神様、一柱が消えて
朝食を終えるとサタンは用意をすると言うので暫く自由時間を与えられた。先ずセーレに話し掛ける事にした。公爵の一人が消えたからか侍女達がバタバタと慌ただしくしているのは気にしないでおく。
「よう、直球に聞くがお前はシトリーが苦手だっただろ?」
セーレはその質問に少し戸惑い言う。
「見破られてましたか…アナタの言う通りです。ボクはシトリーが嫌いでした。ただ欲のままに動き、手段を選ばない卑怯者など好きになれますか?」
まぁ、そうだよな。普通のヤツはそう考えるわな。
「アイツが深淵に閉じ込められて何か思う事あったか?」
セーレは頭をふるふると横に振る。
「いいえ…寧ろざまぁみろって思いましたね。ボクのコト嫌なヤツだと思いましたか?」
ロキはふむと顎に手をやり言う。
「いいや、素直な方が俺は好きだぜ?サタンは素直過ぎてあほなヤツだと思うが、昔からの馴染みで友達1号にしたんだからな。ルシエラも気に入っているみたいだし」
セーレは何処と無く安堵したかのように微笑みながら言ってきた。
「ボクのコト軽蔑しないんですね…アナタはホントに寛大な方だ」
ふふふと微笑むセーレ。あの状況で口も手も出さなかったからシトリーの本性を分かってたからなんだろうなと思ってたし、セーレは新規顧客だ。あ!でも、これは言っておくべきだな。
「セーレ?お前はヴィーナス2号になるなよ?」
セーレはきょとんとして聞き返す。
「ヴィーナス2号とはどう言う意味ですか?」
ロキはその言葉を聞きくつくつと笑い、
「サタンに聞いてみろよ。面白い話聞けるぞ?」
セーレはそう言われると溜息を吐く。
「ボクがアナタに関わる話でサタン様と仲が悪いのは知ってるでしょう?」
んーっ?とロキは考えて、
「サタンはヴィーナスに関しては言ってくれると思うぜ?」
更にセーレはきょとんとして、
「どうしてそこまでハッキリと言えるのですか?」
「サタンは昔からの馴染みだからな、考えてる事くらい分かるさ」
そこでルシエラも会話に参加してきた。
「あの御方はあほですが、信用に足る素直な方ですよ?と言うより隠し事の出来ないあほな方です」
セーレは、はははと笑う。
「ルシエラさんの信用も得てるのですねサタン様は…少し羨ましいです」
ルシエラは更に言う。
「セーレ様?アナタも素直ですよ?ただヴィーナ様と同じ匂いを感じたので警戒してたのですが、シトリー様のやり取りの際に何も手出ししなかったので本性を見る目があると判断しました」
微笑みながら言うルシエラ。よしよしとルシエラの頭を撫でるロキ。
「そう言う訳でこれから顧客として宜しく」
ロキは手を差し出す。セーレは戸惑いながら手を握り返してきた。
「こちらこそ信頼して頂きありがとうございます…所でサタン様はどうやって天界のアナタのお店に伺っているのですか?」
ん?何でそんな事聞くんだ?
「サタンは普通に飛んでくるぞ?」
「流石魔王様ですね、ボクの力では飛んで辿り着くことが出来ないと思います…通販とかはして無いのですか?」
んーっと考え…あっ!と閃く。
「セーレの力が足りないのならコレで俺に注文しろよ。出張受注してやるよ」
簡単な式神を造り出す。
「コレで俺に連絡出来るぞ?」
「神獣?コレが式神ってアナタの力には驚かされてばかりですよ」
「そうか?因みにそいつ宿主の成長に合わせて進化するからな?」
えっ?!と驚くセーレ。
「魔族でも素直なヤツなら綺麗な龍になるよ。邪な心があれば醜い姿になるって感じでな」
へぇっと関心しているセーレ。
サタンの準備まだかなぁ?と考えてるとルシエラが額をくっ付けて来た。どうしたんだろうと思いそのまま額をくっ付けながら待っていると、
「ロキ様の千里眼には劣りますが風の精霊の力であの御方の現状が分かりますので見せます」
サタンが魔法収納袋に荷物を入れていってる。てか、部屋に写真集ありすぎだろ!!あほなのかアイツ。
「見えましたかロキ様?」
溜息を吐きながらロキは言う。
「アイツ本当に俺の事好きなんだなと再確認したわ」
「それは昔からですよロキ様」
くすくす笑うルシエラ。セーレが何の話をしてるのかよく分からない状態でぽかんとしていた。
「あー、セーレは余り魔力量が少ないから教えれないが…俺は千里眼とか色々使えるんだよ。ルシエラはそれを手本にして自分オリジナルの千里眼もどきを作ったって訳」
ドヤ顔のルシエラ。セーレは不思議そうに見ている。
「ん?セーレも体験してみたいか?」
ビックリするセーレ。
「ボクなんかが宜しいんですか?」
ロキはルシエラに目配せする。ルシエラは指を丸にしてるのでOKとの事。
「ルシエラの許可も出たし良いみたいだぜ?」
セーレは考える様にして、
「じゃあサタン様の部屋見たいです!あの方部屋見せてくれないんですよ…」
あの大量の写真集のせいだろな…多分。
「良いけど…多分驚くぞ?」
セーレはきょとんとして、
「何かあるのですか?」
ロキは少し悩んでから、
「見た方が早ぇよ」
セーレの額に額を当てる。至近距離だからかセーレが真っ赤になった。
「見えるか?あれがサタンの部屋だ」
部屋の光景に絶句するセーレ。
「あの、見間違いで無ければいいのですが…あれ、ロキ様の写真集ですよね?」
「間違ってないも何もそうだが?」
「サタン様が執着する訳ですね」
ロキもセーレも乾いた笑いしか出ない。それ程の写真集があったからだ。
取り敢えずその事を忘れて、ザガンとダンタリオンの魔力を探知する…ん?2人の反応が近い?話でもしてるのか?大広間を見渡す…あ!隅の方で何か話してるみたいだな。話し掛けて良いものかと悩んでいるとルシエラがパタパタと飛んできた。
「ロキ様?どうしたのですか?話し掛け無いのですか?」
ルシエラの言葉にロキは反応出来ずにいた。2人が談笑してるんだぞ?割り込めるか?言葉にはしないが内心そう思っていた。
「ルシエラ?あの2人若干仲違いしてただろ?」
ルシエラは、んー?と考えて応える。
「そうですかね?確かにプライドの争いはあったみたいには感じましたがロキ様のお陰で丸く収まったみたいですよ?」
そうなのか?確かにギスギスしては無さそうだが。
「アレ俺が話し掛けても平気だと思うかルシエラ?」
ルシエラはこくりと頷き、
「寧ろ好都合かと」
親指を立ててグッとするルシエラ…ホントに大丈夫なのか?まぁ、することも無いし予定聞くか。ザガンとダンタリオンに近付き、
「何か楽しそうだな?俺も混ぜてくれよ」
ザガンとダンタリオンが此方を見て。
「貴殿か…丁度、貴殿の話をしていた所です」
と、ダンタリオン。それに続いてザガンも、
「先程の話をしていたのですよロキ殿」
先程の話?なんのことだ?
「シトリーの事ですよ」
ザガンが分からないと顔にでも出ていたのか応えてくれた。
「あぁ、公爵まで登り詰めた新参者だっけ?サタンからそんな感じに言われたが」
するとダンタリオンが、
「彼奴は卑怯な手を使って君主まで登り詰めたんですよ…魔族は欲に忠実。だが嘘偽りは語らない…なのに彼奴は嘘を飄々と吐き、ましてや偽りの噂を流したり手に入れられなかったモノは力づくで手に入れる。そんな奴と仲良くする者なんて上辺だけですよ…私は上辺すら嫌でしたがね」
ザガンがうんうんと頷いている。
「自分も嫌ですよ…ロキ殿の従者ですか?墓守と一緒に深淵の穴を開けた時は奴の身から出た錆と言うか、ざまぁみろと思いましたね」
ふーん。そこはセーレと同じ意見なんだな。
「アイツそんなに嫌われてたのか?」
ロキは素直に言う。
「大半の者は嫌っていたと思いますよ」
とダンタリオン、ザガンも頷いている。ふーん…そんなものなのか。
「あ!お前ら今から予定あるか?サタンが準備に手間取ってるんだよ」
「私はポーション作りに勤しみたいですね」
とダンタリオンは言うとザガンも続けて言う。
「自分もレベル上げる前に魔力の調整をしようとしていたとこだ」
「それなら2人時間あるな?教えたいこともあるし2人まとめてするか」
2人は「?」としてるが無視して2人の手を取り転移魔法を使い昨日の部屋にきた。
「此処は…昨日の実験室ですか?」
と、ダンタリオン。
「あぁ、そうだが?」
ザガンが口を開く。
「ロキ殿は本当に規格外ですね…驚かされてばかりだ」
んー?転移魔法教えても良いんだが、コイツらの魔力量だとイマイチ不安なんだよな…すぐ魔力切れしそうだし。
「今度でもいいなら転移魔法教えても良いが…お前らの魔力量だとすぐ魔力切れしそうだぞ?」
そう言うと2人は目をキラキラさせて此方を見遣る。
「「是非教えて頂きたい/是非教えて頂きたいのだが」」
食いつき半端ねぇな。まぁ、良いか。
「取り敢えず魔力抑えた俺と同格の奴連れてくるわ」
実験室から大広間に居るルシエラの位置を確認してひょいと跳ぶ。大広間からあの実験室て何分するんだっけ?考えてみたが無駄な事だと思いやめた。
「ルシエラー?来い来い」
ん?とロキの存在に気付きルシエラが飛んでくる。
「ロキ様いきなり跳ぶなんて酷いですよ!せめて一言指示してから行ってください…手持ち無沙汰だったんですから」
プンプンと膨れるルシエラ…いや、可愛いんだけど、今は言わないでおこう。
「ルシエラが行った方が好都合って言ってたじゃないか?」
「そうですけど…跳ぶならせめて何か言ってから跳んで下さい」
「悪かったよ。今度から気を付ける」
ルシエラの頭を撫でてやる。
「今からルシエラを勉強がてら連れて行くが良いか?」
ルシエラはきょとんとして、
「ロキ様が居るなら何処にでも行きますよ?」
頼もしいなルシエラは…さてと許可は得たし行くか。ルシエラの手を取り実験室に跳ぶ。