宴会二夜目の余興
セーレを抱き抱えたまま転移魔法で大広間にひょいと戻る。セーレはそそくさと赤い顔のまま自分の席につき俯いてしおらしくしていた。
それを見たサタンがニヤニヤしている…なんだ?
「ロキおかえりー♪上空の散歩はどうだったー?」
ニンマリ笑顔のサタン。
「特に何にもねぇよ?」
「そう?セーレが大人しいから何かしらあったのかと思ったんだけどー?」
「あぁ?本人に聞けば良いじゃねぇか?」
「セーレが素直に応えるとは思わないしー」
「てめぇらは仲が悪いのか?」
んー…と考えてるサタン。
「普通かなー?でもロキが絡むと別みたいだけど」
「あぁ、そうかよ。軽く散歩してアイツの希望を叶えたらしおらしくなったんだよ」
「へぇー。そうなんだ」
ニヤニヤしてるサタン。
「取り敢えず、もうすぐ3柱来るから宴会始めれるよ♪」
ニンマリ笑うサタンと気怠そうなロキ。
「俺らは昨日と同じ席か?」
「そうだよー。こっち♪」
「へいへい」
昨日と同じ席に座る…ルシエラはロキの隣にちょこんと座る。今回はザガンが近くに座った。
「貴方とサタン様との勝負を間近で見たいですからね」
との事。その隣にはセーレが座って居るんだがな。
「多分俺が勝つぜ?」
ザガンに向けて言う。
「我々魔族は勝負事が好きなのですよ。特にサタン様はね」
ザガンはそう応える。そう言えばサタン確か負けず嫌いって言ってたな。
暫くすると残りの3柱らしき人物が大広間の扉を開けて入ってきた。サタンが、
「いらっしゃい♪ロキー紹介するね?右の彼はイポス、未来予知が出来るんだよ。真ん中がブネ、見た通り竜人。左がファラス、彼は博識なんだ♪これで全員揃ったね…準備も、うんほとんど出来てるから飲み物頼もうか♪」
ロキは近くに居たマモンにワインとオレンジジュースを頼んだ。
「所で誰が勝負を見届けるんだ?昨日散々だったじゃねぇかよ」
サタンに向かって言う。
「一応アモンとブエルに頼むよ?公平にジャッジしてもらう為にね。オレが先に酔い潰れたらロキの勝ちでロキが酔い潰れたらオレの勝ちね?」
「了解、俺はルシエラに見て貰っとく」
ルシエラが此方を覗き込んできた。
「イイよー。それじゃあ、オレもワインから始めるね。皆静粛にー」
侍女達が飲み物を配る。
「んじゃ、乾杯ー♪」
サタンがそう言うとガヤガヤし始める周り。一応ルシエラのドリンクの確認もしておいた。
「おいサタン」
「なーにー?」
「てめぇと同じペースで飲んでやるから気にせず呑んでも構わねぇよ」
「え?いいの?!何か怖いんだけどー?」
「昨日みたいに先に潰れられると面倒臭いからに決まってるだろうが」
呆れながらもクイッと飲み干すロキ。暫くワインを呑んでいたロキ。昨日と同様惚けて見ているヤツがチラホラ。何かもう慣れたわ。
今で10杯か…サタンを見遣る。なんか既にグダってねぇかサタン?
「おい、サタン。まさかもう酔ってねぇよな?」
「えー、うん?まだ平気だよ?フフ…」
いや、ほろ酔いじゃねぇのか?ブエルとアモンを見る。若干諦め顔してねぇか!?
「ねぇー?ロキー!」
「あ?なんだよ?」
「これで一気に勝負つけない?」
手には酒精度数96%の蒸留酒スピリタスを持っていた。
「てめぇで言ったんだから責任持てよ?」
「分かってるよー?えへへっ」
照れ笑いするサタン。
「何かで割るか?」
スピリタスをそのまま呑むのは好きではない。だってほぼ消毒液じゃん?
「そうだねー、確かにそのままだと美味しくないし…オレはコーラで割るよ♪ロキはー?」
「俺はアセロラでいいぜ?」
そう頼むと侍女達が持ってくる。
「では乾杯ー」
サタンは5:5、ロキは8:2で割っているのだが…数杯で明らかにサタンが酔ってる。
「おい、アモンとブエル。これ勝負ありじゃねぇのか?」
アモンが応える。
「主様は自分が酔い潰れて寝る迄が勝負と申しておりました」
面倒臭ぇヤツだな。まぁ、良いや…付き合ってやるか。
「所で2人は呑まないのか?」
アモンとブエルに問いかける。アモンが、
「呑んでしまうと公平にジャッジ出来ないので主様とロキ殿の勝負がつきましたら呑みますよ」
ふーんと頷いてグラスを見ると空になっていた。注ごうとスピリタスの瓶に手を掛けようとするとサタンが机に突っ伏した。顔を覗き込んで見る。
「これ寝てないか?」
アモンとブエルに問いかけ確認を求める。ブエルが近付き確認する。
「寝てますね。ロキ様の勝ちです」
周りがザワザワとざわつき始める。ザガンが、
「流石です!こんなに早く勝負がつくとは思いませんでしたよ」
くくくと笑っている。
「宴会は続けるのか?」
「えぇ、皆が気の済むまで呑んだら解散か介抱ですから」
ザガンは普通に応える。
「そう言えばザガンもあまり呑んでいないな?」
「勝負が見たいと言ったでしょう?もう見届けたので呑みますよ。素晴らしい飲みっぷりでしたよ」
ザガンは笑いを噛み締めながら呑み始める。
「そうか、俺はもう呑まなくていいのかアモン?ブエル?」
「えぇ、勝負は着いたので飲む必要はないですよ」
ブエルが応える。
「でもお前らの王がこんな有り様だと締まりがねぇな…ブエル代われ」
「え?」
きょとんとしているブエルを横目に睡魔と酔い覚ましの魔法を掛けてやる。
「何ですか今の魔法は…」
ブエルが驚いてそれを横目にサタンを見る。サタンがムクリと起き上がって…
「あれ?ロキ…?」
「よう?頭冴えただろ?」
「んー?うん!何かしたのー?」
「お前が酔い潰れて突っ伏したから、酔い覚ましと眠気覚ましの魔法をかけてやったんだよ」
パキポキと身体を鳴らすサタン。ザガンは横目に見て驚いていたが…まぁ、気にしない。
「ロキってホントになんでも出来るよね。羨ましいよ」
ブエルが、
「勝負はロキ様の勝ちですよサタン様?どうなさるのですか」
「あー、そうだね…ロキは何か欲しいモノあるー?」
「いや?特にねぇよ?」
「だよねぇー…うーん…」
そう言えば勝負の賭けに俺は好きな事聞いてやるって言ったからか…律儀なヤツだ。