様でしたら申し上げて参りますが…」
んーっと考えるサタン。
「うん!まだ時間は掛かるかもだからもう暫く自由にしてて良いよって言っておいてー」
「畏まりました」
扉越しでもお辞儀をして去るマモン。
ハーデスの事は逢った時にでも確認するかな。てか、訓練て何してるんだろ?少し気になる…取り敢えず片付けの続きしないと…
一方闘技場。
「疲れたか3人共?」
ロキはそう問いかける収納袋から飲み物を差し出していくと、
「私補助の魔法しか使ってないので不完全燃焼です」
と少し不満を洩らすルシエラ。
「私は久しぶりの経験値獲得。しかもこんなに大量の力が漲るとは…不思議な感じとしか申しあげれないですよ」
と感嘆しているダンタリオン。
「ははは…本当にロキ殿は素晴らし過ぎる」
魔族の使い魔ってすぐ死ぬよね。弱いのかな?
「所でロキ様?私1度も神獣見たことなかったんですけど、いつから仕えてたのですかぁ?」
んーっと…虎神が仕えたのっていつだったかな?
「すまん、正確な時期忘れて覚えてない」
ロキはバツが悪そうな顔をする。
「忘れない脳じゃないんですかロキ様。むー…他にも神獣いるんですか?」
「いるよ?見たいか?」
「全部見たいです!!」
ルシエラとそんな会話をしていると闘技場の入り口付近でダンタリオンと侍女が話をしていた。気になったので声を掛ける。
「どうしたダンタリオン?」
そう問いかけるとダンタリオンが此方に向かって言う。
「侍女達の伝言を聞いていただけですよ。侍女達から伝言ゲームみたいに素早く連絡が行く様になってるんですよ。サタン様はまだ時間が掛かるからもう暫く自由にしていいとの事らしいです。所で貴殿は神獣を他にも仕えているのですか?」
「ルシエラが見たいって言ってたから全部出すよ?因みに虎神以外に11体仕えてるよ」
ロキは老神龍、神龍、麒麟、鳳凰、虎神、神狼、犬神、白狐、神蛇、白鴎、神鳥、黒鼠と最後の黒鼠は神獣か不思議な所だが仕えてる。
俺っていつの間にこんなに集めてたんだ?最初老神龍と語り合いつつの闘い合いつつの7日間だったしな。でも、その分お互いに絆はかなり深まったんだよな。神龍は老神龍が信頼している者を疑わないからすんなり行けたしな。それだけの実力者なんだよ老神龍って。神龍も強いんだけど。
さて、誰から出しましょうかね。