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気づけば、もう十二月。雪もかなり降ってきている。雪かきは少しずつハジメている。まだ、そこまで雪が降り積もるわけでもない。
十二月、最大のイベントいえば、そうクリスマスだ……。
「クリスマス、どうすればいいんだろう」
僕は、考えていた。ヒカと過ごす、千紗と過ごす。それとも、家で引きこもって過ごす……は無理だろう。絶対に、ヒカや千紗がやってくる。
それに、明日からは冬休みだ。来年は勉強で忙しくなるから、今年の冬休みはおもいっきり遊ばなくては……。
学校のチャイムが鳴った。
終わりの合図だ。
「草、お前は冬休み、もちろん勉強だよな?」
「ああ、そのつもりだ。留年するのも困るからな」
「草は、やっぱり村でハタラクつもりはないんだな?」
「当たり前だ、俺は大学に行くんだ」
「そうか」
草は、自信に満ち溢れていた。大学へ行くことは決定事項のようだ。
「日月ー!」
ヒカだ。
「どうしたんだよ、ヒカ」
「ねぇ、ねぇ、クリスマスプレゼント買いにいかない?」
「でも僕……、プレゼントをあげる相手がいないし……」
誰かあげる相手、いったっけかなぁ。例えば……、草かな? ああ、草がいたな、そういえば草がいたな……。僕、草にあげなきゃ……。
「私よ! 私。私にちょうだい!」
「ヒカにあげたら、一緒に買う意味ないんじゃないか?」
「私も日月に買ってあげるわよ」
「それなら……」
「ヒカちゃん、ずるいよ。日月君と二人っきりなんて」
「もしかして、千紗も行きたい?」
「あたりまえだよ。日月君にもプレゼントあげたいし、ヒカちゃんにもあげるよ。プレゼント」
「それなら、三人でいこうか」
僕は提案した。
「しょうがないわ……。でどこに行くかなんだけど、街のショッピングモールにいかない?」
街のショッピングモール……かぁ。街は行ったこと無いなぁ。行ってみたいなぁ。ヒカと千紗となら楽しいだろうなぁ。
「でも、ヒカちゃん。どうやっていくの? 街に」
「ああ、それは任せて。私のママが連れてってくれることになってるの」
「それなら、いけそうだな。僕も行くよ」
「じゃあ、決定ね。明日の九時に私の家集合ね」
「九時か……。せっかくの冬休みなんだから、もっと寝かせて……」
「だめだよ、日月君。休みだからって寝ても……。生活習慣は大事だよ」
「そうよ! 日月。車に乗って行くんだから、ちょっとは早いけど、時間はかかるのよ」
確かに、時間かかるからなぁ。
「うん。分かったよ。じゃあ、明日な……。草は行かないのか? やっぱり、勉強か?」
草は、驚いて瞬時に持っていた携帯をしまった。
「いや、勉強ではないんだが、まあ、ようがあるから、参加するのは無理だ。すまないな」
「全然問題ないよ、天神くん」
「はいはい、お前らは本当に仲がいいな」
草は呆れ気味にそう言った。
次の日の朝。
僕は、ちゃんと支度をして、ヒカの家に向かった。
ヒカの家には既に、ヒカ、千紗が揃っていた。
「あら、日月くん。さあ、さあ、乗って頂戴」
ヒカのお母さんが、車の扉を開けてくれる。
「ありがとうございます」
「いいのよ。クリスマスプレゼント買いにいくんでしょう? ならちゃんと、運転しなきゃねフフフ。みんな仲良しさんでいいわねえ」
すごく煽りに聞こえる。
席の問題が発生する。
「僕はどこに座ればいいのかな?」
ヒカと千紗の視線がぶつかる。
「喧嘩になるから、僕は助席に乗るよ」
「ダメですよ。日月君。ちゃんと後ろに乗ってください」
「まあまあ、そんなに喧嘩しちゃって、ヒカも千紗ちゃんも本当に、日月君のことが好きなのねぇ」
ヒカも日月も顔がどんどん赤くなっていく。
「後ろに三人で乗れば問題ないじゃない。ウフフフフ」
「そ、そうね、それがいいわ」
ヒカと千紗は気を取り直して、ヒカのお母さんの言うとおり、後列の席に三人で乗った。もちろん、僕は真ん中だった。
両方に女の子がいるとなんだか、緊張しちゃうなあ。
ヒカが、僕の左腕をヒカが抱きしめる。
「ヒカちゃんぅ……」
そう、声を漏らした千紗は、ヒカと同様に、僕の右腕を抱きしめる。
両手に花だ……。いや、火花かもしれないなあ。
それから、ずっと手を抱きつかれまま、雑談したり火花が散ったりして、街に降りてきた。広い平野が続いており、街の郊外のショッピングモールに着いた。
「じゃあ、ママはブランド物見てくるから、またあとでね……。ウフフ」
ヒカのお母さんは、そうそうにどこかに消えてしまった。
「いい加減、歩くのも大変なんだが……」
僕の腕はどっちもふさがったまんまだった。
「だめ。アピールしなきゃだめ」
と、千紗が言った。
「確かにそうね。ちゃんと街に来たんだから……」
「別に僕は、どっちとも付き合ってないんだが……」
そんなこんなで、二人とプレゼントを選びあった。
服屋でいろんな服を試着させられたり、どっちか選んでと言って、選ばせられたりと……。
途中で気になるものを見てしまった。
僕と、ヒカと千紗がは椅子に座ってアイスクリームを食べている時に、なんと、僕らの目の前を草が通ったのである。
「草……」
僕は言いかけたところで、やめた。
隣には車椅子に乗った優花がいたからだ。
「ねぇねぇ、あの二人は付き合ってるのかしら?」
ヒカが聞いてきた。
「でもね、この前日月君が彼女は知らないって言ってたよ」
「そうなの? 日月」
「ああ、そうだ。この前、電話してたのってもしかして、これの打ち合わせをしていたんじゃないか? 昨日も携帯を持ってなんかそわそわしてたし」
「確かに、昨日は怪しかったよね。私もちょっと気になっちゃった」
「私は、気にならなかったわ。だって日月がいるもの」
「あー。わたしもだよ。日月君」
「あー、はいはい」
草と優花は、僕らの気付かずに何処かへと去っていった。
これは大スクープだが、別に言う相手もいないので、心の底にしまっておいた。
「プレゼントも買えたし、明日が楽しみだわ」
「でも、中身もうわかってるじゃん」
「そうだ! 中身はもうわかってるから、手紙を書いて一緒に明日渡しましょう。そうすれば、もっともっと嬉しいんじゃないかしら?」
「いいね。ヒカちゃん。じゃあ、私は、ヒカちゃんと日月君に手紙を書くよ」
「そうね。そうしましょう。もちろんいいわよね? 日月」
手紙を書かないといけないのかあ。まあいいか。色々書けそうだし。
「わかった。いいよしっかり書いてきてあげる」
「それとねそれとね、日月君、ヒカちゃん。明日私の家に来てよ! クリスマスパーティー開くんだよね」
「いいわね。そこでプレゼントを渡し合いましょう!」
「僕も大丈夫だ。明日が楽しみだ」
僕はいろいろな願いを込めて、そう言った。
「日月君たち~」
後ろからヒカのお母さんの声が聞こえた。そろそろココとはおさらばだ。
「たのしかったな」
「そうね」「楽しかったです」
そう言って、僕らは帰った。すごく楽しいいい思い出になった。
明日、みんなに会えるのがすごく楽しみだ。
草と優花のことも気になったけれど、冬休みはまだまだ始まったばかりだ。いっぱい楽しまなきゃな。
僕はずっとずっと寝るまで、プレゼント買いという名のダブルデートの楽しさを忘れることはなかった。




