原作と本作を比べて
キャラ設定の事とかも書きたいですが、ここで一番書きたかったのは、各章が原作のどのあたりになるか?というちょっとした解説。
原作と蒼き牡丹の違いをご理解いただければ、幸いです。
●第一章 現代から戦国へ
主人公の狭子が、学校の階段から転げ落ちてタイムスリップする序章。信乃と初めて出逢ったあのシーンは、原作だと「大塚村物語」を終えて、旅立った後に当たります。
石浜城のエピソードを軽く入れたのは、八犬伝に出てくる場所の地図を見た時に、ちょうど彼らの通る道の近くにこの城があるなって思ったのと、後々に『対牛桜の仇討』で登場する舞台として書くつもりだったので、そこに向けての伏線も兼ねてます。
また、狭子が食い逃げを躓かせていた時、信乃は足利成氏に謁見していて、献上するはずだった村雨丸がすり替えられている事が発覚。そこから一気に、戦いが始まるといった具合です。
芳流閣の決闘はTBSドラマ「里見八犬伝」がだいぶベースになっています。“狭子”という第三者の視点から見る八犬伝の名シーンは、作者もかなり興奮しながら執筆していました。笑
●第二章 古那屋での出来事と伏姫の縁
丶大法師と共に行徳を訪れた狭子が、瀕死の信乃を救う事になる物語。この章は、原作と皆麻によるフィクションが入り混じった章になっています。原作でもこのエピソードは実際にあります。犬田家に伝わる秘法も書物としては残っていませんがあったみたいですね。ただ、これ…原作通りだと妙薬作る材料になる“血”を得るために、小文吾の妹・沼藺とその夫・房ハが死んでしまうんです。それをまともに書いたら大分悲惨なので、“乙女の血を”という設定に変えました。原作では信乃に大量の血を浴びせていたそうですが、それもグロイので却下。今にして思うと、これが後に起きる出来事の伏線になって良かったなと結構満足してます★
●第三章 犬士達が集まる一方で
荘助や道節が仲間になったり、宿敵である素藤に出逢ったりと、内容の濃い章。原作に出てくる「庚申塚の刑場やぶり」や「荒芽山での集合と離散」とかが主に書かれてますね!
ここは…作者によるオリジナル展開が結構多いかも。余談ですが、某出版社に持ち込みっぽい事して戴いた感想に「素藤の設定は大胆に変えましたね」ってのがあった気がします。それに関しては、原作にも登場する老女・音音や彼女に仕える忍・曳手と単節なんかも、それに当てはまりそう。因みに原作では荒芽山に集まった犬士達は、敵の追手に取り囲まれ、ちりじりになる展開を見せます。ただし、この章では主人公・狭子と鬼の関わりを書きたかったので、そういった争い事はカットさせて戴きました。信乃はそこで許嫁が死んだ事にショック受ける訳ですし…
●第四章 亡き許嫁との再逢
信乃・現八・狭子の3人旅の途中で起きる物語。作者のオリジナルストーリーかと思った方もいるかもですが、ちゃんと原作ベースの物語です。ただ、他の八犬伝作品ではカットされている場合が多いから、ご存じでない方も多いかも。原作では信乃が体験する列伝『甲斐物語』に当たります。ただ、物語の都合上、地理については若干嘘書いてます。猿石村という名前はちゃんとあったらしいですが…。原作を知らない方はチンプンカンプンかもですが、ご存じの方にとっては、「もしや、狭子って…!?」という一つの仮説が生まれた章だったのではないでしょうか。
●第五章 庚申山の化け猫退治
この章は、原作でも有名?な『庚申山奇事』がベース。大角が初登場する物語。この章では狭子がある意味華麗な活躍を見せるので、作者もお気に入りだったりします!
化け猫に襲われそうになった信乃を庇って自分の着物破られたりはまだ序の口。原作では偽一角(化け猫が成りすましてます)に斬られた大角の妻・雛衣の身体から犬士の証である水晶玉が現れて敵に当たるのですが…こちらでは、狭子が偽一角に玉を投げつけちゃいました。笑 もちろん、彼女は原作の展開を知っていたからやったのであって、何も知らなければこんな事できなかったと思います…多分。偽一角の後妻に収まっていた船虫を蹴り飛ばした時は、「やったね!」ととてもスカッとしたのを覚えています。
●第六章 7人目の犬士と千里眼
毛野が初登場する章。また、素藤との再会もあるので、原作とオリジナルが入り混じった物語。原作では『対牛桜の仇討』に当たります。これも正月ドラマ『里見八犬伝』が結構参考になりましたね★当然ですが、原作では「素藤と毛野が直接刃を交える」事はありません。だから、この二人を対戦させたのは良かったかなと。もちろん、毛野が女田楽に入っていたのは原作通り。
後半で登場した政木狐ですが、関西弁しゃべるのは作者のオリジナル設定ですが、あの狐はもちろん、原作にもちゃんと登場します。原作では確か、良い事いっぱいして龍になるとかだったんで、犬士達との直接的な関わりはなかったはずです。(違っていたらごめんなさい)
●第七章 鈴茂林での戦い
これも、関連作品ではカットされがちですが、原作にもある場面。ただし、物語の構成上仇討までしか書けませんでしたが…。原作では毛野が逸東太を討ち、それを知った扇谷定正さの勢力を信乃や道節の活躍で追い込む展開がこの辺りではありますが、ここでは本当に「毛野による仇討」がメイン。狭子の思わぬ活躍とそれによって危機的状況になる展開は、この作品で一番のお気に入り章といっても過言ではないです。執筆当時も、この章以降が大分ヒートアップしていたかもです。笑
●第八章 捕らわれた狭子を巡って
この章は、完全なオリジナルストーリー。ただし、八犬伝の時系列で言うと、親兵衛が京都で活躍する列伝辺りになります。犬士のほとんどが原作にある自身のエピソードを描けているのに対し、このオリジナルのせいで親兵衛エピソードが丸丸カット。何もなしは可哀そうなんで、狭子を最初に見つけ出して連れ出すっていう美味しい所を彼にあげた次第でございます。そのため、原作との関わりは皆無かもですが、狭子の出生の秘密が書かれた時は彼女が八犬伝と無関係でないのがわかって戴けたかと思います。
●第九章 対両管領連合軍戦
別名・関東大戦の物語。原作では、言わずと知れた“物語後半部分”。オリジナル展開はもちろんありましたが、ここは大分原作に近づけたかなと思います!作中に出てきた”人魚の膏油”みたいなアイテムはフィクションじゃないの!?とか思う方もいたかもですが、れっきとした原作でも登場したアイテム。現八が殿を務めて敵の追撃を防いだり、敵軍が使った兵器や、伏姫が編み出した“火豬の計”も(原作に)出てきています。
「狭子を行軍に加えよう」と思い立った際、どの戦いの地に行かせようか迷いましたが、この“国府台の戦い”に行かせたのは、大正解だったかなと密かに満足しております★
●最終章 未来を生き抜くために
これも、ほとんどオリジナル。ただ、原作の時系列で言うとエンディングに当たる「大団円」に当たります。一応、第37話の「八犬士具足」は原作にも登場するお話。ただし、原作では関東大戦の前に法要やって一騒動起きているので、ここでも時系列狂ってますが…本編の展開上、後に回すしかなかったのでご容赦ください。
内容はともかくとして、登場したキャラは原作に大分近かったのかも。狭子が里見の姫達と談話するシーンがありますが、彼女達の名前。そして、最終的に八犬士の誰と結婚するかは(大角を除いて)原作通りです。関連作品でも、彼女達の登場はあまりなかったのかと思います。私もこの作品を書いて初めて、「こんなに娘がいたんだ!」と知ったくらいですし。笑あと、里見義実が言った“神意”も、原作で本当に言っていたそうです!資料で神意を見た時は「成程な~」とすごい関心したのをよく覚えています。