《第一階層》
石床に足音が響く。
潜水ユニットを入口で切り離した後、
クロス零は通常装備のまま、ダンジョン内部を進んでいた。
石床を踏みしめる音が、広い空間に反響した。
壁面には同じ青い古代文字。
天井から滴る水が、淡く光りながら落ちていた。
「湿度、高いにゃ……」
ミーニャが尻尾を振る。
アリエルは足元を確認しながら進む。
「水が……残っています」
通路の低い場所には、膝ほどの水溜まり。
完全な陸上ではない。
ルークが剣を構えた。
「来る」
床の水面が揺れた。
次の瞬間。
水溜まりが弾け、黒い影が飛び出す。
魚と爬虫類が混ざったような魔物。
鋭い背ビレと、粘液に覆われた胴体。
「水棲型……!」
レアが即座に動く。
「ミーニャ、左!」
「了解にゃ!」
ミーニャが地面を蹴り、土魔法で足場を盛り上げる。
跳躍。
《ツインヘリックス・改》が横薙ぎに振るわれ、二体をまとめて切り伏せる。
右側から別の影。
ルークが踏み込み、雷を纏わせた一閃で切り落とす。
アリエルの糸が広がり、天井を這っていた個体を絡め取った。
セレスの補助光が全員を包む。
レアは魔物の懐に入り、拳で核を叩き割る。
泡のように霧散。
短い戦闘。
だが床にはすでに新しい波紋。
「増えるタイプだ」
ルークが低く言う。
ゼノが端末を見る。
「水路が内部に張り巡らされてる」
「ここは通過点」
レアが頷く。
「長居しないほうがいいね」
拳を握る。
「走り抜けるよ!」
クロス零は一気に速度を上げた。
水棲魔物が次々と飛び出すが、
ミーニャが道を作り、
ルークが切り開き、
アリエルが拘束し、
セレスが補助を重ね、
レアが止めを刺す。
連携は淀みない。
やがて通路は広い円形空間へと繋がった。
中央に、沈んだ祭壇のような構造物。
そして――
天井から吊るされた巨大な影。
鱗に覆われた胴体。
複数の触腕。
ゆっくりと目が開く。
「……中ボスにゃ」
ミーニャが呟く。
レアは構えた。
「よし」
「ここから本番だ」




