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08

 今朝。僕は、白池へと行った。水の様子を確認するためだ。

 白池を見ても水は……。見た目では、はっきり言って、前に来た時と変わらない。石が誰かに取られたのかな……? 僕はそう思って、洞窟へと行った。

「やっべぇ、懐中電灯持ってくるの忘れた……」

 家に取りに行くのも面倒くさいので、手探りで小さな穴の中へと入っていった。

 目が少し慣れて、奥の部屋へ着いた。石は……と……。

 ゴンッ。目の前には壁。壁に激突してしまったみたいだ。

「いってぇ……」

 かすかに砂埃の音がする……。いや? かすかではない。どんどん音は大きくなってきた。

「なんかやべえなぁ」

 僕はそんな気配を感じ取った。

 大きな地響きが響いた。顔を上げて見てみると、さっき僕が激突してしまったところに大きめの穴がが開いていた。

「なんかすげえな」

 僕、頭を激突さてて、穴を見つけたことは初めてだよ。

 奥に行ってみたいが、それにはさすがに準備が必要だろう。僕は洞窟の外へ出て、周辺に落ちてた樹の枝を束ねた。

 ポケットにたまたま入っていたライターで火をつける。

 これで、安心して穴の奥へ入れる。

 探検の心得その一、必ず松明を持って洞窟には入ろう。酸素が薄くなっているのを調べられるからね。これ大事。

「僕は、どんどん奥へ進んでいく」

 だが、準備も虚しく、すぐに行き止まりだった。だが、その行き止まりは行き止まりというものにとてもふさわしいもの。

「おお、壁画だ……」

「これは、龍神……? その下にはたくさんの人か……」

 今の村の全員を合わせてもほど遠い数の人が描かれている。その上で湧き続ける泉の絵もある。その上には、大きな岩も描かれている……。

 下から、人々、龍神、泉、岩、星という順番で描かれている。岩か、やっぱり、あの石は白池を構成する大事な石だったということか……。

 まあ、さすがに学校に遅れるのもなんだろう。今日はイベントなのだから。

 洞窟を出て、火を消して、急いで家へと帰った。


「おーい、日月、今日はいつもにもまして眠そうだな。昨日が文化祭。しかも、成功して嬉しかったのはわかるけどな、いくらなんでも疲れ過ぎなんじゃないのか?」

 草が話してくる。全く、今日は早起きでねむいのに……。

「あんた、何でそんなに早起きしたのよ! 今日はイベントだってわかっててやっんでしょう? 馬鹿ね!」

 ヒカが言ってきた。全く、ヒカに言われるとムカつくなぁ。でもなんかヒカの声聞くと、安心するよなぁ……。

「何で、あんた、馬鹿って言われて、にやけてるのよ。きもい! まじきもい日月」

「ヒカちゃん、言い過ぎだよ。もう……、さあ日月君も起きて。ねぇ、先生が来るよ」

「どうせ、歴史の教師だろ……。まあいいじゃないか」

「相変わらず懲りないなぁ。日月は」

 草も呆れているので、さすがにちゃんと椅子に座った。先生もちょうど着たからね。

「おい、おまえら、出席とるぞ…………、まず河内」

「はい」

「窪」

「はい」

「午頭」

「はい」

「天神」

「はい」

「長尾は……、いないな」

 まあ、いつものことだ。先生は咳払いをして、続けた。

「おい、おまえら、今日は石拾いイベントだぞ。地味かもしれんが村のために頑張って欲しい。先生もちゃんと、知り合いの運転手に、村行きのバスを運転してもらえることになったからな、お客さんもきっといっぱい着てくれるだろう」

「じゃあ、天神、よろしく頼むぞ」

 先生から天神にバトンタッチ。どうやら、実行委員長になったらしい。

「よし、みんな、準備はいいか?」

「ああ、いいぞ、早く行ってくれ」

「そうよ」「そうですね」

 草は先生と同様に咳払いをして続けた。

「スタンプラリー形式で、最後のスタンプには、石が必要ということにして、村の観光もちゃっかりできるように、考えた。そして、スタンプなどの道具も先生に協力して全て道具も揃えてもらった。だから、みんなにやってほしいことがある」

「えー」

 僕の声が教室に響いた。

「全く、日月、文化祭が終わったらやる気ないな。やってほしいことは簡単だ。スタンプの配置を今からやって欲しい」

「何でやっとかないんだよ、草」

「めんどくさいからだ」

「「「ズコッ」」」

 僕もヒカも千紗もずっこけた。草って何気ないところで面白いというか抜けているというか、なんというか……。

「私は、どこに設置しに行けばいいんですかね。天神君」

 千紗が聞く。

「千紗は……、村の役場だ。あとは、ヒカは、村の入り口付近、そして、おまえ、日月は、白池だ!」

 ガーン。朝も白池行ってきたのに……、その時に言ってくれれば。

「なんで、僕だけそんな遠いところに置きにいかなくちゃならないんだよ!」

「気分だ」

「じゃあ草が行ってきてよ」

「俺は、実行委員長な上、センターの勉強もしなきゃならないんだ。わかったな」

 その後も数分口論が続いたが、すべて論破されてしまった……。僕のまけだ。本当に……、それは違うよ! って言えてよかった。

 僕はスタンプを持って、走って学校を出た。


 学校に戻ってくるともう、参加者が既に少し居た。スタンプラリーの受付を草がしてくれている。

「へぇ、草も仕事してるんだね」

「あたりまえだろう、日月も座ってちゃっちゃと受付手伝ってくれ」

「ああ」

 それから程なくして、ヒカと千紗も戻ってきて受付のしごとをした。

 はっきり言って、それからは、受付以外やることがなかった。


 それから、また時が過ぎて、日の入り間近になった。受付は超大忙し。石は村のお年寄りは、かなり拾ってきて、自分の家にも飾る人も結構居た。それから、今日は金曜日なので、ホテルや宿に泊まると言った人たちもいて嬉しかった。

「「「「ありがとうございました」」」」

 最後の人を見送った後、僕らは何も言わずに白池へ向かった。ちなみに、先生は後ろからちょろちょろとついてきた。

「何かしら? この穴」

 洞窟に着くなり、ヒカが大声を発した。

「ああ、今日誤って壁に激突しちゃったら、空いちゃったんだ」

「へえ、そんなこともあるのですね」

 千紗も頷いているが、みんな中に入ろうとはしない。本当にただの穴だと思っているからだろうか。まあ、僕だけの秘密として取っておけて嬉しい。

「さあ、これで全部だ」

 そんなことを考えているうちに、草と先生が石を全て洞窟に起き終わった。

「水はすぐ増えるんじゃないかしら」

「そうだね、ヒカちゃん。たくさん置いたからね」

「先生もそう思うぞ」

「先生には、誰にも聞いてませんよ」

 と草は先生に突っ込んでた。

 池に戻っても、水は………………。増えてはなかった。やっぱり少しずつ減っているだけだ。

「どうしたものか」

 先生は非常に困った顔をしている。本当に困った。水がこのまま戻らなければ、川は死に、村人は死に、村は市に……、じゃなくて村は死ぬ。

「日月くん、なんか他にないかな……?」

 千紗が僕の方を見てくる。うん、まってよ千紗、今何かが引っかかってて思い出せそうな所なんだ……。

「何考えてるよの、日月! あんたがそんなこと考えてるのが原因じゃないかしら」

 といって、ヒカは僕の頭を叩いた。

「いってぇ……」

 うん? いってぇ……、朝にも言ったような覚えがある。…………。その瞬間考えが浮かんだ。壁画のことも。やっぱり、みんなに診てもらうしかない。

「壁画だよ!」


「「「「壁画?」」」」

 先生まで、僕の方を真剣に見ていた。

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