《王都ご飯》
白い石畳の大通りと、昼でも人が溢れる中央区画。
監督官ラザンとの報告を終えたクロス零は、ようやく解放された。
「……腹減った」
レアが率直に言う。
ミーニャの耳がぴんと立った。
「王都にゃ! 王都は美味しいものいっぱいにゃ!」
アリエルが小さく笑う。
「ずいぶんラスティアの街と違いますね」
ルークは周囲を警戒しながらも、どこか肩の力が抜けていた。
「とりあえず、落ち着ける場所だな」
ゼノは端末を仕舞う。
「三時間だけ自由時間」
「その後、装備点検」
「はいはい」
レアが手を振る。
結局入ったのは、王都中央市場に面した大衆食堂。
肉の焼ける匂い。 スープの湯気。 パンの香ばしさ。
全員分の皿が並ぶ。
分厚いステーキ。 魚介の煮込み。 山盛りの白パン。
ミーニャが目を輝かせた。
「豪華にゃ!!」
即フォークが突き刺さる。
「いただきにゃ!!」
アリエルも控えめに口に運ぶ。
「……美味しいです」
ルークは黙って食べながら、レアを見る。
「さっきのバグ個体」
「今後も倒せそうか?」
レアはパンをちぎりながら答えた。
「うん」
ゼノが低く言う。
「深海は実験場」
「次は、もっと人の近い場所に来る」
セレスが静かに頷いた。
「被害規模が拡大する可能性があります」
ミーニャは口いっぱいに頬張りながら言う。
「でも今日はごはんにゃ!」
全員、一瞬止まって。
レアが笑った。
「そうだね」
グラスを持ち上げる。
「じゃ」
「深海ダンジョンクリアと、生存に乾杯!」
ミーニャもパンを掲げる。
「かんぱーいにゃ!」
アリエルも小さく。
「……乾杯です」
ルークは苦笑しながらグラスを合わせた。
ゼノは無言で一口。
王都の昼下がり。
戦いの合間の、短い平和。
だが誰もが分かっていた。
これは“休憩”。
次の現場は、もう近い。




