神様、彼等は今3
ザガンがダンタリオンにした魔力の応用も気になるというので使いの者が来る前に一通り教えることにした…場所は実験室で。
取り敢えずダンタリオンにポーション作りを教えながらの同時進行になると言ったのだがそれでも良いと了承してくれた。
「取り敢えず、ダンタリオンにも教えた魔力が切れた相手に自分の魔力を送る方法…また手を貸せザガン」
ザガンは左手を出す。
「これは魔力の流れを感じさせる為にやっただろ?」
少し魔力を流す。
「あぁ」
ザガンは短く応える。
「これが相手に渡す魔力の流れだ」
ダンタリオンにやったように流すと…
「『っ?!』」
ザガンが驚いて手を離した。
「何なんだ今の魔力量!!」
あー、やっぱりか。
「ザガン…ひとつ残念なお知らせがある」
「なんだ?」
きょとんとしているザガン。
「お前の魔力量…多分ダンタリオンより下だ」
「そんな?!まさか…」
認めたくないのだろう…物凄くショックを受けている。ダンタリオンは何となく気付いていたみたいだが言わなかったようだ。
「じゃあ、試しにポーション作ってみろよ?何本作れるかで分かるから」
ムムっとしながら作業に移るザガン…
数分経過して、
「15本で疲れたみたいだな」
ダンタリオンの30本の内10本は失敗作だった物だがそれでも及ばず。
疲れて机に突っ伏しているザガンの手を取り魔力を渡す。
「分かったか?」
ザガンは、はぁ…はぁ…と肩で息をしながら悔しそうにしていた。ロキはそれを横目にダンタリオンにポーションの指示をしている。
「魔力量が増える方法はないのか?」
ザガンはそう言う…余程悔しいのだろう。ダンタリオンも興味があるみたいだ。
ロキはんー?と考えてみる。
「レベル上げするとか?」
「「?」」
なんで2人して顔見合せて黙るんだよ。
「一応聞くけど…レベル上げした経験は?」
「「サバトとか召喚された事しかないぞ」」
2人がハモって言う。お前らもかー!!
「魔族って魔法使うイメージあったのにぶち壊れたわ」
「「あぁ」」
また2人がハモる。そしてダンタリオンが言う。
「貴殿が言う魔法と思っているのは、我々が召喚されて望みを何でも聞くってあれですか?」
「よく分かったな。それだが?」
次はザガンが言う。
「アレには語弊があるのですよ。何でも望みを叶える代わりに何かを捧げると言うでしょう?あれが魔力の代わりになるんです。だから我々は人々を堕落させる為だけであって魔法等は使わないのですよ」
通りで魔力量が少ないのか。
「俺は参加してねぇけど…魔族って天使族と何百年かに一度戦わなかったっけ?」
「あぁ…500年に1度。魔界も天界も下界も交えて聖戦しますね」
とダンタリオンが言う。
ロキは戦いには参戦しないが頼まれたら魔族だろうと天使族だろうと武器を提供する。
どちらが勝とうが気にしてないからだ。
「その時お前らは何してんの?」
2人が顔を見合わせて…
「昔は偶に戦いに参戦する時もありましたが…近年は新参者に任せてます」
「そりゃあ、レベル上がんないし魔力量も少ないわな」
呆れるロキ。
取り敢えずダンタリオンは一通りのポーションが作れる様になった。
「此処って魔法障壁とか掛けてある部屋か?」
ロキはふと気になって聞いてみた。
「確か掛けてあった筈ですよ?」
ザガンが応える。なら元素魔法も行けるか。
「ザガンの使いの者が来る前に基本の元素魔法を教えておかないとな」
先ずは属性魔法等を検知する魔石を取り出す。ロキは全属性持ちだ。因みに素質を視る眼も持っている…勿論魔眼による観察眼だ。
視てみると、ザガンは風と炎と魔族として基本の闇属性持ちみたいだ。
「ザガン指先に集中して炎と念じてみろ」
ザガンは言われた通りに目を閉じ集中していると指先から火種が出た。
目を見開いて見たザガンは驚いている。
「次はそのまま集中して風と念じてみろ」
今度は目を閉じずに集中するザガン…炎が竜巻状になる。
ザガンはまたビックリしている。
「うん。やっぱり魔法は使えるみたいだな」
「闇はどう使うんだ?」
「あぁ、それかちょっと待ってろ『ファントム今部屋か?』」
『左様ですが…何か御座いましたか?』
『影移動でこっちに来い』
『御意』
「闇魔法の手本を見せてくれるヤツ呼んだ」
2人がきょとんとしている。
数分すると影にファントムが来たのが分かった。
『ルシエラはどうした?』
影に居るファントムに思念伝達で問いかける。
『イヴの特製スイーツに舌鼓しております』
『OK』
不思議そうにロキを眺めているダンタリオンとザガンを見てロキは言う。
「見本役が来たから呼ぶな?ファントム出ろ」
ダンタリオンとザガンがきょとんとしてロキを見つめる。ロキの影からファントムがお辞儀をして出てきた。ダンタリオンが、
「其方の御仁は?」
「ファントム。俺の執事で闇の精霊付きだ」
「「闇の精霊?」」
お前らもサタンと同じ反応するなよ…
「サタンと同じ反応しないでくれよ。ファントムは元々ジャック・オ・ランタンの中に居た精霊だ…ウィル・オ・ウィスプと同格の力が使える」
「墓守と同等の力?墓守って何してたんだダンタリオン?」
ザガンがダンタリオンに問いかける。
「墓守って通称なんだから墓を守るんじゃないのか?」
2人が議論してるが知識がないにも程がある…本当に魔界の住人て魔王がアレだから抜けてるのかな。
「2人共手を貸せ。ファントムは影に戻れ」
「御意」
ザガンは左手をダンタリオンは右手を出して来た。手を取りロキ達の泊まってる棟の1階に転移魔法で移動した。
ひょいと降りると今度はダンタリオンが感動している…もう良いんだがと呆れるロキ。
「ファントム出て来い」
恭しくお辞儀したまま出てくる。ザガンが、
「此処に来て何をするんだ?」
ダンタリオンも同じ事を思っているのかうんうんと頷いている。
「いや、此処が1番有象無象が多いんだよ。俺らの神気にやられてるのか上には来ないんだが」
「それでどうするのだ?」
ダンタリオンが問いかける。
「ん?こうする。ファントム闇全切り暗転頼む」
「御意」
ふっと暗くなる。
明るくなると有象無象は居ない。
「「どういう事だ?」」
ハモるな!!
「コレは闇が闇に対抗し得る力だよ。有象無象は元は闇の瘴気から生まれた魔物だろ?それを切って闇に放り投げたって訳。Do you understand?」
うーんと唸ってる2人。時計を見る…そろそろザガンの使いの者が来る頃か?
「ザガン?そろそろ時間じゃねぇのか?」
「あぁ、もうそんなに時間経って居たのか。玄関先に来ている筈だが…」
「なら連れて行く。ダンタリオンはどうする?」
「私はまた実験室でポーション作りでもしておくよ」
「ついでだから連れて行く。ファントム部屋に戻ってルシエラを守れ」
「御意」
ザガンとダンタリオンの手を取り、先ず実験室に向かう。ファントムは上の部屋へと戻って行った。
ひょいと降りるとダンタリオンの手を離して置いていき、ザガンの手だけ取り玄関先に跳ぶ。
玄関先には二角獣の隣に眼鏡をかけた紳士が居た。
「来ていたかアンドロレアルフス」
「はい。此処に」
跪く紳士が収納袋を献上している。
「良く持って来てくれた…ロキ殿コレが代金だ」
ザガンの執事らしい紳士はザガンに代金を渡した後からこちらをじーっと見つめている。気になったので問いかける。
「俺の顔に何か付いているか?」
「いえ、魔界では見掛けぬ御身なのでご拝顔させて頂いただけで御座います」
確かに魔界でこんなに神々しいと違和感あるよねー。
「俺はサタンの客として来ているだけだから珍しいのも仕方ない」
ザガンから袋を預かり中身を確認する。
うん、聖金貨200枚あるから魔石おまけして120個と交換してやるか…
「ザガン魔石おまけ付きでコレでいいか?」
と純度の高い魔石を120個渡す。
「ありがたい。所でレベル上げをするにはどうすればいい?」
やっぱりダンタリオンに負けたくないのか。
「格上のやつを倒すか数だな…因みに俺は経験値と産まれながらの能力で天界でも最強の部類になったぜ?」
「ほう…天使族を倒しても上がると言う訳では無いと?」
「そうだな、倒しても入るが野生の動物を倒しても経験値として入るぞ」
「魔族には無縁の事柄だ」
はははと笑うザガン。
「我々は大半が自分の興味のあること以外に関心が無いのだ…貴方は昔から苦労していたとサタン様が言っていたから成長したのでしょう」
「いや?俺も基本的に興味があるモノ以外に無関心だが?」
「ですが子供の頃に旅をしているのでしょう?」
「サタンの野郎それも喋ってたのか?!」
「あの人は酔うと口が軽いので好きな物は何でも言うんですよ。宴会の大半は貴方の自慢話ですよ」
苦笑しているが何処か納得しているみたいだった。
「実物を見たら自慢話したがるのも分かります」
なんかアンドロレアルフスが空気を読み過ぎて空気化してる。
「彼はどうするんだ?と言うか、今晩の宴会はザガンも出ないのか?」
「あぁ、アンドロレアルフスは帰って貰いますよ。私はサタン様と貴方の勝負が見たいので参加します。ダンタリオンは負けたのが心を傷付けたのか出ないのでしょう」
クスクスと笑うザガン…そこにふと気になる事があった。
「お前はこっちの姿しか見てないからかもだが、いつもはこっちの姿なんだぞ?」
収納袋からアクセサリーを取り出して付けていく。久しぶりに黒髪に蒼い眼の姿になった気がする。前髪をかき上げる。
「その姿が本来の姿を隠してる状態なのですか…ふむ」
ザガンはマジマジと観察しているが…
「それでもセーレよりも美少年ではありませんか?」
そうなのか?!全く他人に興味示していなかったから分からなかった…2面性を知っているのがファントムとか屋敷の住人と爺とサタンとハーデスのおっちゃんとアテナさんとかの神が主だったから分からなかった。
「参考にする」
「いやいや!!貴方は何を参考にしたんですか?!素敵な事ではないですか!!」
「俺は自分が嫌いなんだよ」
アクセサリーをしまい神様状態に戻る。