喜ぶところなんだろうけど・・
誠一が、家に帰ると、母親が言った。
「何か、誠一に葉書が来てるわよ」
誠一は、その葉書を見た。
「今回、あなたは、『二葉葵アタック大作戦』の出演権を獲得しました。下記の日時に来てください」
誠一は、それを見て、驚いた。
(選ばれたよ・・俺の人生の運を使い果たしたじゃないか・・!?)
喜びよりも、そんな感情が誠一を襲った。
話は数日前に遡る。
テレビの人気バラェティ番組があった。
毎回、一人の有名な独身タレントに、一般の素人たちに熱烈なラブコールをするのだ。
タレント一人に対して、数人が、そのようなことをする。
そして、毎回、最後にタレントにメッセージを直接、言い、タレントは、それらを全て聞いた後に、
必ず、一般の参加者に
「ごめんなさい」
を言って幕が下りるのだ。
つまり、業界用語で、ヤラセ番組だ。
それでも視聴者は、その落胆する一般の反応や、メッセージを言うまでの過程を見て、面白がるのだ。
それが、今回、誠一がファンの
『二葉 葵』
が出演で行うことになった。
誠一は、駄目モトで応募したら、素人参加者に入ったということだった。
最後に必ず、
「ごめんなさい」
が、待っているはわかっている。
でも、ずっとファンだった本人に会えるのだから、それならいいか・・!
それに自分で応募したんだしなぁ・・
誠一は微妙なテンションのまま、会社に、まず番組収録の日に有給申請をして、テレビに映るんだからと、持っている服からベストの服装をチョイスした。
いわゆる勝負服だ。
勝負服とか、言ってるあたり、素人感丸出しだな・・誠一は、そう思いながら一人ニヤニヤしながら、荷造りをしていた。