《指名依頼・深海の門》
翌朝のラスティア・ギルド。
昼前だというのに、館内は騒がしかった。
冒険者の怒号、武器の擦れる音、酒と汗と鉄の匂い。
いつも通りの光景。
だが――
受付前だけ、妙に空気が張っていた。
レアは掲示板を流し見しながら、
「護衛、採取、低級討伐……」
つぶやく
「やっぱ物足りないな」
そのときだった。
受付嬢が、珍しく硬い表情で立ち上がった。
「クロス零の皆さん」
名指し。
周囲の冒険者たちが一斉に振り返る。
ミーニャの耳がぴくりと動いた。
「……呼ばれてるにゃ」
レアが歩み寄る。
「なに?」
受付嬢は一枚の封書を差し出した。
封蝋には、王都ギルドの紋章。
「王都冒険者ギルドからの正式依頼です」
ざわ、と空気が揺れる。
「王都?」
「ラスティア経由で?」
レアは受け取り、中を開いた。
短い文章。
だが内容は重い。
【緊急指名依頼】
対象:未踏破・海底ダンジョン《深海の門》
発生地点:ラスティア沖南部海域
推奨ランク:A以上
指名パーティー:クロス零
現地ギルド単独では対応不能。
原因不明の魔力変動あり。
レアは小さく息を吐いた。
「……海底ダンジョンだって!」
ミーニャが目を丸くする。
「うみにゃ!?潜るにゃ!?」
アリエルが不安そうに杖を抱える。
「水中戦……」
ルークは腕を組んだ。
「王都ギルドが直接指名するほどなら、相当だな」
受付嬢が続ける。
「現地調査隊が二度、引き返しています」
「内部で魔物の構成が変化しているそうです」
「……変化?」
レアの目が細くなる。
カード絡み。
バグモンスター。
シャドウ・リバース。
全部、頭の中で繋がる。
ミーニャが《ツインヘリックス・改》を担ぎ直した。
「つまり、私たちの出番にゃ」
アリエルも小さく頷く。
「……行きましょう」
「今度は海か」
ルークは淡く笑う。
レアは拳を握る。
「海底ダンジョン、上等じゃないか!」
にやっと笑う。
「行こう!」
受付嬢が確認する。
「受諾、でよろしいですか?」
レアは即答した。
「もちろん」
クロス零は顔を見合わせる。
誰も迷わない。
こうして――
王都ギルド直轄。
クロス零指名。
海底ダンジョン《深海の門》。
次の戦場が、決まった。




