第7話 想い 『11月16日(木)』
一日ぶりです!
とりあえずお腹も少し空いてるからクレープ屋さんでクレープを買った。フードコートに入っているお店で、リーズナブルで学生に人気の店だ。
僕はチョコレートクレープ。クレープにチョコアイスが1つ入っていて、上からチョコソースがかかっている。遥は『超ウルトラスーパーメガクレープ』という怪物を買った。その大きさ、まさに怪物。アイスが3つにイチゴとバナナとキウイが入って、これでもかというほどチョコソースとストロベリーソースをぶっかけた究極の1品。いや、逸品。もはやクレープと呼べるかも分からないほどの怪物だが、遥は10分ほどでペロリと平らげてしまった。
「……よく入るね、そんなおっきいの」
「え? 甘いものは無限に食べれるでしょ」
「そんなに食べて太らない?」
「…………結糸って何気にデリカシーに欠けるよね」
「ああ!! ごめんごめん…………いや、でも体小さいのによく入るなぁ、と」
遥の身長は女子の中でも低い方で、普通くらいの身長の僕と並んでも顔ひとつ分くらい違う。お陰で僕でも彼女と並んだら様になる。
「女の子には四次元ポケットがあるの」
「でも遥って細いよね。細くてかわいい」
「…………ありがと」
話題を逸らすことには成功したが恥ずかしさで居たたまれない。逃げ出したい。でもそれは隣で頬を朱に染めている遥も同じで、自分と同じだと分かったら嬉しくてもっと遥に惹かれていく。魅了される、の方が合うだろうか? とにもかくにも遥のことがもっと好きになった。
「…………じゃ、じゃあ何処に行く?」
沈黙を破る。さっきの後遺症で若干噛んでしまったけれど。
「んー……あ、本屋さんはどう?」
「いいね、じゃあ行こっか。2階だよね?」
「うん。階段の方が近いから階段で行こう」
遥の方がここのことは詳しいようで、遥の後に着いて行く。
遥が階段を数段上った辺りで不意に遥の体が宙に浮いた。
「えっ、、、」
「っ……!」
遥の体を受け止める。その体は羽のように軽く、軽々と受け止める……なんてことも出来ず、うしろに倒れる。
「あたたた……遥、大丈夫?」
「…………………………みゅぅ」
遥が顔を耳まで真っ赤にしてフリーズしてる。よく考えたらこの体勢、遥が僕を押し倒してるようで……
「ああ!! ごめん!」
「う、ううん……ありがと、受け止めてくれて」
「彼女を守るのは彼氏の仕事だから。何回でも受け止めるよ」
言ってから恥ずかしいことを言ったことに気づく。毎度毎度気づくのが遅い。
遥が微かな温もりを残して僕の上から降りる。
「……好き、結糸」
「う、うん。僕も。…………危ないから、手、繋ご」
遥のことがいとおしくて、でもちょっと恥ずかしいから口実を作って手を差しのべる。
「へへっ、うん!」
そして僕は彼女と手を…………
「おふたりさん、いい雰囲気のところ悪いけど通れないから退いてくれない?」
「「……………っ!!!!」」
いい雰囲気に水を指したのは片原さん。何故かよく目が合うけれど、話したことはほとんど無いから名前覚えていない。とっても美人だけど気が強くて男っぽい子、そんな印象。背も僕より少し高いくらいで格好いい。確か、遥と仲が良かった気がする。教室でもよく2人で話しているのを見かけるし。いや、妬いてるとかじゃないし。嫉妬とかしてないし。
「あー、続けてくれて構わないから退くだけ退いて」
「な、何で想歌ちゃんがここに!?」
片原 想歌 がフルネームらしい。
「いや、何でってよく来るし、ここ。それにうちの中学の子も良く来るよ。さっきも隣のクラスの子達と会ったし」
「し、知らなかった…………」
「まあ、知られたくないなら見つからないように頑張んな。それじゃあまた明日。結糸も、バイバイ」
「あ、バイバイ……」
嵐のように去っていく片原さん。というか名前覚えててくれたんだ。なんかこっちが覚えてなくて申し訳ない。でも接点なんてほとんど無かった気がするけどなぁ……いや、僕が覚えてなかったことを正当化しようとしているわけではないよ?
「あ、あのね、結糸。想歌ちゃんは私の親友で、結糸のこととか色々相談してもらってたの……」
「え、僕なにか悩ませるようなことしたっけ?」
「そうじゃなくて、その…………結糸にいつ告白しようか、とか……ね」
「…………え、それじゃあもしかして両想いだったの?」
「そ、そうだよ!…………だから結糸が告白してくれたとき、すっごい、嬉しかった」
2回目のデートにして、とても、とてつもなく、嬉しい事実を知った。
とても嬉しかったし、『嬉しかった』と言ったときの、若干恥ずかしさが混じった照れ笑いとか、一生忘れることの無いレベルでかわいかったけれど、恥ずかしすぎて10分くらいまともに遥の顔を見ることができなかった……