《深層守護獣》
縦穴を降りきった先は、円形の広間だった。
床中央には浅く水が張り、 壁面には青い古代文字。
空気が、重い。
「……来るにゃ」
ミーニャが低く言った。
水面が盛り上がる。
岩と水が絡み合いながら、巨体がせり上がった。
四足。 岩殻の胴体。 背部に水晶突起。 頭部に三つの発光核。
「守護獣タイプだ」
ゼノが即断する。
守護獣が一歩踏み出す。
床が沈み、同時に空間全体に圧が走った。
アリエルがよろめく。
セレスが即座に補助光を重ねる。
「重力寄りの水圧干渉です!」
ミーニャが前へ。
《ツインヘリックス・改》を構え、突進。
――ガキィン!
刃が弾かれ、身体ごと押し戻される。
「硬いにゃ!」
ルークが側面から雷剣。
関節部に火花。
浅い。
床下の水路が逆流し、水柱が噴き上がる。
レアが跳んで回避。
ゼノの声。
「環境連動型!」
「床、水路、全部つながってる!」
守護獣の核が明滅。
空間そのものが敵になる。
レアは拳を握った。
「……なるほど」
ミーニャを見る。
「ミーニャ」
視線が合う。
ミーニャがニヤリ。
「同時展開にゃ?」
レアも笑う。
「行こう」
ミーニャがカードを差し込む。
「スフィンクス・オルタナティブ!」
ツインヘリックスが再構成され、翼と重力ラインが展開。
同時に。
レアのガントレット《零・改》が唸る。
《零・改》起動。
認知加速、最大域。
世界が引き伸ばされる。
ゼノが即座に指示。
「ミーニャ、正面圧殺!」
「レア、左核!」
セレスが因果補正を重ねる。
アリエルが糸で脚を止める。
ルークが雷剣で注意を引く。
ミーニャが正面から突貫。
重力制御、最大。
《スフィンクス・スパイラルブレイク》!
岩殻が砕け、水が弾ける。
同時に。
レアが側面を駆け上がる。
核の配置。
魔力収束点。
全部、見えている。
僕はゆっくりと両手を組んだ。
右手の人差し指と中指を揃え、親指を立てる。
銃の形。
左手をその下に添えた瞬間、
ガントレット《零・改》の回路が赤く発光する。
雷気の内側に、炎が絡みつく。
青白い稲妻と、灼熱の焔。
二つの属性が螺旋状に重なり、掌の中で圧縮されていく。
空気が焼ける匂い。
「破滅の閃光――《雷炎砲・ゼロブラスター》!!」
雷と炎が同時に解放された。
閃光と爆熱が重なり、左核を貫通。
内部で二重爆発が起き、守護獣の装甲が裏側から弾け飛ぶ。
左核、破壊。
守護獣が咆哮。
だが止まらない。
ミーニャが背部へ回り込み、
レアが中央核へ踏み込む。
二人同時。
衝撃が重なる。
内部崩壊。
巨体が沈み込むように崩れ落ちた。
水が静まり、
広間に残るのは破砕音だけ。
ミーニャが肩で息をする。
「……決まったにゃ」
ミーニャの声に、まだ熱が残っている。
レアは拳をゆっくり下ろした。
雷炎の余熱が、ガントレットの内側で脈打っている。
「……うん。終わった」
短く息を吐く。
ゼノが端末を見る。
「守護反応、完全停止」
クロス零は自然に合流した。
セレスが小さく頷く。
「完璧な連携でした」
ルークが剣を収める。
「二人とも、さすがだ」
「切り札は、使うときに使う」
深海ダンジョンは、まだ続く。
だが――
この階層は、突破した。




