《開封の儀弐》
ここはラスティア商店街の片隅にある古本屋ジロウ。
古紙の匂いがほのかに漂う静かな店内――
のはずだった。
だが今日は違う。
三人の親父がテーブルを囲み、
まるで国家会議のような顔で沈黙していた。
ジロウがゆっくりと口を開く。
「……今回も、この時が来たようだな」
イヅナが腕を組み、深く頷く。
「うむ」
魚屋ハチロウはゴクリと喉を鳴らした。
「ついに……ですな」
ジロウは机の下へ手を伸ばす。
そして――
一冊の雑誌を取り出した。
「今回俺が用意したものは……これだ!」
バンッ!
机に叩きつけられた雑誌。
表紙には大きくこう書かれている。
《王都雑誌・しもべ通信》
イヅナの目が見開かれる。
「ぬおっ……! まさかそれは!」
ハチロウが震えた声を出す。
「王都の若者が夢中になるという……伝説の雑誌……!」
ジロウは眼鏡を押し上げた。
そして、ゆっくりと指を一本立てる。
「しかも今回は――」
ページをめくる。
「袋とじ付きだ」
三人の空気が凍りついた。
イヅナの額から汗が一筋流れる。
「……まさか」
ハチロウの頭が、緊張で二割増しに輝く。
いや――
もうほぼ照明だった。
「本当に……開けるんですか……?」
ハチロウの声が震える。
ジロウは静かに笑った。
「当たり前だろう」
雑誌を掲げる。
眼鏡がキラリと光る。
「この袋とじ――」
「やばいぞ!」
三人は息を合わせる。
「いくぞ……!」
「おう!」
「準備万端ですぞ!」
震える指先が袋とじに触れる。
そして――
「せーの!」
ビリビリビリッ!!
封印が破られた。
三人の視線がページに吸い込まれる。
そこにいたのは――
王都専属モデル、うさ耳のマロンちゃん。
イヅナが絶叫した。
「なにぃぃぃ〜!!」
ハチロウが机に手をつく。
「こ、これは……!」
ジロウの手が震える。
「まさか……」
ページには大胆なポーズの数々。
そしてそのタイトル。
《異界式・四十八奥義ポーズ集》
三人は言葉を失った。
しばし沈黙。
ただページを凝視する。
やがて――
イヅナがぽつりと言った。
「……トイレを貸してくれ」
ハチロウがすぐに続く。
「つ、次は私が……」
ジロウは静かに雑誌を閉じた。
「静かにな」
そして小さく言う。
「これは――三冊までだ」
イヅナが財布を取り出す。
「王都編集部の底力、見せてもらったぜ」
ハチロウの頭がさらに輝いた。
古本屋ジロウの眼鏡も負けじとキラリと光る。
こうして――
親父たちの熱き“開封の儀”は
静かに幕を閉じた。
店を出ていく三人。
その背中は――
どこか、少年のように弾んでいた。




