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懸圃の住人  作者: 夏実歓
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私は車の中

 車に乗っているみんなは怖がっていたんだと思う。僕はどうしてもそんな風に思えなかった。元来そういうことに疎いのか、別のことを考えていたからなのか……

 最初にそれを感じた時はもう普通の生活に戻っていた。それは決まって夕方以降、ずっと何かに見張られている感じがした。他に大した事のなかった僕は別としてみんなはもっと酷い目にあっていたのかもしれないが、僕はそれだけだった。ショウタは自宅に引き篭もって出て来なくなり、ケンヂは始終なにかに怯えたように暗がりを避けた。高田先輩だって血相変えて僕に連絡してきた。みんななにがあったかは言わない。けど、先輩をはじめみんながもう一度あそこへ行かなくてはいけないと言った。急遽、車まで手配した先輩は、大体の事は先刻承知だったようだが、それならもう少しゆとりを持つべきだと僕は思った。きっと先生に相談したんだろう。“そういえば、先輩はあの人の事、少しは知っているんだったな ”そんな事を考えていたら、電話が鳴った。

「ええ、特に問題ないと……それで……そうですか…はい……はい、では 」

僕は電話を切った。

「なんだ、何の電話ですか? 」

ケンヂがいぶかしげにこちらを見ている。

「なにぶん急な事だったからね。言い訳ついでに連絡しなくちゃいけないことがあったんだ。大丈夫、みんな助かるよ 」

 それを聞いて、ケンヂも慌てて自分の携帯を取り出して、電話をかけ始めた。高田先輩は言いだしっぺだし、ショウタは引き篭もった間に連絡するような相手が無くなっていたから、そんな必要があったのはケンヂと僕だけだった。この状況で先のことを考えるのは希望を持つためには大事なんだよ。と、心の中で呟いた。まあ、僕はそれほど怖いと思っていなかったから、ケンヂが落ち着くためのおまじないと言ったところだ。



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