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【短編集】昔々、誰もが知る処に  ~異端昔話~  作者: 月城 葵


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2/6

乙姫って、何がしたかったんだ?


 昔々、誰もが知る処に。

 桃太郎と金太郎がいたらしい。


 金太郎は祭りの準備に。

 桃太郎は村内会議に……。

 行ったつもりになってたんだとさ。



 ◇ ◆ ◇



 酒臭い部屋の中に、虚ろな目で座り込む二人の姿があった。


「なぁ、桃太郎」

「なんだ、金太郎」


 何もせず帰ってきた金太郎が、寄合所で手に入れた酒瓶を片手に尋ねた。


「乙姫って――」

「待てよ」


 会議に行く準備をしていたはずなのに、すでに行ったつもりの桃太郎は酔った眼差しで辺りを見回す。


「よし。浦島はいない……いいぞ」

「あいつ、嫌な女だって噂があってな」

「嫌な女? 乙姫がか?」


 金太郎が吐きそうな表情で頷く。

 なんでも、乙姫が渡した玉手箱の件について「やりすぎだ」と、村の掲示板で炎上しているらしい。


「そもそも、あいつ。なんで玉手箱なんて渡したんだ?」

「お土産じゃなかったのか?」

「お土産で、爺さんになっちまった浦島見ただろ? 酷くないか?」


 桃太郎は、「確かに」と頷いた。

 亀を助けた礼に竜宮城でもてなし、お土産として渡した玉手箱。


 しかし、開けてビックリ玉手箱。

 浦島太郎は、爺さんになってしまった。


 話だけ聞けば、甚だ疑問だ。


「だけど、金太郎。あれは、約束を破っちゃいけないよ。っていう教訓じゃなかったか?」


 吐きそうな気配をぐっとこらえ、金太郎が反論する。


「いやいや、教訓はわかるが、わざわざ浦島にやる必要はないだろ?」


 二人は顔を見合わせ、頭を捻る。


「そこだけ見れば、恩を仇で返す悪女だな……」

「だろ? そもそも、出会いだって怪しい」

「なんだって!?」


 桃太郎が目を見開いた。

 たぶん、あまりわかっていないのだが、とりあえず驚いてみせた。


 相手に合わせた桃太郎のコミュニケーション術だ。


 犬、猿、きじを手なずけた桃太郎だ。

 これぐらい、朝飯前だった。


「元々、海岸にやってきたウミガメに、酒をあげて海に返すって風習があの地域にはあるらしくてな……」

「聞いたことがあるな」

「でよ、やって来たウミガメに、浦島が酒をやったんだ」

「ああ、あいつならそうするな」


 桃太郎がウンウンと、頷く。


「ところがどっこい、そのウミガメ。三杯飲んでも帰らなかったらしい……おかしいだろ?」

「なんだって!!」


 桃太郎は、意味はわからないが仰天してみせた。


「そのウミガメってのが、実は乙姫らしいんだよ」

「それって……ただのタカリじゃないか……」

「だからな、余計に乙姫ってヤバイ女なんじゃないかって……」


 ということは、噂が本当ならば、浦島はギャバ嬢に目を付けられた楽な客なのではないか。


 桃太郎は回らない頭で、飛躍して推測した。


「だとしたら、浦島の奴は……」

「そうだ。罠にかかった獲物だ」


 証拠もないのに金太郎が断言し、続けた。


「乙姫が亀の姿で騙したんだよ」

 

 桃太郎は戦慄した気がした。

 まさか、あの乙姫の裏の顔が、実はギャバ嬢だったなんてと。


 金太郎の話なんて聞いちゃいない。

 全く聞いてない。

 声がした程度にしか思ってない。


 つまり、自分の推測で完結してしまったのである。


「乙姫はキャバ嬢だったわけか……」

「あ、いや……別にキャバ嬢じゃないけど」

「そして店に連れ込み、お土産に玉手箱だと……なんて奴だ」


 強張った顔で「こうしちゃおれん」と、桃太郎がドンと床を叩き立ち上がる。


 浦島への同情から憤ったわけではない。

 ただ、(かわや)へ行きたいだけだ。


「探ってみるか?」

「ギャバ嬢? それとも亀か? どちらにせよ、それがいいかもな。犬にでも追わせて……ところで、お前さ」

「どうした? 早くしろ」


 金太郎がキョロキョロと辺りを見回した。

 そして、言い辛そうに口を開く。


「お供はどうした?」

「ああ、キビ団子を作ったのが婆さまだと知られてから、あいつら皆、婆さまの家来になった……」

「そ、それは……」

「言った憶えはないんだが」


 金太郎は、それはマズイと顔をしかめた。

 犬がいなきゃ、探るどころではない。

 むしろ、もう吐きそうだと。


 桃太郎も額に汗をかき、眉間に皺を増やした。

 このままじゃ、イカンと。


「なんてこった。密告か。だとしたら誰が……」

「ま、まさか、俺を弱体化させる誰かの陰謀か!?」


 桃太郎が陰謀説を唱え始めた。

 震えているのは、恐れのせいか、それとも別の何かか。


「一体誰が」と、二人は頭を捻るも吐き気だけ。

 ただただ、酒の空き瓶だけが増えていく。


 綺麗サッパリ乙姫の事は忘れ、お供たちに誰がキビ団子の件を密告したのかと、厠へ行くのを我慢しながら、二人の我慢比べは続く……。





ここまで拙い文を読んでいただきありがとうございます!


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「次も読みたい」

「つまらない」


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