《下降》
ガーディアンの残骸を越え、クロス零は先へ進んだ。
奥へ続く通路は、緩やかな下り坂。
石床は濡れているが、水は溜まっていない。
天井から落ちる雫だけが、一定のリズムで響いていた。
「空気、ちょっと重くなってきたにゃ」
ミーニャが尻尾を揺らす。
「深度が下がってる証拠だ」
ゼノが端末を確認する。
「内部気圧、外海と同調してる。
まだ問題ない」
アリエルは足元を確かめながら歩く。
「水中じゃないのに……海の底って感じ、します」
「圧迫感がある」
ルークが短く言った。
レアは《認知加速》を薄くかけ、周囲を観察している。
壁面の青い古代文字。
床下を走る微弱な魔力流。
遠くで反響する、低い振動。
「まだ生きてるダンジョンだ」
レアが呟く。
ミーニャが前方を指差した。
「分岐にゃ」
三方向。
左は細く、右は崩落気味。
正面だけが広く、魔力反応も濃い。
ゼノが即座に判断する。
「中央。反応源、そっち」
「了解」
レアが頷く。
進むにつれ、魔物の出現頻度が上がる。
水棲型の残存個体。
小型ガーディアン。
罠型触腕。
だが流れは完全にクロス零側だった。
ミーニャが道を作り、
ルークが強敵を切り、
アリエルが拘束し、
セレスが補助を重ね、
レアが止めを刺す。
ゼノは後方から索敵とルート管理。
誰も迷わない。
やがて通路は再び開けた。
次の階層へ続く、巨大な縦穴。
底は見えない。
風が、下から吹き上がってくる。
「……第五階層」
ゼノが端末を見た。
「魔力密度が一段跳ね上がってる。 中層だ」
石床の色が変わる。
青い古代文字の光が、わずかに強い。
レアは縦穴を覗く。
その瞬間。
下から、低い振動が伝わった。
規則的な――脈動。
ガントレット《零・改》が、わずかに震える。
「……ああ」
「やっと本番だ」




