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 新しい年が、やってきた。

 優花を含む僕らは、白池神社に初詣をしにきていた。

「今年も一年いいことが有りますように……」

 僕は初詣をちゃんとする。

「今年こそは、病気がなおりますよーに!」

 車椅子に乗った優花もお参りしている。

 他のみんなの声は聞こえなかったが、しっかりとみんなお参りをしたはずだ。

 絵馬とかはこの神社にはないので、そのまま、帰る。

「今年もよろしくだわ!」

 ヒカが言った。

「皆さん、今年もがんばるね」

 千紗も言っている。

「今年もよろしく。だな」

 僕もちゃんと受け答えをした。

 なんだか、雪も微妙に降っていてかなり寒い。初詣なんか行かずに、こたつの中にこもっていたい気分だ。

「日月、おい、あっち見てみろよ!」

「え、なんだよ急に」

「なになにー、ソウ!」

 草が急にあっちを見ろと言い出した。そっちを見てみる。あっちは……、村役場か。

「あら、村役場がまた騒がしいわね。新年早々何かあったのかしら?」

「よし、とりあえず行ってみるか」

 僕らは村役場へと向かった。


 村役場は、この前の時よりも、すごく騒がしかった。

「何があったんだろうね」

 千紗が首を傾げながら言った。

「どうしたんですか、何かあったんですか?」

 草が、勇気を出してお年寄りに聞いてくれたようだ。

「なんじゃいなんじゃい、しらんのかい」

「みんな、知らないわ」

「こんな年賀状が届いておったんじゃ」

と、言ってお年寄りは、一枚の年賀状を僕らに見せてくれた。

「これは……」

 差出人は、地方整備委員会白池水系管理所からとなっている。

「……。漢字……」

 ヒカはどうやら漢字が読めないらしい。やっぱり、阿呆だったよ……。

「えっと……」

 千紗が読んでくれる。

「今年もよろしくお願いします。ぐらいしか書いてないよ……」

 僕もちゃんと見てみる……。うん。確かに、千紗の言ったぐらいしか書かれていない。

「コレのどこが、いけないんですか?」

「ここ、じゃ。ここ……、背景じゃ」

「背景……」

 僕はもう一度よく見てみる。そこには、ダムの絵が書かれていた。

「ダム……?」

「ほんとだ、ダムの絵が書かれてるね……」

「ダム……? ダムが私達の村のどこに関係があるのよ……」

「おい、このポスターを見てみろ」

 草が、役場に貼ってあったポスターを指さして言った。

「なんだ、なんだよ……」

 僕はそう言いながらも、見てみる。

「えっ……」

 僕は思わず言葉に詰まってしまった。

『白池ダム計画』

と、書かれたポスターが貼ってあったのだ。

「ねぇねぇ、日月、本当に白池にダムができるの……!?」

「そうかも、しれないね」

「でも、ダムが出来て何が悪いのよ! ダムができたら、洪水とかがなくなるんでしょう?」

「ヒーちゃん、よく考えて! 白池にダムができるってことは、村が水の下に埋まっちゃうんだよ!」

「え……」

「確かに、村が水没してしまいますね」

 千紗も冷静に状況を見極めている。

「みんな、村が沈むのは嫌でしょ?」

 僕は、もう一度みんなに確認する

「ああ」

と、草。

「もちろんだわ」

「せっかく、この村に来たんだから……」

と、ヒカと千紗。

「優花の大事なふるさと!」

と、優花。

 みんなの思いは、僕と同じ。僕らの思いは同じというわけだ。

 絶対に、この村をダムのそこには沈ませない……。絶対にこの村は失わないと。

「僕らには何ができるんだ……」

 そう言ったが、何も誰一人としてアイディアは出てこない。

「困ったなぁ」

 僕はそう口に出してしまっていた。

「俺ら子供には何も出来ないんだ。はっきり言ってしまえば、大人の問題だ。僕らが口出しできることではないだろう」

 草は冷静に、そう言った。確かにこのダムの問題は、子供の問題ではない。大人たちが考えて、考えだした結論だ。

「だけど。村の問題じゃないか。僕達とは無関係とは限らないだろう」

 僕はそう力説した。

「そうだ! 村長さんはどう思ってるのかしら……」

「たしかにそうだね。村長さんは、どう思ってるんだろうね。きっと、沈んでほしくないとは思っていると思うんだけど……」

「聞くのはムリ! いま、役場、騒がしいから!」

 優花は言った。

 確かに、今は騒がしくて無理だ……。

「じゃあ、どうすればいいのよ……」

「僕もいいアイディアが思いつかない。ここで手詰まりだろうか……」

「残念だ。俺もまったくいいアイディアが思いつかない」

 全員、アイディアはなく、振り出しに戻ってしまう。

 これは、同しようもないことなのだろうか。

「とりあえず、すぐに事が動くことではないだろう。優花も病院に戻らなくてはならない」

「そうだった……。優花、病院に戻らなくっちゃ」

と、優花が言った。

「そうだ、優花の家に行って考えないか?」

「優花の家ー?」

 優花は首をかしげた。

「優花は病院に戻って、このことには参加できないだろうから、優花の家で会議を開けば、優花もいいんじゃないか? 迷惑じゃなければ」

「うん。いいよ! 優花のババーが、いつも家にいる!」

 優花は了承してくれたみたいだった。

「じゃあ、その会議の結果は、俺が報告するよ」

 名乗りでてくれたのは、草だった。やっぱり、優花と草の関係は怪しい。

「じゃあ、これで考えられそうだね」

「がんばるわよ!」

 千紗もヒカも乗り気だ。

「よし、じゃあ、とりあえず優花の家に行って、優花の見送りをしようか」

「「「賛成!!」」」


 僕らは、優花の家に行った。そこで、少し雑談したり、おせちを頂いたりした。

「そろそろ、優花、帰る時間」

 そういって、優花は車に乗り込んだ。

「じゃあ、また今度!」

「またね、優花ちゃん」

「またな」

 みんな挨拶をして、優花を見送った。

 そう行って、僕らは、会議を始めた……いところだったが、案が出ないので先送りになった。


 僕らは今困難に立ち向かおうとしている。僕らの力だけじゃ解決はできないであろう。僕らの進む道は迷宮入り確定のように見えてしまっていた。


20話あたりで終わりそうな感じです。

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