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ミヤの想いとキリの危機

「麗しい友情じゃな……ミヤ。じゃが…おまえの願いは聞けぬ」

 何時の間にか笑いを納めた鬼が、冷たい言葉を発した。


「いや…むしろ、お前を生かす事にしよう……。

 お前は私の元で、死ぬまで子供たちが、わらわに喰われてゆく様を見続けるのじゃ……。

 己の無力を呪いながら……。いや、むしろ気が狂うかも知れぬのぉ。

 死に逝く者達の断末魔を聞きつづけて……」

 再び、鬼女が声を上げて笑い始めた。


 笑いながら、ミヤが肩を抱くキリに手を伸ばす。

 「だめ!」と、ミヤがキリを庇う。

 だが、「邪魔じゃ」と鬼女によっていとも簡単にキリから引き剥がされ、突き飛ばされた。


 鬼女が、キリの首根を再び掴み、館へ足を進め始める。

「かかさま、やめて!」

 鬼女の足にしがみ付こうと、ミヤは手を伸ばしたが届かない。

 それどころか、鬼女との距離は離れるばかり。

 気がつけば、鬼女は館の奥へと姿を消していた。


 独り、取り残されたミヤ。

「だ…れか……。誰か……」

 声が震える……。


「誰か キリを助けて!」

 ミヤはそう天空に向かって叫んだ。



 その時



 何かを切り裂いたような音が、森のから聞こえた。

 驚いて、ミヤは森の方向へ振り向く。


 そこに立つ、銀の人影。


 銀の髪、銀の瞳で、見慣れない異国の服に身を包む、美貌の男。


 男は右手に怪しく光る刀を持ち、ゆっくりとミヤの居る方向へやって来る。

 そしてミヤの横を通り過ぎ、すれ違いざまに「消えうせろ……」と一言。

「あ…」


 ミヤは男に何か言おうと試みたが、何故だろうか、言葉が出ない。

 男の魔性の美しさにあてられて……。

 何も言えずに、ただ、彼の背中を見つめるしか出来なかった。




 鬼女は、屋敷の離れへキリを連れてやってきた。

 引き戸を開き、行灯によって照らされた部屋の中にキリを放り込む。

 悲鳴をあげてキリは床に倒れ込んだ。


 その目に飛び込んできたもの、それは巨大な鉈のような包丁のような刃物。

 それに驚いて、慌てて起き上がり、それから逃れるようの後ずさったが、その手に何か触れて、動きを止めて手に触れたものを見る。


 また、キリが悲鳴をあげた。


 キリの手に触れたもの、それは、小さなどくろ。

 一つだけではない。

 おびただしい数のどくろと骨の山。

 全て、かつてはキリと同じ年頃の子供だったであろう者達のむくろ。

 恐ろしさに体が がたがたと振るえる。


 不意に、鬼女がキリの肩を掴んだ。

 そのもう片方の手に握られているのは、巨大な刃物。


 ――殺されるっ……!――


 キリは身を強張らせ、目をしっかと閉じた。

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