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短編集 冬花火

ササブネ

作者: 春風 月葉

 笹の葉が川にひらりと落ちていき、すっと水の中へ消えた。

 それでは沈んでしまうだろうと思い、ひんやりと冷たい水の中へと袖を捲った腕を入れて、落ちた笹の葉をつまみ出した。

 その葉に少し手を加え、一隻の舟を造り、ゆっくりと水面につけてから手を放す。

 あの舟は、これから先どんな旅をするのだろうか…

 そんなことを思いながら、私は山道を後にした。

 山を降りると、そこには小さな村があり、そこでは子供達が先の私のように、笹の舟を造っては流していた。

 奇遇なものだ、私も先程同じように舟を造って上流から流したのだが、その舟はもう見失ってしまった。

 そう話すと子供の一人が、では先の舟はあなたの舟だったか、あの舟は立派で素晴らしかったが、この長い水の道をたった一隻では淋しいだろうと、皆で舟を流しているのだと言った。

 そうかと口にし、込み上げる不思議な感情が溢れてしまわないように、ぐっと抑えて、子供の頭をわしゃわしゃと撫でまわした後に、ありがとうと声を絞り出した。

 子供は無垢に私の手を取り、一緒に舟を造ろうと言った。

 どうやら私も、もう一隻ではなくなったようだ。

 私は子供達の所へと流れていった。

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