あとがきという名の解説 その2
こちらでは、6/30㈭に発売された下巻に載せていた解説っぽくなっているあとがきです。
尚、執筆当時に書けなかった部分もあるので、そちらも併せてごらんください。
●神前結婚式
今回は場所を平安神宮とし、神宮のホームページとにらめっこしながら、挙式の模様を書きましたが…。元来、神前結婚式の順序の概要は、どこも今回書いたような順序で進んでいくそうです。私自身はちゃんとした神前結婚式は見た事ありませんが…ただし、先日、プライベートで行った名古屋で結婚式の行列を見かけた時は良いイメージ作りになったのかと思われる。
●白拍子
萌木が霞に協力してもらったのは、彼も五節の舞等の舞を身に着けていたというのもあっての事です。
●名古屋へ萌木を行かせたのは…
実際はガイドブックとにらめっこしていましたが、一応今回出てきた観光名所は、執筆当時にプライベートで名古屋行った際に本当に訪れた場所となります。また、熱田神宮を選んだのは、話にあったように神器の剣を祭神としているのを知ったためです。
京都の下鴨神社に負けないくらい、自然がすごかったのが印象的でした。
ちなみに、名古屋編を書くに当たって使われる会話文では、オンライン上で使用できる名古屋弁翻訳のサイトを利用しました☆
張間兄妹の名前の由来も、ちゃんと装束から関係する名称からとっています。
●葉胡桃家の者が持つ”特別待遇”とは
平安時代はまだ律令制度が残っている時代で、役人は身分に応じた位を持っている。一方、萌木や襷ら葉胡桃家の者は、こういった普通の役人とは異なる待遇を持っている。
①東宮及び、着付けに携わった者が参加する宴や催しに参加できる権利を持つ
②ただし、いくら仕事で功績をあげても出世することはない
上記2点が主な待遇で、①によって東宮だけに限らず、多くの偉い貴族や役人と会って交流する事が可能だ。しかし、特別扱いされる事で政敵として目をつけられるのを危惧した王家は、②の決まりを設けた。”胡桃屋”という愛称がついたのも、②によって”政敵ではない商人(=位が低い者)”のイメージから、そのあだ名がついた。
因みに、この2つの決まりを定めたのは、妖狐・嵯峨巳の助言を受けた時の今上帝である。
●吉備国
吉備国の地名を使ったのは、この国が(資料によると)この地方で力の強いとされる四国の一つだったからです。あと、古事記にも記されている古い地名であるのも起因しています。
●巫女の装束
竜胆が身に着けている装束についてですが、 あれは現代女性で神職につく人が身に着ける装束と似たような物です。彼女は「吉備国から旅してきた女性」なので最初は壺装束とかにしようとも思ったのですが、身分の高い姫君ではないけど、少しでも旅の際に動きやすい装束。それでいて、吉向神の依り代を務めているから…と巫女さん服にしたという次第でございます。
●死者が身に着ける装束
京都に限らずですが、いろんな装束を扱う装束店でも、こういった死装束は扱わないらしいです。これらを扱うのは葬儀社だそうですね。私も納棺の儀を間近で見た事がありますが、今回書いたような作業を納棺師さんがやったのを何となく覚えています。
また、「納棺から埋火葬までずっと見た」という事ですが、東京などでは納棺された後からという場合もあり、遺族が立ち会ったりする箇所などは地方によって異なるらしいです。皆麻は東京と北海道にて経験しておりますが、現代の京都がこんな形式なのかは実は知りません。
●四角祭
これは実際に陰陽師の資料で記載されていたちゃんとした儀式。なので、作者が勝手に考えた物ではございません。
資料によるとこの儀式は(実際の)安倍晴明の息子・安倍吉平がこれと似て規模の大きな儀式をやったとされています。
また、二つの儀式を同時に行う事を四角四境祭と呼び、これは8人の陰陽師が必要になるため、よほどの大事があった時にしか行われなかったそうです。
●西嶽真人
本編でもありましたが、この神様は陰陽術における蘇生術「泰山府君の祭」にある泰山府君のような中国系の神の名を指します。
また、資料によると陰陽道の神々の一人たる鎮宅霊府神は、この西嶽真人が姿を変えたモノだと言われています。
●腹掛け
本編でも萌木が説明していましたが、背中ががら空きになっているこの服装。現代では、お祭りで神輿担いだりと出演される方が着る物として知れ渡っているというのを、つい最近になって知りました。
現代での腹掛けは、エプロンみたいに後ろが×で繋がっていたりしますが、萌木が解説した“桃太郎に出てくる”という例えは、和風ファンタジーの衣装でよく出てくるようなものを連想しながら、執筆致しました。また、執筆当時にホルスターネックの洋服が女性の間で流行っていたのも、本文で書いたことに起因します。
●平安時代での結婚に至るまでの経緯
萌木と晴明らは状況が状況なだけに、実際の平安時代で行われていた結婚式とはかなり順序がおかしい事になっていましたが、ここで少しふれておきます。
本来、お互いに好意を持ち始めた男女は最初に、和歌のやりとりから交際をはじめていきます。次にお互いの意思が通じ合えば親が吉日を選ぶ。
そして結婚する 初めの夜は男が女の所に忍んで訪れます。ただし、萌木は裏稼業始まった頃からずっと晴明の邸に居候していたため、これはほぼ無理でしょう。女の両親は婿の足が我が家にとどまるようにと男の沓を抱いて寝るそうです。これも、萌木の両親はどちらも京の都にいないから不可能です。
男性は女性の元に三晩通うのですが、彼らの場合は3日間で萌木の色気が増したという遠まわしな書き方をさせて戴きました。
三日目の夜、女の家で男は女の両親と対面して正式の婿として認められます。これも、萌木の父・慶介は可能でも、母親は来ることができないため、二人の露顕は、現代みたく色んな人々を呼んでの形式になったというところでしょうか。因みに、露顕は現代でいう披露宴にあたります。
いかがでしたか。
度々、完結と連載中に変更して申し訳ございません。
ただ、本編では載せきれなかった内容を、本編と併せて楽しんで戴きたい一心で書いております。
今後とも、「装い改めますればっ!」を宜しくお願い致します。