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第15話 宣言 『11月23日(木)』

お久しぶりです

毎回言ってますがお久しぶりです

 遥の家に着くと玄関には遥が立っていた。その顔は俯いていて表情が分からない。


「久しぶり、元気?」


 呼んでみたものの返答は無く、顔は俯いたまま。何かあったのだろうか?体調が悪いとかでは無さそうだ。ずっと休んでいたのはもしかしてイジメ、とか…………?


 一、二分ほど沈黙が続いたところで袖を引っ張られる感覚がした。左肘をみると遥が服を握り、引っ張っていた。例えるなら小さい子が「こっち!」と行きたい所を伝えるかのよう。どこかに行きたいのだろうか? すると遥がうつむいたままトボトボと歩きだした。遥のペースに合わせゆっくりと僕もついていく。


 朝晴れていた空は雨が降りそうなほど曇っていた。






 遥の目的地は歩いて十分くらいの所にある公園、初めてのデートで来た場所だ。曇っているからなのか、公園にはあまり人がおらず、がら空きになっているベンチの一つに遥は僕を連れていった。


 ベンチに座ると遥は手を僕の服から離した。もう落ち着いたのだろうか?


「遥、どうしたの? 何があったの?」


 少しの間を置いてから遥が口を開いた。今日初めて目線が合ったその顔には、涙の跡がうっすらと見えた。


「結糸、別れてほしいの」

「え、なんて?」

「だから、別れてほしいの」

「え、な、なんで? 何か…………怒らせることした? もしもしたのなら謝るし、もう二度としないって誓う。だから別れるのは……」


 ど、どういうことだ?別れて欲しいなんて……それもまだ付き合ったばっかりで、駄菓子屋さんにまた行こうね、ってそう話したのはついこの間なのに。


「違う! 違うのっ! 結糸は悪くない」

「じゃあ、なんで……」


 遥が堪えきれなくなったのか、少し涙を溢しながら理由(わけ)を話す。


「お父さんが、転勤することになったの」

「え、?」

「それで私もついて行かなきゃならなくて、会えないとすごく辛いと思うから」

「どこに行っても遥への気持ちは変わらない。それこそ月に一度くらいなら会えるでしょ? メールで毎日会話できるし…………だから別れるのは…………」

「ニューヨーク、なの」

「なにが…………?」

「引っ越す先」

「へ? ええ? アメリカの!?」

「そう、アメリカ…………」


 引っ越す先はてっきり日本のどこかだと思っていたら日本ですらなかっただなんて……


「いつ? いつ引っ越すの?」

「来週だって」

「そんな……」

「だからね、別れて……欲しいの。じゃないと、辛くてしょうがないの……」


 せっかく想いを伝えることができて、それが遥にも伝わって受け入れてくれたのに、これから2人で過ごす幸せな時間が、なんでもないけど暖かく幸せな、そんな日常が訪れると思っていたのに………………でも、



「別れない」

「え? なんで? 会えないんだよ?」

「じゃあ遥は僕と別れたいの?」

「そんなわけ無いじゃん!!」


 こうもキッパリ言われると少し照れる。


「じゃ、じゃあ何で別れる必要があるの?」

「……………………いいの? いつ帰るかも分からないんだよ? 何年も会えないかもしれないんだよ? 私を待つ間、他の人は恋人とデートとかするだろうけど、手を繋ぐことすらできないんだよ? 授業中こっそり手紙を交換したりとか、また校舎裏で秘密の約束をしたりとか、放課後こうやってデートして、なんでもないことを話すっていう、それだけの当たり前すらできないんだよ?」


 少し息を切らす遥に、僕は宣言するように想いを伝える――――まだ言ったことの無い言葉で。


「僕は遥が好きだ。だから、大丈夫」


 遥が再び涙を流す。でもさっきとは違う涙。悲しさだけから来る涙じゃない、少し温もりのある、そんな涙を。


「結糸、」

「何?」

「好き」

「うん」

「大好き」

「僕も。だから、大丈夫」


 だって、僕と遥は繋がってるから。遥から貰った、僕が伝えた『何か』で。


「…………うん」

「毎日連絡する」

「うん」

「毎日君を想う」

「うん」

「絶対に君以外を好きにはならない」

「うん、私も」


 だから、ずっと遥のことを待ち続けると遥に誓う。


「だから、これからも付き合って欲しい。別れたくない」

「うん、ありがとう。私でよかったら、これからも、ずっとずっと、付き合ってください。あなたのことが、結糸のことが、大好きです」


 遥は笑って、そう伝えてくれた。


「ん。もちろん! …………それで……具体的にはいつ日本を発つの?」

「来週の水曜日。でも用意とかあるから、学校以外だと行く前の日しか会えないの。水曜日は学校に行かないし」

「分かった。じゃあ来週の火曜日は絶対に会おう。遥が向こうでも頑張れるように思い出を作ろう」

「分かった。絶対だからね。何があっても会おうね」

「何があってもって何が起きるんだよ」

「絶対ってこと」

「じゃあ指切りしよう。懐かしいでしょ」

「恥ずかしいよ」

「いいからいいから」


 僕の小指を遥の小指に絡める。細くてすぐに折れてしまいそうな指は綺麗で滑らかで温かくて、『約束破ったら針を千本飲ませるぞ』という、何気に恐ろしい脅しをした後も離したく無いほどだった。







「そろそろ帰らないといけないから」

「うん」


 そう遥が言い出すまでずっとお互いの手を握りながら座っていた。言葉を交わすことはせず、ただただお互いを感じとるように、相手の存在を刻み付けるように公園から見える景色を眺めていた。辺りはもう街灯無しでは何も見えないほど暗い。でもその空は、昼間みたいに曇ってなくて、ちらほらと星が見えた。




 遥を家へ送る間もお互い口数は少なかった。けれど、ベタな表現だけど、繋がったその手から温もりが伝わってきて、話さなくてもそこに遥を感じられて、心が温かくなった。


 遥の家の前に着いた。これから一週間もこうして二人っきりになれない。そのことが胸をひどく締め付ける。でもそのあとは何年も会えないかもしれない。だからたかが一週間くらいで泣き言は言えない。ずっと遥を待つと決めたから。


「明日は学校に来るの?」

「うん、行く。皆とも会えなくなるから」

「じゃあ、また明日」

「うん」


 名残惜しいけれど、そろそろ家に帰らないと母上に叱られる。


「遥」

「なに?」


 遥をその愛おしい姿を正面から見てありのままの想いを伝える。


「…………愛、してる」


 言葉にすると、遥の存在が心の中で膨れ上がって、もう会えなくなると思うと寂しすぎて


「へへっ、私も結糸のこと、愛してる」

「それじゃあまた明日! バイバイ!」

「バイバイ!」


 涙が出そうになるのを堪えるために、テンションを無理やり上げてサヨナラをした。









 それからの日々は、過ぎて欲しくない時間ほど早く過ぎるということを代弁するかのように、あっという間に過ぎていった。

二月ですねぇ

本当ならもう四、五話だすつもりでした

相も変わらず出す出す詐欺常習犯のミヤziiです

まだまだ寒いのでお体に気をつけてください

それではまた

次は近々出します

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