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【短編集】昔々、誰もが知る処に  ~異端昔話~  作者: 月城 葵


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3/6

あいつは月に帰ったはずだろ


 コン、コンと、控えめに引き戸を叩く音がした。


「合言葉は――」

「呪術回線」

「よしっ!」


 ガラッと引き戸を引いて、戸を開ける。


「おう、桃太郎。もう来てたのか」

「ああ、乙姫もいるぞ」


 チラリと室内を見渡せば、囲炉裏の傍に乙姫の姿。


「金ちゃんも元気そうね」

「お、おぅ。お前もな」


 どっこいせと、まさかりを壁に立て掛け、囲炉裏の傍へ金太郎は座り込んだ。


「集まってもらったのは他でもないわ。これを……」


 そう言って、乙姫は一冊の本を取り出した。


「こ、これはなんだ? 乙姫」

「小説よ。見ればわかるでしょ」


 金太郎は、恐る恐る本を手に取る。

 ギャルっぽい乙姫は、いかせん苦手な金太郎。


 裸エプロン同然で村をねり歩くわりに、こういうところは陰キャ全開だ。


 桃太郎が乙姫を見て、いい加減、本題を話してくれと顔を向ける。


 こちとら小屋の鍵を開けるために、朝から呼び出されて半日以上待ってんだぞと、頭の中で愚痴をこぼす。



「乙姫、小説はわかったが何が言いたい?」

「作者……見てよ」


 桃太郎が本を裏返し、作者名を確認する。


「ば、馬鹿なっ!」


 桃太郎が驚きのあまり立ち上がった。

 しかし、立ち上がったが、すぐに腰を下ろした。


「ね? おかしいでしょ。かぐやって月に帰ったんじゃないの?」


 それだけ言って、乙姫は戸を開けて去って行った。


 残った二人は顔を見合わせる。



「なあ、桃太郎」

「なんだ、金太郎」


 結局、だからどうしたと二人の顔が物語っていた。


 先に口を開いたのは金太郎。


「かぐやって、確かに月に帰ったよな?」

「ああ、あんな感動的に帰ったんだ。それがなぜ……」


 作者の名は確かに『かぐや』と書いてある。

 桃太郎は別人ではと一瞬考えたが、先程の乙姫の表情から只事ではないと思い直す。


 パラパラと、本をめくり読んでみる。


「主人公は……荒川コナン・ザ・グレート。体は大人。頭脳は筋肉。上半身半裸に蝶ネクタイ。バ美肉よろしく、変声機で声を変え、犯人を決めつけては殴って解決するゴリ押しミステリーサスペンス……」


 桃太郎は本を持つ指先が震え、やがてコトリと本が落ちた。


「おい、大丈夫か」

「あ、ぁぁ……ちょっと、衝撃的過ぎて……」


 金太郎が気遣うように本を拾い上げ、律儀に桃太郎へ返す。

 いや、もういいんだけどと断るわけにもいかず、桃太郎は震える手で受け取った。


「しかし、かぐやが書いたのか?」


 桃太郎が問う。


「みたいだな。乙姫が持ってくるぐらいだ。流行ってるんじゃないか」

「なるほどな。ライバル出現に焦っているのか……乙姫は」


 現在、乙姫も作家デビューしてブイブイ巷を賑やかしている。

 どんな本かというと、呪いの糸電話が題材のホラー『呪術回線』。これがまさかのベストセラー並みの大ヒット。


 合言葉にしてしまう程度には、二人も気に入っている作品だ。


 紙芝居化も進行中だとか。


 だが、順調ならば別に他作家のことを警戒する必要はないのでは、と桃太郎は眉をひそめ、顎に手を当て考える。


 それっぽく悩んだが当たり前のことである。

 警戒する必要はないのだ。


 乙姫が言いたいのは、あくまで、帰ったはずのかぐや姫が、なぜ地球にいるのか? ということなのだが……。


 すでに二人にはそんな事、どうでもよかった。


 元々、乙姫が苦手な金太郎。

 積極的に関わりたくないという意識が働いた。


 そして、朝からもったいぶって待たせたあげく、一言、二言で去って行った意味不明な女に、これ以上振り回されたくないと思う桃太郎。


 二人の意識は乙姫から、必然的に小説の内容へと移った。


 かぐやはどうした。


「どう思う?」


 内容を理解していないのに意味深な顔をして、桃太郎が金太郎に顔を向けた。


「俺は……犯人はこの医者だと思うな。鼻眼鏡をかけた医者だぞ? 怪しいだろ」


 桃太郎の的外れな推理が牙をむく。


「……いや、八百屋の方が怪しくないか? 凶器は大根だろ?」


 まったく動じない金太郎が、即刻、牙をへし折った。



 乙姫の動向、かぐやの真相。

 全てを置いてけぼりにして、小説にハマる二人の感想会は続く……。




ここまで拙い文を読んでいただきありがとうございます!


「面白かったなぁ」

「続きはどうなるんだろう?」

「次も読みたい」

「つまらない」


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