09
「壁画ってなんだよ、日月」
「今日、朝、学校に来る前洞窟に寄ったんだ。その時、穴の奥へ進んでみたら……、その壁画があったんだよ」
「早く言いなさいよ、日月、洞窟から出てきちゃったじゃない!」
ヒカは走って洞窟へと再度戻っていった。
「ああ、ヒカちゃん行っちゃった。私たちもいこうか」
千紗の言う通り、僕らも駆け足で洞窟へと戻った。先生ももちろん。
洞窟の最深部で、僕らは壁画を目にした。
「おお、誰が描いたのか……。すごい。先生も生を見たのは初めてだ」
壁画を生で見る人なんて、そんな多くいません。
「これは、龍神? その上には岩で……。なにがなんだか全然わからないわ。私にはパスよ、草、さっさと原因を求めて」
ヒカは考えることを放棄した。相変わらずの馬鹿だ。
「日月、俺にもまだ良くわからない。これは……、つまりどういうことだ」
「ふふっ、よくぞ聞いてくれたな……」
「なになに、気になる……」
千紗も興味津々だ。
「これは、この壁画は、壁画の要素全てで、伝説ということなのだよ!」
「はぁ、あんた何言ってんの? さっぱりわかんないわ」
ヒカ、おまえは、もう考えるな……、感じるんだ!
「なるほど、つまり、これらが全て揃わないと伝説として成り立たない……、日月はそう言いたいのだな」
「なるほど……、でも足りないものって……、岩もあるし……」
「あ、人じゃない!?」
ヒカはどうやら感じてくれたらしい。
「お、ヒカ正解」
「いぇーい、感で行ったけど当たったー」
「人が足りない……? でも私達は、いるでしょ……」
「なるほど、星空の下で、岩と大勢の人が、泉を復活させる鍵というのか……」
一方、先生は、困惑していて唖然としている。
「ふぅん、なるほどですね。ということは、沢山の人がいないから、水が湧いてこない。というこなのですね」
「ああ、きっとそうだと思うよ」
流石、千紗飲み込みが早くていいな。ヒカとはぜんぜん違うけど、二人共いいことがあってすごくいいと思う。
先生はやっと理解したのか、
「村の人だけでは足りない……、ということは人をたくさん集めるチャンスというのは、今日しかないんじゃないか」
確かに今日じゃなければ、人をこんなにも集めることは出来ないであろう。となると、チャンスは今日限り。急いで行動しなきゃ。
「よし、俺とヒカは、今日泊まってくれている人を含めて、村の人たちを集めてくる、おまえと千紗は石を池のところまで、運びだしてくれ」
草が言った。
「ああ、わかった。大丈夫だよな千紗」
「そうです。日月君」
草と、ヒカ、それに先生もが、人々を呼びに向かった。やれる時は、そう、今日しかない。
「日月君、こっちもがんばらないとね」
「ああ、そうだな」
僕は千紗と一緒に、石運びや簡単な整備を行った。星空が一番近いこの場所で……。
空に浮かぶ星星が光輝く中、人々がどんどん集まってきた……、壁画のことは、誰にも言ってないらしく洞窟には人は行っていない。池のほとりで念仏をとなえるお年寄り、こんなにもきれいな星空が珍しいと上ばかり見ている観光者、それに、神話の本当の姿を知っている、僕らだ。
時は満ちた。
「村の皆さん、それと観光でやってきていただいた皆さん、本当に有難うございます。
草が大声で話し始めた。
「皆さん、私達がお配りした石を持ってください」
僕、千紗、ヒカももちろん石を持った。
「それでは、皆さん、一、ニの三で上を向いて、石を上に持ち上げてください!」
草が大声で叫んだ。
「それではいきますよ」
僕らも言うことにした。
「「「「一、ニのー、三!!!!」」」」
僕らの持っている石は輝きだして、天へと登り始めた。やがて、石は……、龍の長い尾のようにくびれて行き、最終的には龍神、壁画に書かれているものと同じような形になって、空中を泳いで、宇宙へと登っていった。
それと同時に、池はすごく大きな音を立てて、水が吹き出した。
「うわあ、壁画本当だったんだ」
「あんたの、おかげで救われたのよ! この白池村は……」
ヒカはそう行って、僕の右手を握ってきた……。
「えっ」
声が出そうになると、僕の口を、ヒカが手で抑えた。
「静かにしなさい! 秘密なんだから……」
「すごいなぁ、本当だったんだ。龍神の伝説って……。授業で聞いただけだったけれど、これで、私も語り継いで行けるね……」
といって、今度は千紗は僕の左手を握ってきた。
「相変わらずだな……日月は」
草は呆れて、その後は、もう何も言わなかった。
僕らは、ずっと、ずっと空へ登る石を見つめていた。いや、石を見つめていたのではなく、それは……。
宇宙へと舞い上がってゆく、龍神と大地の恵みを大いなる力を目で、耳で、そして、手で感じ取っていたということだ……。
この伝説がいつまでも続くことを願って。僕らは、きっと誰もがそんな風に祈り続けた。この場所が、この場所であることを祝って……と……。
日付が変わって、次の日。昨日は、その後、解散して、水が……、あれその後思い出せない……、これはどういうことだ!?
ただの物忘れかと思って目を開けてみる。
「あれ……」
目を擦ってみる。あれあれ……。見たことのない光景が目に入ってくる。いや、正確には見たことはある。だがしかし、コレは小学生の頃に、ヒカの家にいって、ヒカと遊んだ時を最後に、見ていない……。
つまり、これは。
部屋にあった、鏡を見る。
「やあ、僕ではない、ヒカ」
……? 自分でも言っていることが意味不明だ。簡潔に説明するならば、中身は、僕、日月、それて外観、体はヒカのものになってしまった。
意識が入れ替わってしまった。
「つまり、どういうこと!?」
まだまだ、この物語は続く予定です。
今後とも宜しくお願い致します。




