神様、一悶着の結果
ルシエラと共に部屋に戻るとファントムはいつもの様に作業をしていた。ルシエラがファントムに近付き何かを言うとファントムはロキに向かい言い出した。
「旦那様!!そんな事がございましたか!!闇の眷属に力を借り部屋の守りを強固にしておきますので安心してお眠り下さい」
とお辞儀をして作業に戻るファントム。ルシエラが経緯を言ったみたいだな。
「ルシエラー?俺、シャワー浴びてくるけど…先に寝ておくか?」
とロキが言うとルシエラは、
「待ってください…風の精霊に力を借りるのでまだ起きておきますよー」
と言ってきた。
「んじゃ、俺シャワー浴びるわ…何かあったら呼べよ?」
ルシエラはぷくーっと膨れて、
「何か有り得るのはロキ様ですから!!」
とプンプンと怒っていた…そんなに悪いのかアイツ?
「分かったよ…んじゃ、すぐ上がるから」
と言い、着替えとタオルを持ちバスルームへ向かう。ルシエラはファントムと話し込み始めた。バスルームに入り魔眼でシトリーを視る。
「何か俺の分身体抱き抱えられて寝られるのゾワッとするしな『遠隔逆巻け円環』」
遠隔のモノを元の状態…分身体は魔法で象られたモノなので無の状態にしておいた。
「一先ず悪寒のする物は取り払えれた…シャワー浴びるか」
頭から全身を洗い終えバスルームから出る。
タオルで髪の毛をわさわさと乾かしていたらルシエラが近寄って来た。
「どしたー?ルシエラ」
近寄って来たルシエラを見つめる。
「ファントムさんがウィル・オ・ウィスプさんと連絡が取れたみたいなので伝えに参りました」
「ウィル・オ・ウィスプと?!マジかよ」
ルシエラはコクコクと頷きファントムの所へ引っ張って行く。
「ファントム、ウィル・オ・ウィスプと連絡取れたってマジか?」
ファントムはさも当然の様に、
「左様です。旧知の仲なのですぐに応援をお願いを申し上げたら受けて下さりました」
「偶にファントムの連絡網が知りたくなるわ」
ロキは、ははっと笑う。
「元々友だったのですから快く引き受けて頂けましたよ」
微笑むファントム…書類整理はほぼ終わってるみたいだな。
「ファントムはリビングで寝るのか?」
ファントムは、あぁ…と言いたげに言ってきた。
「本来我々闇の眷属は…と言うよりも聖霊や精霊は寝る必要無いのですよ。リビングで身体を休ませてるだけなのでいつもは変な輩が来ない様に見張っているのですよ」
え?聖霊て寝ないの?ルシエラって寝てるよな?
「ルシエラ…お前は寝てるよな?」
きょとんしてルシエラが言う。
「私はロキ様の顔を眺めて子守唄を唄ってますよ…酔うと寝てしまうみたいですが」
てへへと笑うルシエラ。待て待て待て?
「て事はあれか?俺が安眠できるのはルシエラの子守唄のお陰か?」
ルシエラ更にきょとんとして、
「多分?」
そこで疑問が沸いた。
「俺ルシエラの子守唄聴いた事ないぞ?」
ルシエラは普通に、
「ロキ様に聴こえない音で唄ってますからね?」
どういう事だ?ルシエラが説明をする。
「個々によって聴こえる音と聴こえない音があるのです。ロキ様この声聴こえますか…『あーーーーーーー♪』」
ロキには聴こえない。ルシエラが、
「分かりましたか?これが声量の加減です」
ロキはファントムに向かって、
「ファントムには聴こえたのか?」
ファントムは普通に、
「先程のは精霊の音声なので私には聴こえました」
ふむ、共振しない唄い方があるのか。まぁ、良いや。
「ルシエラ、守りは徹したか?」
ルシエラこくりと頷き、
「ファントムさんのお陰で概ね出来ました…寝ますか?」
んー、疲れたし朝も早いから寝るかな?
「そうだな、寝るとしよう。ファントムはキリがいい所で作業やめておけよ?」
「痛み入るお言葉でございます」
ファントムは書類を収納袋に入れてリビングに向かった。ロキ達はベッドに寝転がる…いつもの様にルシエラの膝枕で寝るとする。
疲れたのかルシエラの唄のお陰かすぐに睡魔が来た。明日はどうなるのやら…〖神のみぞ知る〗なのかな?取り敢えず寝よう…
「おやすみ。ルシエラ」
ルシエラは微笑んで、
「おやすみなさいませ。ロキ様」
軽くキスをする。今日は散々だったな…睡魔が来てすぐ眠りに落ちるロキであった。
翌朝。
ロキは欠伸をしながらルシエラと共にリビングに向かう。
「ファントムおはよ。昨日は良く寝れたわ…ありがとなルシエラ、ファントム」
ファントムはお辞儀をして、
「勿体なきお言葉でございます」
と恭しくしてきた。ルシエラは耳をピクンとさせて、
「ロキ様何かあったみたいですよ」
と言う。どういう事なのか聞いてみると、
「大広間に行けば分かる思います」
風の精霊とコンタクト取ったみたいだな。
「なら時間も良いし大広間に跳ぶか」
ルシエラの手を取り瞬間魔法を使う。ファントムはロキに気付かれない様にロキの影に潜む。ひょいと大広間に着くとシトリーとサタンが言い争っている?いや、シトリーが言いがかりを付けているかのようだった。サタンがロキに気付きシトリーを無視して、
「あ!ロキおはよー♪」
と言う。シトリーはそれを聞いてピシッと止まりこちらを見遣る。
「何かあったのかサタン?」
サタンは何でもないかの様に、
「どうでもイイ話だよ」
と言い放つと、シトリーはそれを聞いて怒鳴る。
「どうでもイイとはどういうコトですかサタン様!!」
あー?これってもしかしてあれか?と何か察したロキ。
「シトリー?お前がサタンに激怒してる理由当ててやろうか?俺の分身体が無くなったからサタンに言いがかり付けてたんだろ?」
ピシッと固まるシトリー。
「どうしてアナタがそれを知って…まさか?!」
溜息をつくロキ。
「そのまさかだよ。分身体を消したのは俺。サタンが盗ったとでも思ったのか?」
わなわなと震えるシトリー。
「ですがアナタは昨日の夜は扉越しで話をしたからボクが分身体を再構築してるなんて知らない筈では…」
サタンがそこで割って入る。
「ロキとそこのお嬢さんを侮らない方がイイよ?痛い目見るからねー?」
シトリーは激怒した。
「ボクが…ボクの欲しいモノが手に入らないなんて有り得ないんだ!!」
ぶわっと黒い邪気がシトリーを覆う。サタンはあーあと言った感じ見ていると、ロキの影からファントムが出て来た。
「貴方が旦那様に危害を加えようとした者ですね!赦しません!ウィル・オ・ウィスプ行きますよ」
そう言い放つとファントムの脇からウィル・オ・ウィスプが姿を現す。
「友の願いとあらばOKさ」
「「『死の終焉空間』」」
2人がハモり唱えると深淵の穴が垣間見えた。サタンがやれやれといった感じで言い放つ。
「シトリー?汚い手を使ってまで公爵に上り詰めたのまでは見逃してきたけど、今回はダメだよ?王の宴会で薬を盛るとか…とんだ恥晒しもいい所だからね?千年程反省してきなさい」
シトリーは闇に吸い込まれて行く。
「そんな!!ボクが!?ボクがー…」
言い終わる前にシトリーが闇に飲み込まれた。
「ファントムありがとな…後、ウィル・オ・ウィスプだっけ?初めましてじゃないよな?」
ウィル・オ・ウィスプはかかかと笑い、
「良く覚えとるの坊主。ファントムがヌシと契約する時に遊んでた精霊の中に居たぞ」
「やっばりな。俺は見たら忘れないからな…あ、あのさ?そこに居るサタンと契約してくれねぇ?」
きょとんとした顔でえっ?とはてなが飛んでる状態でコチラを見ているサタン。
「コヤツか?うむ、魔力量も魔族の王だけあってまともじゃの…良いぞ。サタンとやら指を出せ」
サタンはおずおずと指を差し出す。ウィル・オ・ウィスプがサタンの指先を先端の尖った針の様なモノで刺し血が垂れる。
「この血によって契約が成された。ヌシが使いたい魔法は我が聞き届けよう」
サタンはぽかんとしていた。ウィル・オ・ウィスプは用事は終わったと判断したのか姿を消していた。
「良かったなサタン!これでてめぇも魔法使えるぜ?一応傷治してやるよ『回復』」
「あ、あぁ。そうなんだけど、なんで墓守が居たの」
少し状況判断が遅れたみたいだ。
「あぁ、俺の執事と旧知の仲らしいぜ?それに魔法教えるって約束してただろ?」
「よく覚えてたね…ありがと」
まだ良く状況を飲みきれていないサタンを他所目に、
「そう言えば他の面子は…居るな」
アモンとザガンとダンタリオンとセーレ…後はパイモンとブエルとブネとファラスが居た。皆ポーションのおかげか顔色は良い。
セーレがおずおずと近寄って来て、ロキとサタンに言う。
「あの、シトリーは一体どうなさったんですか?」
と聞いてきた。サタンがそれに応える。
「あの子はねー、とても痛い子なの。アモンの調べでも分かってるんだけどね。だからロキの執事と墓守が深淵に封じ込めてくれたって訳。平気で嘘を吐くんだから今回は罰を与えたって訳だよ」
「え?!平然と嘘を吐いたのですか?」
「そうだよー?」
「そういう事なら分かりました」
と自分の席に戻るセーレ。他のヤツらは気にもしてない様子だった。いつもあんな感じだったのかなシトリーってヤツは…
そうこう考えている内に朝食が運ばれてきた。
「サタン?今日こそは迷宮行くからな?」
サタンはいつもの調子に戻っており、
「分かってるってばー!それよりご飯食べよ♪」
魔法を使えると分かったのか嬉しそうにしてた。