神様、夜中の空中散歩
取り敢えず一通りの用事は終わったかな?ルシエラに思念伝達で連絡する。
『ルシエラー?まだ舌鼓最中かー?』
『あ!ロキ様?いえ、食べ終わりましたよー?』
『ならおまけ付きだが一旦ルシエラ迎えに行くわ』
『おまけ?誰かいらっしゃるんですか?』
『魔法の基礎を教えたザガンだ』
『あぁ、ロキ様にしか興味を示さなかった彼ですか。良いですよー?』
『すぐ行く』
「ザガンこのまま一旦俺らの部屋にルシエラ迎えに行ってから大広間行くぞ?」
「はい?!貴方は良くひょいひょいと跳べますね…どれだけの魔力量なんですか」
「何回か魔石で補填してるし…それにさっきの姿だとこの状態の20分の1の魔力量しかないんだぞ?」
「貴方は規格外過ぎる…」
呆れた様子のザガン。
「んじゃ跳ぶな?」
手を取り転移魔法でひょいとルシエラの元に行く。ファントムは既に書類作業をしていた。
「ロキ様お帰りなさい」
ぽふっと抱きついてくるルシエラ。
「あ、こら。顔にクリーム付いてるぞ」
ロキはいつもの様にぺろっと舐める。その様子を見てザガンは目のやり場に困っている様だった。
ザガンの存在忘れていつもの調子で居たや…まぁ、いいや。
「ファントム、後は頼んだ。俺らは大広間に行くからな」
「御意」
お辞儀で見送るファントム。ルシエラとザガンの手を取り転移魔法を使う。大広間にはサタンとセーレの2柱の他にも何柱か居た。
「サタンもう呼んでい…」
言いかけでセーレが発狂気味に、
「ザガンさん!!なんでアナタがロキ様と手を繋いでいるのですか!!ルシエラさんならともかく!!」
あ?何でセーレがそんな事で怒るんだ?
「私はダンタリオンと共に転移魔法を体験させて貰って居ただけなのだが?」
セーレはギリッと唇を噛んで。
「ロキ様!それボクも体験してみたいんですけど!!」
何か鬼気迫る感じのセーレ。
「って言ってももうすぐ宴会だろ?サタンから他の客人の紹介も受けないといけないし無理じゃね?」
ロキは時間を見る。セーレってヴィーナスとある意味違う意味で同じタイプかも知れねぇ…注意しておくか。セーレは分かった様子で、
「分かりました『今は』諦めておきます」
とムスッとしながら席に座った。サタンに目配せする。
「ロキお疲れ様ー。色々指導してたみたいだねー」
やっぱり屋敷の主には筒抜けか。
「あぁ、ダンタリオンは殆どのポーション造れるようになったぜ?ストックも造ってるみたいだし。ザガンは魔法の応用が可能だ。ダンタリオンとザガンには魔力の応用で相手に魔力を渡す方法も教えた」
「そう。ありがとねー」
ニンマリ笑顔のサタン。
「所でその脇に居る7柱は?」
「今日の面子の1部ー」
「いや、見りゃ分かるよ。説明端折るなよ?」
「はいはい。右からパイモン、西を治める主。その左がブエル、回復係で呼んだんだ♪もしロキが負けても良いようにね」
ニヤリと微笑むサタンだがロキは、
「俺は負けねぇよ?俺を酔わせたら何でも言う事聞いてやるぜ?」
ニヤリと笑い返す。
「それホント?!やる気出てきた!!」
セーレがジト目で見てる…気にしないでおこう。
「ブエルの左がシトリー、アスモデウスまでいかないけど召喚者の色欲を満たすよ♪女の子みたいで可愛いでしょ?その左がベレト…よく怒りやすいっぽいけど良いヤツだからね。その左がエリゴス、騎士の悪魔なんだ。その左がゼパル、彼は戦士だよ。その左がサレオス」
「残りの3柱は?」
「向かってる最中ー…アモンとザガンが出席するのは知ってるよねー?ダンタリオンは引き篭もってるんでしょ?」
サタンは何でもお見通しって感じで言ってきた。
「あぁ、そうだ」
やっぱり監視カメラでもあんのかなぁ?
「後何分で宴会は開始だ?」
「30分はあるね。まだ好きにしてていいよ」
ロキはサタンに近寄り耳打ちで、
「なぁ、セーレってヴィーナスと同類の匂いするんだが?」
「どうかなー?まぁ、散々ちやほやされて来たのに自分よりも美しい者が現れてみなよ…嫉妬と羨望の渦巻きだよ多分」
「新規顧客にアイツ登録しちまったんだけど…」
「馬鹿じゃないのロキ?!」
驚くサタン。
「仕方ねぇじゃん?審査には不備のない資産とかだったんだからよ」
ロキは諦めたように言う。
「ヴィーナス2号にならない様に祈っとくよー」
「マジかよ…まぁ、分かった」
サタンとの話が終わると早速セーレが話しかけて来た。
「さっきのボクも体験していいですよね?」
にこやかに微笑む美青年…悩むのは後にしておくか。
「行きたい所でもあるのか?」
「そうですね…空飛べますか?」
「今の状態だと余裕だが?」
「では、こちらの姿でお姫様抱っこ希望です」
セーレは女体化した…赤のバラをアクセントにした黒いレースをあしらったマーメイドタイプのドレスに変わる。
「分かりましたよお嬢様…ルシエラも連れて行っていいか?」
とセーレに問い掛けるとセーレは、
「ルシエラさんなら良いですよ♪」
セーレをお姫様抱っこしているのでルシエラには服を掴んでもらった。
「んじゃ行くな『転移魔法展開魔王城上空』」
しゅんとその場から消えて魔王城の空に浮かぶ。うわぁーと喜色満面のセーレと隣を飛ぶルシエラ。
「ロキ様ー?魔界にも灯があるんですね」
「まぁな。一応住人が居るんだから」
セーレはほうっと惚けている。お姫様気分を味わっているのか?
「満足頂けましたかお嬢様?」
「あ…はい…その…」
ん?セーレ何かモジモジしてるぞ。
「あの…ロキ様!お願い事聞いて貰えませんか?」
「聞ける範囲なら良いぞ?」
「あの…その…」
「なんだよ勿体ぶらないで言えよ」
「キス…して頂けませんか」
ルシエラがピクンと反応した。
「んー。俺はルシエラ一筋だし男とする趣味ねぇんだけどなぁ…」
「サタン様とはしてたじゃないですか!」
「アレはマスク越しだしルシエラの許可ありだ」
ルシエラはコクコクと頷いている。
「どうしても無理ですか?」
ルシエラに目配せする…ん?額を指してる…あぁ、なるほど。
「セーレ目瞑れ」
「え?はい…」
目を閉じたセーレ。軽く額にキスしてやる。ボンッと火を噴くように真っ赤になるセーレ。
「ぁ…ありがとうございます」
顔を手で覆いながら言うセーレ。
「満足したか?」
「はい。大広間に戻って良いですよ」
照れながら言うセーレ。恥ずかしいなら無理しなくても良いのにと思うロキだった。