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暇人本棚

Rain

作者: 灯月樹青

2011年梅雨イベントですかね?(笑)


その日は朝から、シトシトと雨が降っていた。

この時期にはよくあることとしても、ただでさえ塞ぎがちな心が、どんよりとした空のように曇っていくのを防ぐ事は、俺には出来なかった。

『女々しい』と言われれば、それまでなのかもしれない。

分かってはいたんだ。

こんな俺じゃダメなんだってことは――。


彼女は、どんな事も大概出来る子だった。

男兄弟に囲まれて育ったというのも一因なのだと思うが、バッティングを遣らせればそこらの男には負けないし(さすがに野球部には負けていたが…これは普通だろう)、たいていのスポーツは簡単にこなしていた。

かといって男勝りかと言われれば、料理だって裁縫だって今まで付き合ってきたどの女よりも出来ていた。

彼女に言わせれば、今まで『頼れる』人が――否、『頼っていい人』が居なかったからだと、少し悲しそうに笑っていた。

そんな顔をさせたくなくて、「これからは俺に頼って」と言った時の彼女の顔が、今でも忘れられない――。


彼女と出会ったのは、数十人で行ったBBQ会場で、彼女は初参加の一人だった。

BBQに行けば、準備が出来るまで女同士のおしゃべりに夢中になる女が多い中、その中に交じれなかったのか、もしくは用意されるのを待っているという柄じゃないのか、女の中で一人だけ男に交じって火起こしを手伝っていた。

汗だくになるし、煤が飛んで汚れるし、女はだいたい敬遠するのに…だ。

しかも、一緒にいる男よりも手慣れているのと、笑顔を絶やさず、色々な話題を提供し、会話が途切れることもなかった。

言わずもがな、彼女はすぐにその中に溶け込んでいた。

そのシッカリしている所に、俺は心惹かれたんだ――。


告白し、付き合うことになった時、俺は舞い上がっていたと思う。

しかし、現実はそう甘くなかった。

彼女にとっての『当たり前』が、俺には出来なかった。

育った環境のせいなのだろうけど、俺にとってそれは『当たり前』ではなかったから。

そして俺は、彼女に口では『頑張る』と言いながら、それを怠ってきた。

そのツケが、今、回ってきているんだと、既に手遅れになった今になって思う。


最近彼女が、何かを考えているような、辛そうな顔をする事を何度か見かけていた。

それでも、俺はそれに気付かないフリをしていたんだ。

何かあれば、『頼って貰える』だろうと、俺はタカを括っていたんだ。

俺が彼女より劣ることはあっても、彼女より俺が勝る事など男女差である力ぐらいだったのに…。



雨が――、降っていた。

彼女は、彼女の好きな水色の傘をさして、俺と向き合っていた。


「もう、無理なの…。ごめんなさい…、別れてほしい」


なんの前置きもなく、彼女は真っ直ぐに俺を見ていた。

潤んだ瞳、その顔に浮かぶのは悲痛だったのだと思う。

その時になって初めて、最近彼女が悩んでいたのが、俺との事だと気付いた俺は、本当に使えない男だと思う。

彼女の心が離れていっている事に、俺はこの時まで気付いていなかった。

俺は、彼女よりも年上であるにも関わらず、彼女に頼りきっていたのだ。

6つも、年下の女の子に…。

思い返してみると、彼女の心が俺から離れている事に気付く機会は沢山あった。

彼女はいつからか、「好き」だと言わなくなった。

俺が彼女に「好き」と言っても、「ありがとう」と言うだけで、「私も」とは返ってこなくなっていた。

彼女からの警報サインに、俺は気付く事が出来なかった。


「…ぇ、なん…で…?」


卑怯な自分――、理由だって、大体察しているというのに、彼女を留めておきたくて、彼女が答えにくい問いをわざとしている。

頭では、年上として彼女の幸せを願うべきだと、ちゃんと分かっているのに…彼女を失いたくないという感情がその邪魔をする。


「――貴方を…『好き』だと…思えなくなっちゃったから…」


グサリ…と胸に刃物が刺さったかのような衝撃が走る。

頭で分かっていた事だとしても、それを好きな女に正面持って言われるのは…やはり辛い。


「…誰かを好きになったの?」


俺の問いに、彼女はただ首を横に振る。

それなら、まだ望みはあるんじゃないかと思う俺は、なんと汚いんだろう…。



「なら、誰かを好きになるまでは、俺と一緒にいてくれないか?」

「…ぇ?」

「先がなくても…一緒に居たいんだ」


そういった俺を、彼女は苦渋の表情でみる。

きっと、俺との関係がただの友人関係であったなら、彼女はバッサリ俺を切り捨てるだろう。

そういう所は、普段の彼女に似合わずとてもドライだから。

だけど、俺は知ってる。

彼女がこと『恋愛』が絡んだ人間関係に対してのみ、情に脆い事を、

だからこれは『賭け』――。

彼女の弱さに付け込んだ、卑怯な『賭け』だ。

その結果は――。


「――………」



雨の中、俺は傘をさすのも億劫になり、雨に打たれながら空を見上げた。

顔に当たる雨がこの陰鬱な心までも綺麗に洗ってくれたらいいのにと思いながら。

今は梅雨。

雨が上がるには、まだ時間がかかるだろう――。


梅雨っぽい感じで雨を取り入れたものが書きたいなーって感じで思いつきのまま書きましたー。

女々しくダメダメな年上さんを書きたかったのです☆

わりと数か所、実体験だったり…(笑)


こんな男いねーよっていうのはなしでお願いします♪

フィクションですしね。


誤字脱字などありましたらコーッソリ報告お願いします。

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