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仕切り直しで

どうしましょう!右足をつってしまった!走り方がかなりおかしくなり、さっきまでの速度が全く出ない。そうか、あくまで『逃げ足の強化』だから長々と持久走をするには向いていないのかもしれない。本当だったらサッと避難してパッと隠れるのが正しいやり方だったんだ!

そんな事は今考えても仕方ない。このままでは追い付かれてしまう……!


「こっちだ!」


その時、前方から声がかけられた!見るとイケメンな剣士?が洞窟の中から大きく手を振っている。洞窟?洞窟なんか入ったらそれこそ袋のネズミじゃないか?しかしそんな事は言ってられない。もしかしなくても、この剣士が追っ手を退治してくれるかも知れない!


「はいーー!!」


最後の力を振り絞って、ヘッドスライディング風に洞窟へ飛び込んだ。洞窟の内部には、剣士の他にも数人隠れていた。後ろを振り返ろうとすると、


「見るな!!」


剣士に恫喝され縮こまる。なんだって言うんだ!?


「アイツはコカトリス。アイツと目が合ったら石になってしまう!」


……マジか。そんなん初見殺しすぎるだろ!?

というか、最初に死んだフリとかしてて良かった。そのお陰で俺はアイツの目を見ていないからな。

だが、そうこう言ってる内にどんどんコカトリスの雄叫びが近付いてきているぞ。本当に大丈夫なんだろうか?


「コケェッコッコーーッ!!」


来てる来てる!すぐそこまで来てるって!俺が無意味にバタバタ慌てていると、さっきの剣士が洞窟の中の一人、青髪の少女に声をかけた。


「よし、マーリア。合図と同時にぶっ放してくれ!」

「オッケーだぜぇ!」


どんどん、どんどんコカトリスの絶叫が迫ってくる。その声が反響して、洞窟の中の空気が震えている。駄目だ、入ってくる!


「三、二、一、今だ!」

「シールドッ!」


ドォォーンッッ!!


直線、バカでかい衝撃音がした。何だ?と思う前に続いて何度もドン、ドン、と、何かがぶつかる音が聞こえてきた。?俺の後ろで何が起こってるんだ?不思議がってるのが分かったのかマーリアと呼ばれた少女が寄ってきた。


「ヤツが入ってくる直前に、この洞窟を塞ぐようにシールドの魔法を張ったのさぁ!俺程の魔力なら当分は持ちこたえるだろうよ。」


「ま、魔法ですか!」


なんだって!これは是非とも見てみたい!俺はバッと後ろを振り返って洞窟入口を見た。


「へーぇー、これが……まほ……ぅ……」


そして、鶏さんとバッチリ目が合ってしまいました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「気付いたか?」


気がついたら数人が俺の顔を覗き込んでいた。あれ?俺寝てたっけ?

あっ!そう言えばコカトリスと目があっちゃったんだった!


「ハッ!う、動けな……くない?」


「……危ないところだったな。たまたま解呪の霊薬が一回分だけあったんだ。これはとても貴重な品で、誰もが持ってる訳じゃない。……本当だったらお前は永遠に石のままだったんだぞ。」


さっきの剣士に忠告されてしまった。


「す、すみません。」


「まあまあ、良いじゃねえかケビン!結局コカトリスも退治してみんな無事だったんだし!」


さっきの魔法使い、マーリアさんが言う。

どうやらこの剣士はケビンさんらしい。ケビンさんはまだ不機嫌そうな顔をしている。まあ、確かに

相当なレアアイテムを使わせちゃったっぽいからなあ……


「そんな事よりもアンタ、魔法がそんなに珍しかったのかァ?シールドの魔法なんてたいして珍しきゃねぇだろ?」


「あっ、いやあ。ええと。俺、凄い田舎から来たんです。魔法もモンスターも始めて見ました。」


お、意外とすんなり誤魔化せたんじゃないか?

異世界とか言ったら頭がおかしいと思われかねないからな。


「へえー、なるほど。しっかし田舎に魔法使いがいないのはままあるが、モンスターすらいねえとなると……」


ハッ。しまった。田舎ならモンスターはむしろ、いっぱいいる、気がする!ちょっと困っていると、奥からまた別の人がやって来た。カールのかかった金髪の女性だ。


「ふふふ、マリちゃん。世界には、外界と接触を絶っているような隠れ里が点在しています。その中にはモンスターすらも存在しない平和な里があるらしいですよ。」


「なぁるほどぉー。でも、そんなトコからアンタは何しにやって来たんだ?」


そんな所があるのか。なんか、よく知らないけどエルフとか住んでそう。まあ、この話に合わせておいた方が会話が成立しそうだ。実際俺はモンスターの存在しない平和な里からやって来たんだし。


「いやあ、実は、……何かに巻き込まれていきなり転移して来ちゃったんです。それで、帰り道を探すためにひとまず東の町で情報収拾するつもりです。」


「あらまあ、隠れ里は存在そのものが魔法に守られているはずです。そこの普通の住民が魔法を使って戦ったりすることはあまり無くても、村長達は魔法の研究をしているんです。なのでおそらく、その実験に巻き込まれたのではないでしょうか?」


「まあ、ソー言うことだろうな。しかしお前は運がイイ!今、東の町、トルキアには大賢者ユッカ様がァ来てるんだよ!実は俺達、ユッカ様の弟子みたいなもんでさ、これから会いに行くつもりだったんだよ!」


「……なんならお前も来るか?一人じゃ中々不安だろ。」


ケビンが呟くように提案してきた。確かに、ここは随分危険のようだ。誰か来てくれるならありがたい。


「……いいんですか?あんな貴重な物まで使っていただいたのに。」


「当たり前だ。しかし、一個だけお前は勘違いをしている。オレが不機嫌だったのは霊薬を使わされたからじゃないぞ。お前が命の危険のあるなか、忠告したにも関わらず振り向いたからだ。……これからは注意しろ。」


「はっ、はい。よろしくお願いします!」


この人勇者だわ。


「ヨゥシ!じゃあここから少しは五人旅だぁ!」


あれ?五人?


「ウム。よろしく頼む。」


「!」

いきなり、別の人に話しかけられ心臓が飛び出た。

俺の隣には顔まで鎧のマスクで隠した大男がいた。


「ワシは武闘家のムオー。暇な時は気配を消す訓練をしておる。」


な、なるほど。


「俺はマーリア。魔女みてぇーなもんだ!」


やっぱりそうなんだ。


「私はキュリアです。このチームでは回復役をやっています。」


二人目の女性だ。なるほどチームのバランスが良い、気がする!


「オレはケビン。剣の扱いには自信がある。」


おお、かっこいい!し、しかし、この流れは俺が名乗る番か。よ、よし。


「お、俺はリューヤです。え、ええと、あまり役にはたてません!すみません!」


と、いった瞬間、腰にかけてた袋から何かが飛び出てきた。あっ、そう言えばはぐれスライムを拾ったんだった!


「スラァ!キュイッ!」


こっからちょっとの間、五人と一匹の旅のようだ。

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