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私は車の中 3
先輩の話は本当だったな。あれだけいろいろなものが食べられるとは思わなかった。山菜も魚も酒も、まあ、酒に関しては本当は飲んじゃいけない奴もいたけど、無礼講って奴だろう。なんていっても大学生だ。オレンジ色の光が車を包み込んでまるで悪夢のように車体をぬめった。その先にはぽっかりと口を空けた闇が待っている。昔話の山が僕らを待っているのだ。それは夜の闇よりも恐ろしいものに思われた。山か……あの山にさえ行かなければ僕らはこんな目にあっていなかったかもな。
急げ急げ! 車よ、急げ! そう思わずにはいられない。もう、ここからは運転の交代もないだろう。持ち回りの運転もこれが最後。村はもうすぐそこなのだから。けど、あの山。あの祠をよりにもよってなぜ? なぜ行ったのだろうか。
「明日はどこにいこう? 」
「まあ、とりあえずは例の神社はいくでしょ? それから、山の方にはいけないかな。前来た時、まだ行ってないんだ」
「山ね。山になにかあるわけ? 」