神様、介抱した翌朝
まさかルシエラが此処までお酒に弱いとは思ってもみなかった。部屋に着きマモンが…
「失礼致します」
と扉を開けてくれた。俺はルシエラを抱えてるからな…開けれない。ファントムが扉の音に気付き作業を一旦やめて恭しくお辞儀してきた。
「ファントム、彼女は侍女頭のマモンと言うそうだ。テレサの代わりにルシエラの着替え等をして貰う。ファントムは俺と隣のリビングに行くぞ」
ファントムは机に出して居た書物等を収納袋に入れてついてきた。ロキはルシエラの着替えをベッドのある部屋で出してルシエラの着替え等をマモンにして貰う。
数十分後。
マモンがリビングに来た。
「ロキ様、お連れ様の着替え等が終わりましたが如何致しましょうか?」
ベッドの部屋に向かうとすやすや寝ているルシエラ。
「明日の朝9時くらいに…ん?俺ら朝ご飯はサタンと喰うのか?」
マモンは…
「事前にそう伺っておりますが?」
ロキは頭を掻き。
「アイツいつ起きるんだよ…早く遺跡行きてぇのに…」
そう呟くとマモンが普通に応えた。
「主様は朝は決まった時間に朝食を召し上がりますよ?9時30分に大広間です」
そこはマメなんだなアイツ。
「了解。俺らはそれ迄には大広間に行くよ…昨日の面子も朝食取るのか?」
「何人かは帰りましたが6柱は残って泊まっていかれてるようです」
「分かった。もう下がって良いぞ」
チップを渡すとマモンが驚いたが、直ぐお辞儀して出て行った。ファントムは作業をやめて今日はリビングで休むと言ってきた。
ロキは取り敢えずシャワーを浴びてからベッドのある部屋に戻る。ルシエラの膝枕で上を見上げルシエラの顔を眺めていた。
帰ったらイヴに酒精の入った料理とお菓子は出さないように言わないとな…
あんなに弱いとは思ってもみなかった…
そう言えばルシエラは遺跡探索に何を持ってきたんだろうと気になったのでルシエラの収納袋を見る。
ぶはっと吹き出してしまった。
食糧入れ過ぎだろ!!
イヴ良く作ったな…帰ったら労ってやろう。
後は衣服が1ヶ月持つくらいか…日用品はそんなに入れてないみたいだな。ルシエラは収納袋の使い方がまだ初心者だな。
俺は家具とか武器も入れてる。いつ何が起きるか分かんねぇしな。
そういえばルシエラの寝顔ってあんまり見ないなぁ…先に俺が寝る事が多いからか?回復部屋に居た時くらいだな見たの…
宴会の様子だと魔界はマモン達侍女が支えてるんだろう。酔い潰れてるヤツの介抱が手早い。てか、魔王が酔い潰れるほど呑むなよな…だから皆酔い潰れたんだろ。
アモンは良い侍従長だな…付き合いとは言え呑んだみたいだが、明日に支障の無いくらいだったし。
俺も眠くなって来たし寝るとするか…目を閉じると直ぐ睡魔が襲ってきた。
翌日、魔界での朝が来た。
ルシエラが若干二日酔いのご様子…何でも収納出来る袋あって良かったな。ロキは酔わないが薬関係は何でも入れている。ロキの作る魔法収納袋は特殊で中の空間がほぼ無限の仕様になっている。
二日酔いに良い即効性のポーションをルシエラに渡しすとルシエラはコクリコクリと飲み干す。直ぐ青ざめた顔色が血色良くなった。
「ロキ様…私、昨日途中から記憶が無いんですけど…?」
酔うと記憶なくなるタイプか!危ねぇ!!
「俺が心理戦してたのは覚えているか?」
「はぁ…確か私の助言で勝った所までは」
やっぱりあのキスか…
「あの後な?お礼にキスしたんだが…覚えてないか?」
「覚えてません…」
しゅんとするルシエラ。
「まぁ、気にすんなよ?キスしたんだが…それだけで酔うくらいにお酒に弱いから禁止な?」
「あの、所で私の着替え等をしたのは誰なんですか?」
ルシエラが着てる服をキョロキョロと見ながら問いかけてきた。
「あぁ…侍従長のアモンてヤツの妹が侍女頭で世話して貰えたんだよ…マモンて名前の。後でお礼言っとけよ?チップは渡したけどさ」
そんなやり取りをしていると9時15分になりかけてた。
「あ、やべぇ。取り敢えずご飯喰いに行くぞ」
ルシエラの手を取り転移魔法で近道する。無駄に広いんだよ魔王城。
大広間に着くとサタンが机に突っ伏していた。
「おい。サタン…二日酔いか?」
サタンは力無さげに、
「ちょっと飲み過ぎたかもー…うぇ」
ロキは、はぁと溜息つく。
「これ飲めよ。二日酔いに効く即効性のポーションだ」
酔い覚ましのポーションを力無く青白い顔ままで受け取りごくごく飲むサタン。
数十秒後。
「何これー!すっげー効くじゃん!!もっと無いのー?」
「そんなに造ってたりしねぇよ…買うなら定期的に送るぞ?勿論友達割引して月に毎日分でこれくらい」
指1本立てる。
「聖金貨100枚?」
感覚狂ったかサタン?
「そんなにしねぇよ10枚だ…効き目からして妥当だろ」
「5倍造れない?」
「は?てめぇの分以外も要るのかよ?」
花の刺繍のされたスーツを着たサタンが円卓に突っ伏して言う。
「昨日侍女頭のマモンから聞いてない?」
「6柱残ってるんだっけ?アモン除いた5柱分て事か?」
「うん。全員二日酔いだよー」
「此処に来るんだろ?そん時渡すわ」
「半分は来れるくらいの二日酔いだけど、残り半分はダウンしてるから無理ー」
「てめぇらはあほか?」
侍女頭のマモンがサタンの傍に居たのでポーションを3つ渡して配る様に言った。
勿論チップも渡したぞ?
サタンが突っ伏して…
「ありがとねー…残り幾つあるの?」
「あー?後6本しかねぇよ?」
「全部頂戴ー」
「先に言うが暫く造れないんだぞ?遺跡行くんだから」
「材料あれば何時間で何本作れる?」
ロキがふむと顎に手を当て思い出す。
「てめぇらがお酒に弱ぇとは思ってもみなかったからな…あれは試しに造ってたヤツだ。だが、そんなに時間掛からねぇよ」
「材料書いてー…てか、ロキは酔って無かったよね?二日酔いは?」
「してないに決まってるだろ?あんなのほろ酔い程度だ。材料は新月草と薬草と真水だけで造れる」
「魔界にもあるから造ってー」
「おいおい…俺は遺跡探索に来たんだぞ?」
「午前中は行けないと思うよ?」
ロキは疑問に思い聞き返す。
「何でだ?」
サタンがきょとんとして。
「昨日話かけれなかった奴らが話聞きたいのとザガンが魔力操作について聞きたいんだってー」
ふーんとロキは聞き返す。
「因みに誰が残ってるんだ?」
「アモン、ザガン、ダンタリオン、セーレ、アムドゥスキアス、ベリアルの6柱だよ?サキュバスとインキュバスも残りたかったみたいだけどね」
「てっきりアスモデウスも残ってるのかと思ったわ」
「彼はロキ達に欲情したのか発散しに行ったよ?」
事もサラッと言う。
「朝からきめぇ事言うな!!被害なくて良かったわ」
「セーレは記念に写真が欲しいんだって…ズルいよね?」
不貞腐れるサタン。
「それはてめぇの感覚だろが…てめぇも写るなら許可する。知らねぇヤツと撮るのとか嫌だし」
因みにサタンもセーレとか言うヤツも俺より身長は低い。
サタンは170cmくらい。セーレとか言うヤツはそれより低かったから165cmくらいだろ。
取り敢えず電波時計を見ると9時30分だった。大広間の扉が開く。アモンと顔色が悪いダンタリオンとセーレが来たようだ。サタンがいつの間にか身嗜みを整えて座り直してた。
「ロキー、彼等にもポーションお願い」
アモンが寄ってきたので収納袋から2本ポーションを出して渡す。ゴクゴク飲む2人。
数秒後…
「「何これ?!凄い!!」」
との感動の声。いつもの魔界の宴会の後って潰れてんのか?あほだろ?節度持って呑めよ。
「貴殿は本当に素晴らしい方だ…私は負けてヤケ酒して二日酔いでこのザマだよ」
そこにセーレが割って入る。
「ボクずっと話かけたかったんです…サタン様が惚れダンタリオンさんに打ち勝ったアナタに!」
キラキラしてる美青年。
「あー?何か記念に写真撮りたいらしいな」
ロキが気怠そうに言う。
「あっ!はい。ボク自分が美青年て言われてたんですけど、上には上が居るのを魅せられて…」
俺は魔性を落とす能力でもあるのか?サタンが割って入る。
「セーレ?条件としてオレも写らないと撮らないってロキが言ってたよ」
ニンマリ笑顔のサタンと爽やかスマイルのセーレ。なんだ?若干火花立ってないか?
その脇でダンタリオンが、
「先程のポーションは貴殿が造ったモノか?」
「あぁ、俺は酔う程呑まねぇから試しに造ってたヤツだ。それがどうした?」
「作り方を教わる事は出来ないだろうか?」
「さっきサタンから受注されたから午前の空いてる時に造れるだけ造る予定だぞ?」
「貴殿の邪魔はしないので見ていてはいけないか?」
「別に構わないが?」
そういうやり取りしているとサタンとセーレの戦いは終わってた様だ。大広間の上座で来い来いしてるサタン。
「なんだよ?」
ロキが問いかけると…
「昨日の写真ー!送り忘れてたから見て♪」
画面を見る。満面の笑みのサタンが左手を写して俺が無表情でお姫様抱っこしてる画像。
狙ってやりやがったのか…
セーレも俺が見ていた画面を見て…
「サタン様ズルいですよ!ボクも女体化して写っても良いですか?!」
サタンは女体化すると結構美人になる。
男だと美青年だからか?てか、セーレも女体化出来るのか…って、美青年で写りたかったんじゃないのか?
「お前らの狙いは何だよ?」
2人してハモって…
「「天界屈指のイケメンと撮りたい!」」
「てめぇらは本当に分かりやすいな」
呆れるロキ。