神様、一悶着
ルシエラが髪の毛等を殆ど乾かさずに濡れたまま浴室から出てきた。
「ルシエラー?学習しろよー」
やれやれとタオルを出してルシエラを拭く。
「中々乾かないんですよー…それに洗面所ってむわっと湿気で暑いんですから」
ルシエラはプンプンて感じに膨れてる。
「はいはい…『乾燥』」
ふわっとルシエラを乾いた温風が包む。
「流石ですロキ様!」
満面の笑顔でくるくる回るルシエラ。
「ルシエラさっきの聞いていたか?」
「シトリーさんの事ですか?」
あぁ、やっぱり聞こえてたのか。
「ルシエラはアイツの事どう思う?」
んー…と考えてルシエラは応える。
「セーレ様よりタチが悪いと思いますよ?」
「マジで?!」
ロキが驚く。
「私はロキ様に嘘は言いませんよ?ロキ様が与えてくれた能力〖善と悪を見抜く翼〗に賭けても言えますよ?セーレ様はそれが分かって何も言って来なかったのでしょうし、それにシトリー様は悪の塊です…サタン様は配慮が出来るから許していますが、シトリーさんに関しては関わりを持たない方が良いかと思います」
ロキは机に突っ伏して…
「マジかよ…だりぃ…」
ルシエラはその様子を見て、
「ロキ様の魔眼は千里眼にもなりましたよね?」
「あ?あぁ、そうだが?」
なんの事だろうロキはルシエラを見つめる。
「シトリーさんの今を視てみてください」
ん?それで何か分かるのか…一応視てみる。
「OK。部屋に居るみた…ん?」
ロキはその様子を視て驚く。
「俺の分身体抱き抱えて寝ようとしてる…」
ゾワっと鳥肌が立ってしまった。
「お分かりになりましたロキ様?」
「あ、あぁ…でも良く分かったなルシエラ」
あぁ、それはとでも言うように続ける。
「私はロキ様の支えであり護衛でもあるのですよ?風の目を侮らないでくださいな」
ニコッと微笑むルシエラ。
「ルシエラは本当によく出来た妻だよ」
ルシエラはきょとんして、
「と言うか、クッキーは普通に盛られてましたよ?」
ロキは驚いて、
「はあ?!ルシエラ普通に喰ってたしシトリーも盛ってないって言ってたじゃねぇか!!」
「私は聖霊ですよ?負の感情に飲まれない限り何でも来いです!あの方は平然と嘘を吐くみたいですね」
神妙な顔のルシエラ。
「ははは…ルシエラ、お前本当に強いな…お酒には弱いのに。因みに何が盛られてたんだ?」
「んーっと…媚薬入りが数枚、麻痺薬入りが数枚でしたかね。ロキ様に食べさせない為に私が全部頂きました。風で風化させたので平気ですよ?」
「シトリーの目的はなんだよ?」
「風の精霊が言うにはロキ様を手中に収めるのが目的らしいです。サタン様達等を無視してでも手に入れると呟いていたみたいですよ?」
怠そうに椅子に座りプラプラと足を投げ出しているロキ。
「先手打つしかねぇのかな?」
「ロキ様?こんな時だからこそあの御方が役に立つと思いますよ?」
ルシエラがあの御方と言うのはサタンしか居ない。
「ルシエラ…来い」
「シトリーさんの方は大丈夫ですか?」
「千里眼だと部屋で寝ようとしていたから多分平気だ」
ルシエラの手を取りサタンの魔力を頼りに跳ぶと大広間に着いた。
「大分片付いているが、サタンはと…居た」
「おい、サタン!」
「んぅ?ロキー?」
目をゴシゴシ擦りながら此方を見る。
「これ飲め」
2本のポーションを取り出す。酔い覚ましのポーションと上位回復薬。
「さっきルシエラが教えてくれたんだが…シトリーの奴やべぇよ」
「どゆことー?」
ポーションを飲み干してきょとんとしているサタンにさっき迄の経緯を教える。するとサタンは彼がどうして今の地位についたかを教えてくれた。
「彼は新参者なんだけど、めきめき力を付けてね…公爵の地位に就いたんだよね。欲しいモノは手に入れる…それが彼の忠実な欲だよ」
「もし手に入れれなかったらどうなるんだ?」
サタンは難しい顔をして、
「言いたくないけど…力の限り暴走してしまうかな?」
「サタンこれ視てみろよ」
サタンと額を合わせて思念伝達で視野を繋げて千里眼発動…発動先はシトリーの部屋。
サタンが、まさか…とでも言いたそうな顔をしている。
「ロキ?あれロキの分身体だよね」
「認めたくないが…ミニチュアの俺だな」
「はぁ…ロキって魔性を堕とす呪いでもかかってるんじゃないの?」
「そんな呪い要らねぇよ…何か改善策ねぇ?」
うーん…と考え込むサタン。あっ!とルシエラがついでのように言う。
「サタン様?因みにロキ様は盛られ掛けましたよ?」
ピシッと固まるサタン。
「盛られたってどう言うことー?!」
怒気を含めて言い放つサタン。
「心配には及びません。私が処理致しました」
サタンは溜息をつき、
「お嬢さんも無茶しないでよ?お嬢さんに何かあったりしたらロキに絞められるのオレなんだから…はぁ」
ルシエラはきょとんとして。
「私は聖霊なので媚薬とか麻痺薬とか効きませんよ?」
「そんなの盛られてたの?!有り得ないし!!王の宴会で何してくれるんだよあの子ってば!」
呆れるサタン。
「ロキには被害無かったの?」
「あぁ、一応な。ルシエラが居なかったらヤバい所だったが」
異物を排除するアクセサリーでも造っておくかなぁ…
「監視役お疲れ様お嬢さん」
サタンはルシエラを労う。
「昔から慣れていますので平気ですよ?彼は刈っちゃったらいけませんか?」
「ダメダメダメ!!何て事言うのさお嬢さん!?」
「じゃあ、何かいい案ありませんか?ロキ様が心配で寝れませんし」
ふぅっと溜息をつき考え込むサタン。ロキも同様考える。
「ハッキリと断るしかねぇよな…」
ロキは呟く、サタンも…
「オレもあの子にはお手上げだよ…次何かしでかしたら深淵に封印して反省してもらうよ。今回の勝負の褒美はそれでもイイ?」
お互い手を取りそれで了承した。
「ルシエラ。寝に戻るぞ」
ルシエラはロキの手を取りながら言う。
「今日は色んな精霊と手を組んで守りを強固に固めておきますね?」
「ルシエラは頼りになるな」
微笑みかけるロキ。
「盾にも矛にもなるのが妻としての務めですから」
ニッコリ微笑むルシエラ。
「サタン、取り敢えず俺らは戻るわ…また明日な」
「はーい、おやすみー♪」
しゅんと転移魔法で部屋に戻るロキ達。