《エル=クロス王国の真実》
夜のラスティア港。
海から吹く風が、レアのポニーテールを揺らしていた。
「ねえ、ルーク」
レアは港の柵に腰掛けたまま言う。
「エル=クロス王国って……本当に二十年前に滅びたの?」
ルークはしばらく黙っていた。
月明かりが、彼の金髪を静かに照らす。
「……表向きはな」
その言葉に、ミーニャが尻尾をぴくりと動かす。
「表向きってどういう意味にゃ?」
ルークはゆっくりと振り返った。
その表情は、いつもの冷静な顔とは違っていた。
「エル=クロス王国は、ただの王国じゃない」
「雷魔導具の王国だった」
アリエルが驚いた声を出す。
「雷……魔導具?」
ルークは腰の細剣に手を置いた。
「この剣も、その一つだ」
「エル=クロスは、雷の魔力を武具に宿す技術を持っていた」
レアの目が光る。
「それって……」
自分のガントレットを見る。
ルークは頷いた。
「そうだ」
「お前の装備も、その技術に近い」
レアは驚いて目を見開く。
「えっ!?」
ルークは続ける。
「だが、その力を恐れた者たちがいた」
ミーニャが耳を立てる。
「敵にゃ?」
「いや」
ルークは静かに首を振った。
「王都だ」
その場の空気が凍る。
「王都……?」
レアがつぶやく。
ルークは遠くの海を見る。
「エル=クロス王国は、雷魔導具を大量に作れる唯一の国だった」
「もし戦争になれば、世界の勢力図が変わる」
アリエルが小さく言う。
「だから……」
「そうだ」
ルークは言った。
「王都は恐れた」
「そして――」
彼は低くつぶやく。
「王国を滅ぼした」
レアが立ち上がる。
「そんなの嘘だ!」
「王都がそんなことするわけない!」
ルークはレアを見る。
「では聞く」
「なぜ王国の遺跡がすべて封鎖されている?」
「なぜ王族の遺体が一つも見つかっていない?」
レアは言葉を失った。
ルークは静かに言う。
「王国は滅びた」
「だが真実は消えていない」
彼は剣を抜いた。
青い雷が刃を走る。
「この剣が証拠だ」
「エル=クロスの技術は、まだ世界に残っている」
レアは拳を握る。
ガントレット《零・改》がわずかに光る。
「じゃあ……」
「ルークは何をするの?」
ルークは答えた。
「真実を探す」
「王国を滅ぼした者を見つける」
そして静かに言う。
「もし王都が敵なら――」
雷が剣を包む。
「俺は戦う」
その時。
レアのガントレットが強く光った。
バチッ!
雷が走る。
ルークの剣と共鳴するように。
ミーニャが目を丸くする。
「にゃ!? 今の光!」
アリエルも驚く。
「雷が……反応してる……」
ルークも驚いていた。
レアの雷と、自分の雷。
二つの力が――
共鳴していた。
レアはニッと笑う。
「じゃあ決まりだね」
拳を握る。
「クロス零は――」
「その真実、全部ぶっ壊して確かめる!」
ルークは一瞬驚き、
そして小さく笑った。
「……お前らしい」
雷が夜空を照らした。
エル=クロス王国の真実は、
まだ誰も知らない。
だがその答えに向かって、
クロス零は動き始めた。




