森のスライム
スーッと目の前の光が引いていく。
すると辺りは……
「おお、森だ。」
周りには木がたくさん。しかし樹海ほど荒れてはおらず、ちゃんと日光がここまで降り注いでいる。森林浴でもしたくなるほど清々しい場所だ。
深呼吸してみる。やっぱり空気が美味しいな。流石は異世界。
そのちょっと奥には、大きなゲートがみえる。きっと村の入口だろう。
さて、早速行ってみるか。
……と、思った瞬間。
ドドドドドドッと大きな地響きが聞こえてきた。
うん?足音かな?
ちょっと様子を見ていると、
「逃げろオー!!五百年に一度の災厄が攻めてくるぞぅー!!」
!!
ゲートからガタイの良いおっさんがこちらに向かってダッシュしてきてるぞ!!
いや、おっさん一人だけじゃない!その後ろに凄い人数の村人?が着いてきてる!
そうか、こんな大人数が走ればそりゃあ地響きも起きますわ。
なんて思っている内に村人ズ達は俺の横を通りすぎて行った。
やれやれ。騒がしい事だ。
……あれ?これ何かヤバイんじゃね?
そーっと視線を村の方に戻す。するとそこの上空には、
「ギィャーッ!!」
体長は三メートル程、顔だけ鶏のドラゴン?が一匹飛び回っていた。
ってド、ド、ドラゴン!?アカンぞこれは!
ま、まずは落ち着こう。こういうときは目を合わせたらいけないんだ。そして死んだふりをしてやり過ごすのが正解のはず!よし、目を閉じて寝っころがろう。
「クケーッ!!」
ああ駄目だ。声が近付いてくる!も、もう覚悟を決めて全力ダッシュで逃げるしかない!俺はサッと立ち上がると同時に思いきり駆け出した。と、思った途端、
「!?」
恐ろしい程のスピードで景色が流れていった。
「なんだ!?これ?」
呟いたすぐ後、例の爺さんが言っていた事を思い出した。
『逃げ足を強化』
なるほど、確かに足が速くなっている。間違いなく車くらいのスピードはでてるぞ。風が顔に当たりまくって痛い程だ。
「コッコケーッッ!」
しかし相手は空飛ぶモンスター。なかなか引き離せない。まずいぞ、どっか隠れられないか?と、前方を確認していると何やら青い物体が目についた。
「キュー」
!?あれスライムじゃね?何か鳴いてる。可愛い。とか思っている間にどんどんスライムが近付いてきた!ど、ど、ど、どうしよう?
「えいッ!」
おっと。焦りすぎて何となくスライムを拾ってきちゃったぞ。良いんだろうか?コイツも多分モンスター何だよな。俺を喰おうとしてきたらどうしよう?捨てていこうかな。
「キュイ?」
!?だ、駄目だ!可愛い!それにスライムは『ドラグーンクエストⅤ』の時から俺の相棒なんだ!こんなところで見捨てられるかー!スライムがこのカーチェイスの最中落ちないように、金貨の入った袋の中に突っ込んでおく。
「キシャー!!」
す、少し咆哮が遠くなったか?しかしまだ油断は出来ない。もっと遠くに行かねば。というかあの村人達はどこへ消えたんだ?このスピードなら追い付けそうなんだけど……やっぱり何処かに隠れ場所があったって事だろうな。
「あっ。」
やばい。足つった。やばい。