神様、慌ただしい朝
するとまた大広間の扉が開く。
残りの3柱のザガン、アムドゥスキアス、ベリアルだ。ザガンは分かるが残りが何で俺と話したいのかが分からない。
ザガンが入って来て開口一番大声で…
「先程のポーションは貴方の作製なさったモノか!!」
いきなり叫ぶ様に言うからビックリしたわ。
「あ、あぁ…そうだが?」
「是非とも造っている所を拝見させて頂きたいのだが」
二日酔いがそんなに嫌なのか?それとも即効性なのがお気に召したのか?
「ダンタリオンも見たいと言っていたから別に構わないが?」
「ダンタリオンが?」
ザガンがジト目でダンタリオンを見る。此方は此方で火花まで行かないが何か怖いぞ?
そんな事を無視してルシエラが…
「マモンさんてどの方ですか?」
あぁ…覚えてたのか。マモンの姿を探す…居た。
「サタンの傍に立っている獣人の侍女だ」
「彼女ですね!分かりました♪」
ひょいと飛んで行くルシエラ。チップは握らせておいた。取り敢えず朝食にしたい…と思っているとカートを運んで来る侍女達。
「おい、サタン…俺ら何処に座れば良いんだよ?」
「だから此処だってばー」
上座の隣を指す…昨日と同じかよ。仕方なく座る。ルシエラはお礼が出来たらしい。昨日俺がチップ渡していたから要らないと言われたらしいが強引に渡したんだとさ。
朝食は白いパン、具沢山のスープ、サラダ、ベーコンエッグ。ルシエラ足りるかな…足りなければ俺の分をやるか。
あれセーレこんなに席近くだったっけ?て思ってると俺らに話しかけてきた。
「アナタってなんでそんなに何でも優雅に出来るんですか?スゴく惹かれます」
普通にご飯食べてるいるだけなんだが…昨日も呑んでる席で惚けてたヤツ何人か居たな。確かその中にセーレも居た。
「普通に喰ってるだけだぞ?」
「サタン様と比較しても違いますよー」
サタンがピクリと片眉を上げて。
「セーレー?何でそこでオレの名前が出るのかなぁー?」
また火花立ってないか?仕方ないサタンを立たせてやるか。白いパンを1口サイズに千切りスープに浸す…そして、
「サタンこっち見ろ。あーん」
固まるサタンとセーレ…先に動いたのはサタン。
嬉しそうにあーんと口を開ける。
サタンの口にパンを入れて口の端に付いたスープを指で拭ってその指をペロリと舐てやる。サタンもそれを傍で見ていたセーレも赤面している。
俺はルシエラに同じ事をして貰う。ルシエラは指で拭ってペロリと舐めず直接ペロリと舐めた。
これはコレで破壊力が半端ないみたいだ…皆シーンとしちゃったよ。
サタンが言っていた事は本当なんだなー。俺ら2人して揃うと破壊力が半端ないって。
そうこうしてると朝食も終わったので先ず最初面倒臭ぇこの2人との写真にするか。セーレが…
「ルシエラさんも入れて撮っても良いですか」
と聞いてきた…ルシエラに、
「どうするルシエラ?」
「端っこで良いなら写りますよ?」
位置的に右から女体化セーレ、ロキ、女体化サタン、ルシエラが片翼隠れる感じで俺はセーレとサタンの両方に肩を回し、ルシエラはサタンに抱きついていた。
何か俺がタラシみたいじゃねぇかよ。
もう10時30分か…サタンに研究所的な所が無いか聞いたら案内してくれるとの事なのでダンタリオンとザガンを連れて行く。
材料は揃っていた…60本分は造れるな。
ルシエラは部屋に居て貰う事にした。暇を持て余してあの収納袋の中の甘い物でも食べるだろう。
着いた所は研究所と言うより魔術をしそうな部屋だった。必要な物を探す…程よいサイズの鍋かフラスコ無いかなぁ…あ、あれ良さそう。
程よいサイズのフラスコを取り、取り敢えず見てもらうか…
「造り方は簡単だぞ?真水に薬草と新月草を入れて魔力を注ぐ」
2人してきょとんとしている。そしてハモって…
「「魔力を注ぐ?」」
ダンタリオンは分かるがザガンは分かるだろ?
「こうやるんだよ」
掌をフラスコの上に翳して魔力を注ぐ。
数秒で色が青みがかって出来がった。
「出来上たぞ?」
「「へっ?」」
なんでまた2人してハモってるんだよ。
「コレで完成なんだよ」
フラスコの中にあった新月草と薬草は溶け込んでるので、青いポーションの出来上がりだ。
「あれ?新月草と薬草は何処に?」
ザガンが言う。
「出来上がったんだから溶け込んでるんだよ」
全く分かってない2人。
「2人とも片手出せ」
ダンタリオンは右手をザガンは左手を出してきた。
「コレが魔力の流れだ」
2人に魔力を流してやる。
「「っ?!」」
何で2人とも驚いてるんだよ。ザガンは魔法とか魔術の研究してたんじゃないのか…てか、魔族も魔法使うだろ?無意識か?
「今ので魔力の流れ分かったか?」
「分かり易すぎてビックリしてます」
「私もだ」
それを聞いて意識して魔力を使った事無いんだなと思った。
「それを放出する感じが魔力を注ぐって事だ」
先ずは…
「魔法や魔力の研究してるザガンからやってみろよ?」
俺は纏めて作れるのでさっきの数秒で10本分造った。ザガンには試しなので1本分だ。
「やってみます…」
ちょっと苦戦してる様だが魔力は注がれてる。青いポーションが出来た。
数分掛かったが出来たようだ…一応ポーションを1滴手の甲に垂らし舐めてみる。うん、成功している。
「時間は掛かったみたいだがちゃんと出来てるぞ」
ザガンが喜んでいる。次はダンタリオンだな…また1本分だけ入れる。
「貴殿の魔力が強すぎて自分に出来るか不安で仕方ないのだが」
「取り敢えずやってみないと分かんねぇだろ?」
「分かりました」
ザガンより時間掛かってるが魔力は注がれてる。
「後少しだぞ」
「はい」
数分して薬草と新月草が溶け込んだのに何故か青緑のポーションが出来た。
ん?これは…試しに1滴手の甲に垂らし舐めてみる。
「ダンタリオン…可笑しいぞ?二日酔いの薬じゃなくて解毒薬が出来てるぞ?」
材料間違えたか?ダンタリオンが少し凹んでいる。薬草と新月草を全部見直す…すると薬草の中に数枚解毒草が混じってた。サタン…見た目似てるけどちゃんと選別しろよ!!
「ダンタリオン…やり方は合ってる。薬草の中に何枚か解毒草が混じってたからだ。だからお前にも造れるよ」
ダンタリオンが凹んでたのから明るくなった。残りは纏めて作れるので5分も掛からなかった。
解毒草はダンタリオンのを入れて15枚あったから結果二日酔いに効く即効性のポーションは45個出来た。
時間を見ると11時5分になってた。
なんだこの忙しさは…俺は遺跡探索に来たんだぞ?!サタンに文句言いたかったが招かれたから言えない。
取り敢えず出来たポーションを持ってそこらに居た侍女にサタンの位置を聞く。まだ大広間に居るそうだから転移魔法を使って近道する。
ダンタリオンとザガンは転移魔法に驚いていたが置いてきた。
サタンはアムドゥスキアスとベリアルと談笑していてたが、飛んで来たロキに気付いて…
「あれ?ロキ!もうポーション出来たのー?」
ときょとんとしている。そりゃそうだろうな、ザガンとダンタリオンに教えてなきゃ35分も掛かってないんだし。
「てめぇ薬草と解毒草くらい選別しろ。45本しか作れなかったんだからな…後、時間は掛かるがザガンとダンタリオンも作れるようになったから、俺に頼まなくてもいけるぜ?」
「あれ?混じってた?ごめーん。彼等も作れるようになったんだ…んじゃ、彼等に協力して貰おうかな♪」
「取り敢えず受注したモノは果たしたぜ?おら」
大広間の机に収納袋からポーションを取り出して置く。
「ありがとー!これ代金♪」
サタンはとても嬉しそうだ。特別手当も含めて聖金貨20貰った。
「んで、次は誰が相手だ?」
サタンが代わりに応える。
「彼等2人ー♪アムドゥスキアスとベリアルだよ!」
昨日の音楽家と2枚舌の貴公子か…最初にアムドゥスキアスが質問して来た。
「僕は金管楽器が得意なんですが…アナタは何でもソツなくこなすそうですね?」
ロキがんー?と考えてから…
「一通りはな…何でだ?」
アムドゥスキアスが続けて言う。
「音楽も出来ますか?」
「ヴァイオリンが得意だがトランペットがあるなら奏れるぞ?」
「是非聴かせて頂けませんか?!一応ヴァイオリンも持ってきてます」
アムドゥスキアスは収納袋から1つのストラディバリウスを取り出す。
「んじゃ、ラ・カンパネラかカプリスでもいいか?」
そこでサタンがリクエストして来た。
「ショパンの革命のエチュード聴きたい♪」
「へいへい…現代版アレンジでもいいか?」
嬉しそうにサタンが、
「いいよー♪」
とニンマリ笑顔。構えて、調律。おー…良い音色。調律完了…では。
大広間に響き渡るヴァイオリンの音色。聴き入るサタンとアモンとアムドゥスキアスとベリアル。
弾きながらふと扉を見ると、帰ったと思っていたセーレとザガンとダンタリオンも来ていた。
サタンの脇に居るマモンもほうっとしている。弓も切れる事なく弾けた。
「こんなもんでいいか?」
と言うとサタンが悦に浸っている。
「ロキ…最高だよ…フフ」
だからきめぇよ。他のヤツらは拍手喝采。アムドゥスキアスが興奮気味に、
「アナタは本当に素晴らしい方だ!!」
と握手して来た。
「それはどーも」
頭をポリポリ掻く。セーレ、ザガン、ダンタリオンも興奮気味だ。セーレが興奮気味に、
「ボクこの姿のままヴァイオリン構えてるアナタと写真撮りたいです!」
と言ってきた。サタンに目配せしていいのか?的な視線を送るとサタンが口を開く。
「ロキはオレも入れなきゃ撮らないってさぁー♪」
何処かドヤ顔のサタン。セーレがギリッと唇噛み。
「それで良いですよ…サタン様は端っこでお願いします」
にこやかに笑うセーレ。付け加えて言う様に…
「今度アナタのお店に伺っても宜しいですか?」
サタンがピクリと片眉を上げる。
「セーレー?後出しズルくないー?オレでも数千年通ってるんだよー?」
「あれ?順番なんて関係ないじゃないですかサタン様?」
サタンがピクピクしてる。取り敢えずストラディバリウスをアムドゥスキアスに返して…
「サタンー?俺らは友達っしょ?変わんねぇえから安心しな」
と新作のマスク付けてやり軽くキスしてやる。
ピシッと固まる周り。
サタンは赤面している…それを見て笑うベリアル。そう言えばこいつなんで居るんだ?ベリアルが笑いながら…
「君って面白いね…昨日から見てて観察したかっただけなんだボクは」
まだくくくと笑ってる。それだけか…じゃあ、もう解放されるのかな?
「サタン俺ら遺跡探索に行って良いのか?」
ん?とこちらを見るサタン。
「お昼ご飯くらい食べてから行きなよ…もう出来るし」
結局昼まで付き合わされる羽目にになったな。