プロローグ
ここは地面も空も何も無い暗黒の空間。
その闇の中に様々な色の光の柱だけが真っ直ぐに伸びている。
赤、蒼、金、白。
そんな異次元の空間の中、浮かんでいる者が二体。
「其処を退くのだ。悪魔め。」
そのうち一体がもう片方に話しかけた。ぞっとするほど低い声である。その響きには痛みを感じるほどの怨念が込められていた。
「悪魔はどちらだ。ここは決して通しはせんぞ。魔王よ。」
対するこの男の声には、正義感、使命感、そして覚悟が感じられた。二体の間に漂うただならない雰囲気は、きっとその場に生物がいたら発狂させてしまうほどの緊張感をはらんでいる。
「……そうか。それならば、力付くでいかせてもらうのみっ!!」
「望むところ!!」
瞬間、二体の影がそれぞれ光の玉を放った。直後光球はぶつかり、凄まじい音をたて爆発を起こす。それをかわきりに二体は高速で戦闘を始めた。それはとても観測することさえ困難なスピードのぶつかり合い。数百もの光球が現れては相殺され、弾き飛ばされ、二体の距離が近付いた一瞬、蹴りと拳も打ち合っている。
「さすがにやるなッ!!しかしまだまだ終わらんぞ!!」
怨念の声が叫んでいる。しかし、
「いいや、終わりだ。幻想の王よ。」
使命の声は高らかに告げた。その上空には巨大な脈打つ黒い立方体が浮かんでいる。
「い、いつの間に!」
「完全に滅することは出来んだろうが、ここで永久に眠っていろ!」
立方体からあり得ない量の、光の、焔の、漆黒の大蛇達が、そして幾千もの輝く球体が出現し、魔王と呼ばれた者を全ての方向から襲った。そして、その魔王を起点にしてとてつもない爆発が起こる。その爆裂の光と炎は、攻撃を放った者のより数百倍は巨大である。その一瞬だけ、この暗い空間全てが明るくなった。まっすぐだった光の柱はねじまがり、空間が歪んでいる。
「よし。これで数千年は安心だろう。」
男が呟いた。しかしその瞬間、何も無い空間がブラックホールのようにグオンと渦を巻きだした。そして……
ポンッ!
そこから少年が飛び出した。
「うわッ!何ここ!?」
「あっ。やっちった。」