神様、ルシエラの存在
はぁと溜息をついてから話す。
ファントムが椅子を準備してくれていた。テレサは全員分のお茶を注いでる。
「ルシエラ。お前のカッコ良いトコ見たから次は俺の番だ。サタン責任取ってやるからよ…元に戻して死ぬ前か産まれたてかどちらか選ぶか?ガキの頃から観ているからって舐めんなよ」
サタンを睨みつけておく。
「取り敢えずルシエラの正体が知りたいかサタンの寿命の謎が聞きたいか選んでくれ」
アテナはルシエラ…サタンもルシエラを選んだ。
「まず見た方が早い。ルシエラ久しぶりに戻れるか?」
ルシエラは勿論とでも言うかの様に微笑んで、
「大丈夫ですよ」
そう言うとちょこちょことみんなの真ん中に立つ。
「ルシエラは神様のオレでは無い。勿論天使族でも無い魔族でも無い人族でも無い…もっと近くに居る存在で空気を読むし吐く、存在するコトも消えるコトも出来る存在…聖霊だ。精霊じゃなくて聖霊な?そこん所の区別は分かるよな?」
「伝説的な文献で伝わってるのは知ってるケド、馬鹿なコト言わないでよ。聖霊が見える訳ないじゃんロキ?」
「そんな…嘘でしょ?伝説的なモノが存在すると言うのロキ君?」
信じてないサタンに半信半疑のアテナ。
「だから見た方が早いんだよ。ルシエラやれ」
「はい。久しぶりです…」
ルシエラが少しづつ透けて透明になっていく。
「お嬢さんが消えていくの?」
「サタン違う。良く見て聞け…」
「『あーーーーーーーーー♪』」
いきなりの大声量が響き渡る。
「何?!この振動?!」
「天界なのに地震だわ!!」
「違います…コレはルシエラ様の唄う声が響いてるだけなのです」
ティーカップや机等が揺れアテナとサタンが伏せてる中で悠然と座っているロキと脇に立って居るファントムが言う。その反対側にはテレサも立っている。
「流石ファントム。長年生きたヤツの中で俺と同格の知識はあるな。お前も俺の誇りだ1号ファントム。次はお前の番だ…今回は暗転のみやれ」
「はい。時間の程は?」
「いつものように見計らって解け」
「御意」
ふと暗闇に包まれるアトリエ。
「ロキー?いきなり暗くしないでよー?」
「ロキ君暗くて見えないわよ?」
いきなり暗くしたから2人して戸惑い言う。
「2人とも落ち着いてくれ。聖霊は光の中だと透け通るからこっちのがわかりやすいんだわ」
映像の様に浮いて笑って居るルシエラ。
「居る…」
「居たのね…」
確認出来たから終了。
「ルシエラお疲れ様。戻って良いぞ」
ファントムも暗転を解き、ルシエラも実体化する。
「まさか…本当に…」
2人して驚愕の事実に愕然としている。
「いきなり元に戻ると共振してしまうんです。すみません」
ペコりと謝り、ちょこまかと準備するルシエラ。
「所でお2人さん?俺が何だったか忘れて無い?」
そこに座り見据えているのは白金の髪で蒼と紅の金銀妖瞳の瞳を持つ神童ロキ・グングニール。
2人が固まった。魔装具はルシエラが収納袋にしまってくれた。
「俺さ?普通にルシエラの事も話したから言うんだけど。神なんだけど異端児なんだわ」
そう言うとアテナが、
「異端児ですって?!あれは大地の自然現象で産まれた子とかのコトよ?天界でなんて有り得ないわ!」
ロキはやっぱりと言う様に、
「でも、本当のコトだし産まれた時からの記憶もあるから嘘じゃないんだよな。ハッキリとゼウス爺のエリアで産まれたって言えるし、爺も認識してる」
アテナは驚き呟く。
「嘘でしょ…」
「で、先ず出逢ったのは聖霊ルシエラ。俺達産まれた時からの2人で1対なんだよね」
アテナが疑問に思う事を言う。
「え?でも、ロキ君はルシエラちゃんと出逢ったのは2年前って言ってなかったかしら…?」
「実体化したのは2年前からだよ。造ったの俺だし。俺がただの金銀妖瞳だと思う?コレには意味あるんだよな」
「意味?」
2人がきょとんとしている。
「映像と時間が見えてるんだよ?併せると観察眼と魔眼や千里眼とかになる。ついでに死神の目みたいなのにもなるぞ?」
良く分からないと言う感じの2人。この説明難しいんだよな。
「んー…横と縦と…奥行きの見え方になる空間認識能力みたいな感じに色んな情報が分かったり遠くが見えたりするんですよ」
ルシエラが代わりに応えてくれた。
「俺達は産まれた時から一緒だったから一番最初にしたのが意思疎通。思念伝達が出来た。思うだけで分かるから喋らなくて平気なんだ…だが世界には言葉があった。けど、俺は後の勉学の1年で30ヶ国語理解出来たから余裕だったんだわ。取り敢えず色んな情報を共有しながら赤子の1年森の中の湖が見えるトコで過ごしてた。俺が命を吸うコトで生きれるコトをルシエラが理解して、ルシエラは命を狩って飽和するコトを覚えた。1年後にたまたま湖に釣りに来たゼウス爺の目に止まり世話になった…7歳迄だけど。2歳の頃にプラズマを理解してたから4歳で爺に寿命来た桜の大木を利用して杖と染料を渡したんだが…爺が杖の機能理解するのに時間掛かったんだよな。まぁ、その事がきっかけで神童と呼ばれた。造ったら渡してモノを貰うコトを覚えて物造りの研究が始まった」
アテナが問う。
「子供に可能なのそんな事?」
俺は普通に応える。
「多分俺だけだな。ルシエラが居たし。独りに見えるんだが違うんだよ?2人なんだよ。それに自然には協力者が居る。精霊も動物も居るから自然に学べるんだよ。忘れる事が無いからどれだけでも覚えれるしすぐ思い出せる。確かサタン…お前が初めて俺を異質な目で見たのは爺が3回目の杖お披露目会の席だ。爺にあれ誰?って名前を聞いたら教えてくれたから良く覚えてんだよ。羨望はあるんだが異質なのはお前が初めてだったんだよ…ルシエラも覚えてたから今回利用したんだろ。自然は敵に回したら怖いからな?」
「オレの記憶でも無限の寿命のショックと才能の凄さとその姿に魅了されたコトしか残って無いのにそんなに鮮明なんだー…」
「だから舐めんなよ?ガキでもな…取り敢えず爺のトコで神達の綺麗な言葉の裏の妬みつらみ怨みの感情にルシエラ飲まれかけてたから旅に出た。それが7つの時だ。動物を狩って魂を飽和して食って身体どうしようとしてたら、欲しがるヤツ沢山居るんだよ?この旅で動物の解剖と魔法の基礎を覚えてひたすら練習してた。10の時に拠点欲しいなって探してたら、やけに騒いでるジャック・オ・ランタンの集団が見えたんだよ。爺の家にあった書物は全て暗記済みだから何のコトが分かってた…ハロウィンの葬送で馬鹿騒ぎしてたってのが分かった。そこでファントムの影になる精霊と契約した」
ファントムがお辞儀をしながら言う。
「あの時…初めてお見かけした時から、旦那様に仕えるべきだと思っておりました」
ファントムはそう言うと脇に下がる。
「んで、拠点がまだ無かったから探してたらこの一帯の情報を得た。建物がないかと聞いたらこのアトリエの主格となる屋敷を手に入れた。今こそ広いが、最初は3LDKだったんだぞ?10年を過ごす度に部屋を増やしていった。物造りはこの時には基盤に乗ってた。時々裏の山側から魔鉱石飛んで来るからひたすら集めてたんだよ。あのさ?あれ後で爺に聞いたら魔族の嫌がらせだったらしいな?俺、ファントムとかテレサとか闇の眷属仲間に付けてたから効かなかったんだわ」
「誤解ない用に言っておくけど、オレ指示してないからねー?」
サタンは否定する。それにしても2人とも真剣に聞いてるな…続けて話す事にする。
「12でアトリエを開いた。狙いは…サタン?お前だよ。どうやって伝えたか知りたいか?簡単なんだよなこれ。爺に懐かせてた鳩数匹にメモ書いて足に括ってルシエラが風で誘導。爺が読んだら神とか魔王や覇王に言付るだけ。その間に魔鉱石を融解と練成の繰り返しで純度の高い魔石を造った。1つ目の作品は集めてた魔石とシルバーで作り易かった十字架。銀の十字架の真ん中に浄化した魔石嵌め込んだシンプルな物だ。神童の製品としては初めての作品の割にそこそこ評価が良かった。んで、裏にあった無駄にデカい山の地質調査…鉄鉱石が多かったから鉄の十字架も追加すると何故か下界で流行ってた…あ!因みに言っておくが下界のカリスマは殺してないからな?取り敢えず懐が裕福になってたから屋敷の構造を今の基盤のお城に変えた。アトリエはこの時デザインしたんだよな。魔力の発想の風刃で石垣貯めて裏山が消えて平地になって暗さがなくなった。自然の防衛から人工のデカい城で邪魔してたこの時に魔族の魂喰いすぎて一気に成長してたんだよな…15の時にサタン用の魔族好みの品物広げて展開したらマジモン来るんだもん…あほだろ。偽者に頼めよ」
「だってオレじゃないと死神の目で確認出来ないじゃん…」
「なら堂々と来いよ頬赤らめてもじもじしながら来んなよ。きめぇ」
「いや、神童の成長は常に更新されて年々想像以上のオーラアップじゃん?」
「ちげぇよ!!魔族の魂とか他の魂の溜まり場だったから無駄に成長したんだよ!分かれ!!んでも、18歳位の少年と青年の間くらいで成長止まったんだよな…この数千年姿は変わってない。声変わりしてたのが幸いだったわ」
そう言うとサタンがキラキラした顔で言う。
「マジで奇跡の宝物…最後の魔装具外して金銀妖瞳に変わった瞬間マジで見てたよー。目伏せてると少年なのに気付いて仕事モードの目でキリッて見つめてくると大人に変わる…ホント最高傑作の天界屈指のイケメン」
サタンが感極まっている。だからきめぇよ。
「あん時、視界変わったから刺しそうになったわ。俺はお前の何なんだ?」
「孤高の王子様で本命?」
「ざけんな。昔相手にされないからって帰りにヤケクソでルシフェル口説いて堕天させたじゃねぇかよ」
「なんだバレてたー?」
「地元の情報回んの早いんだよ!だからこの前妙に辛気臭いこと匂わしてたわ、何か大事にしてるわぁて思って自由にさせた結果ルシエラにやられてオレの全力で復活してんだよ!タラシは本命作んな…ネタにもされてるんだぞ!俺、愛妻家なのに可哀想」
話を聞いてたアテナがお茶を一口飲んでから…
「ルシエラちゃん…中々手練ね」
と言うとルシエラは、
「えへへ…狩り慣れてる匂いには敏感なんでロキ様が全力なんてないですからチャンスと思いまして」
てへへと恥じらうルシエラ。いや可愛いけど…なんか怖い発言してないか?
「結果どうだったんだサタン」
「唄が聞こえてから仮死状態で生き返るの…アンタらのハーモニー最高♪」
「…きめぇよ。それに俺は未経験だから分かんねぇし」
「ロキの魂ならコレクションするよ?」
「断る。途中端折ったがサタンを嵌めたのは、俺では無くてルシエラの好奇心」
俺嘘吐くの苦手だから隠しても仕方ない。
「待って肝心な所抜けてる」
アテナが手を伸ばす。
「彼女の実体化のきっかけ何?」
「コレは色々面倒なんだけど、今下界で発達してる空想科学ってすげぇんだわ。俺の技術からの発展を考える天才も居るわけよ。15年前に電化製品纏めて買って下界の家に纏めてたの組み立ててネット徘徊の日々。情報の山を出来るだけ詰め込んで地下室に研究所作って、ルシエラ仕様にしてたら培養液にルシエラが入ってたんだよ。プルプルしながら水素分解させてたんだよな。試しになんとなく俺ナイフ出して指切って傷塞がる迄待ってた訳…そしたら血も分解すんの。ひたすら分解で終わって、その水調べたら弱冠俺の体液に寄せた何かが出来た訳。何か楽しかったからホムンクルスの素って何だっけて色んな情報照らして錬金術と科学で分かれた。そこから研究の日々。先に模造品のが造るの楽だから造ったんだけど、それには何にも感情湧かなくて心臓と脳だけ取り出し、心臓と脳はルシエラの中にある」
「ロキ君…あなた感情湧かなくて何してるの?」
「ルシエラ実体化の為の実験」
「分かったわ…あなたは興味のあるコト以外感情希薄なのね」
何処か諦め顔のアテナ。
「石ころと同じ。使う時投げて見る…俺の全てはルシエラのモノでルシエラは逆なんだよ」