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 私は光。どこにいっても輝く存在でいてほしいという両親の願いから、付けられた、私の大事な名前。ひかりではない。ひかである。

 村の友達は、皆私のことを、「ヒカ」と呼ぶ。

 私には今までずっと生まれて間もない時から、ずっと一緒に居た幼なじみというものがいる。それも男だ。

 私は、小さいころ、日月と一緒に遊ぶことが多かった。親同士の仲が良かったせいだろうか。子育ての情報等の共有とかをしていたのかもしれない。

 小学校まではなんともなかった、日月と遊ぶことだが、中学生になった途端、私は日月とむやみに遊ぶのをやめた。小学校と変わらない校舎で中学生になった私達にとって、小学校と中学校の違いなんて大差はなかったのに。私は……、私は……、日月と遊ぶ、幼なじみと遊ぶのは何か子供っぽいと感じて、私は日月から離れて行きたかった。

 だが、離れていくことは出来なかった。はっきり言ってしまえば、日月はいつも私の手の届く範囲のどこかしらにいた。

 村という小さなコミュニティに存在していた、私と日月は離れることでは出来なかった。私は、その時ですら子供っぽいと思っていた。だがしかし、中学二年生の時に気づいてしまったんだ。

 ――私は、日月のことが好きなんだって。

 何気ない日月との接触もいつの間にか、心はドキドキするし、顔は赤く、つい日月の方を見てしまう。そんな風に。

 私は、その時の私が嫌だった。私でいることがおかしいと思った。私は、今までどおりの日月との接し方に戻った。普通に遊ぶようになった。子供っぽいとは思わない。いや、思えないほど私は、昔の自分に戻っていくような気がした。

 それは、日月が好きだとわかった自分を紛らわせるため。だから、私は日月のことを思えば思うほど、好きと感じるほどに……、もっともっと日月との接し方を子供っぽく……、いや一方的に変えていった。


 正直いってしまって、私はすごく嬉しかった。日月と意識が入れ替わることが出来て。日月の家に久しぶりに泊まるようなことになって。

 日月のママからの電話を聞いた時には、私の心はすごく浮かれてしまっていた。


「カレー美味しい?」

 私は、自分が作ったカレーを日月に食べてもらえることがすごく嬉しくって、嬉しくって、本当に、嬉しくって顔がにやけてしまいそうなくらいに嬉しくて、頬が染まっていくのも自分で感じられるほどだった。

 それをそらすかのように私は、日月にそう聞いた。自分の心をそらすために。

「ああ、美味いな。ヒカは料理上手だったんだなぁ……」

 私は、私でいることが恥ずかしくなってしまった。そらすつもりで言ったその言葉が、逆に私の心を攻めてくる……。

 私はその後無言でカレーを食べた。せっかく日月がいるのに……、急いで食べて途中でむせたりもした。

 しだいに、頬は緩んでゆく。

「どうしたんだ、そんなに急いで食べて……、自分で作ったものなのに、辛くて困ってるのか……?」

「そ、そんなわけないでしょう?」

「じゃあ、そんな急がずにゆっくり食えよ……。時間はまだまだあるだろうに」

「そうね。だけど早く洗いものしたいから、早く食べてよね」

「はい、はい、分かったよ」

 日月は美味しそうにカレーを食べている様子は、私の心を何か大きく動かしてくるような、そんな感じがした。


 私が洗い物をしてあげた。日月は男だから、こういうのは嫌いだろうと思って……。私は、外で遊ぶのが好きだから以外とこういう家事とかが好きって言うと、驚かれることが多い。

 でも日月は、驚かない。何故ならば、ずっと日月を見てきた私と同じように、日月もずっと私を見てきているからだ。

「ヒカばっか悪いな、そんなことやらせてばっかで。疲れてるだろうし先にお風呂入ってくれよ」

 日月はそう言った。だけど、私の体(日月の体)は全然つかれていない。手も大きくて洗い物もすごくしやすい。入れ替わったという精神的な疲れは少しあるけれど、やっぱり体は男なんだなってすごく実感した。

 私は、日月に言われたとおり、お風呂に入りに行くことにした。日月の体で。

 本当に日月の体、何だなって今でも実感できない。あんまり見ないようにしないと……。


 お風呂から上がった。日月がお風呂に入っていった。

「私の体、絶対見ちゃダメだからね」

と、私は日月に忠告して。


 気づけば、朝になっていた。土曜日だ。

「おきたか、ヒカ」

「ん?」

「お前、ソファーで寝ちゃうんだもんな。やっぱり疲れてたのか」

 さっぱり思い出せない。

「ねえ、日月、ブラジャー付けてる?」

「そ、そんなわけないだろう? だって付け方わからないんだから……」

「私が私の体につけてあげるわ」

 私はそう言って、ブラジャーをつけてあげた。

「ヒカ、やっぱ女の子なんだな」

「当たり前じゃない! 何言ってるのよ馬鹿!」

「まあ、そうか。そんなことより、一昨日の夜、覚えてないんだよな?」

「そうね」

 私(日月の体)はそう言った。

「やっぱり千紗にきくか……」

「そうね、一緒に行きましょう」

「一緒に行ったら変に思われるだろ、僕が行ってくるよ」

といって、日月(私の体)は出て行った。

 ふぅーん。やっぱり中身は男らしいんだ。そう、私は感じていた。

 私は、家にいてもやることないので、日月(私の体)をストーキングしていくことにした。ちゃんと振舞っているかも見ていたいし。


 日月(私の体)は学校へ向かっていた。千紗とは学校で会う約束をしていたのか……。

 学校へついていってみると、そこには千紗がいた。

「ああ、ヒカちゃん。おはよう。なあに、相談って?」

と千紗が言った。私は木陰で覗いている。

「私さ、一昨日の夜の記憶思い出せないんだよね。何かあったっけ?」

 千紗は困ったような顔をして続けた。

「本当、私と神社にお参りしたでしょう? 白池神社に」

「そそそ、そうだったっけー!?」

 何やってんのよあいつ。私はそんな反応しないわよ!

「白池神社にお願いしたいことがあるからって、私を引っ張っていって、私と一緒にお参りしたんだけどね」

「うん……。全然思い出せないわ。他には何かあった?」

「別にないよ。ヒカちゃん、お参りしたらすぐに家に帰っってたよ」

「そそそ、それと日月のその夜のことわかる?」

 何で日月のことまでちゃっかり聞いちゃってのよ。私は、千紗に日月のことはあまり話さないように心がけてるんだから。日月が、他の女にとられないように!

「日月くん……? 日月くんは一緒にいなかったからわからないけど、草くんがしってるんじゃないかな?」

「草ね。わかったわ。ありがとう、千紗」

「記憶戻ってくるといいねヒカちゃん」

 そう言って、日月(私の体)は、学校を飛び出していった。

 途中で私は、日月(私の体)を捕獲して、話を聞いた。その後、草にもいろいろ聞いてみたけどはっきり言って何も情報はなかったし、思い出せもしなかった。


 時はみるみるうちに進んだ。最初は金、土日で治るといいなと思っていた私達だったけれど、治る気配も全くなし。石拾いイベントの夜のことも全く思い出せないまま、私達は、修学旅行を迎えることになってしまった。


 私は、日月の家での生活にもついに慣れてきてしまった。あいつも慣れているのだろうか。

 日月のバッグに日月の準備品を詰める。私の必要なものもバッグへとどんどん入れていく。

「修学旅行言ってくるね」

と、私は日月のパパとママに伝えて、日月の家を飛び出した。


 私の心には、不安でいっぱいだった。いつまでこの状態でいるのかという怖い怖い気持ち。それと、このままずっと戻らなければいいのにと思う変な気持ち。

「あいつも、こんな気持なのかな」

 つい言葉に出ていた。学校の通学路。目の前にはヒカの体があった。もう見慣れてしまった、私ではない私に使われることのない、私の体を。

「やあ、ヒカ、修学旅行がんばろうな」

 私に向かって日月はそう、日月の言葉で私に声をかけてくれた。

 それが、私にとって何より大事な希望であった。安心することのできる声であった。私の声が。

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