《追手・ラスティア潜入》
夕暮れのラスティア。
港から湿った風が吹き込み、街路の旗がばたついていた。
露店の呼び声と冒険者の笑い声。
いつも通りの、平和な街だ。
人の流れの中に、異物。
呼吸の間隔。
足運び。
視線の高さ。
「……来てる」
ルークが低く言う。
剣の柄に手を添え、薄く雷が走った。
ミーニャの耳が動く。
「五……いや、六にゃ」
アリエルは無言で《スレッド・リーパー》の糸を足元に展開する。
セレスは一歩下がり、淡い補助光を全員に重ねた。
次の瞬間。
屋根から影が落ちる。
同時に、路地から刃。
黒装束の暗殺者たちが、人混みの中から浮かび上がった。
「対象確認。《エル=クロスの王子》排除」
感情のない声。
ルークが前に出る。
「下がれ。俺が受ける」
短剣と細剣が激突。
火花が散る。
左右から二人が同時に踏み込む。
ミーニャが地面を踏み抜いた。
「《アースウォール》!」
土壁が立ち上がり、通りを横断して突進を止める。
「下がるにゃ!!」
アリエルの糸が屋根の暗殺者の足を絡め、そのまま引き落とす。
セレスの因果補正。
レアの踏み込みが半拍早くなる。
レアの拳が顎を撃ち抜いた。
一人沈黙。
ルークは雷剣で二人を同時に受け流し、そのまま喉元へ一閃。
黒装束たちが倒れる。
残り一体。
地面に膝をついた暗殺者が、歪んだ笑みを浮かべた。
「……王子……確認……」
胸部が赤く発光する。
レアの視界に自爆の映像。
「自爆!!」
「全員、離れて!」
セレスが即座に光障壁を展開。
ミーニャがレアを掴んで跳ぶ。
アリエルの糸がルークとセレスを引き寄せる。
――ドォン!!
爆炎。
石畳が抉れ、衝撃波が通りを走る。
だが爆心地には、歪んだ光球。
セレスの因果障壁が、爆発を押し潰していた。
煙が晴れる。
暗殺者の姿は跡形もない。
血も装備も残っていない。
完全消滅。
ルークが剣を下ろす。
「……ここまで追ってくるとは」
レアが歯を食いしばる。
「ラスティアで自爆とか、狂ってる」
ミーニャが低く唸る。
「街巻き込む気満々にゃ」
アリエルが杖を握り直す。
セレスは静かに言った。
「本気で、抹消しに来ています」
ルークは深く頭を下げた。
「……巻き込んだ」
レアは肩を叩く。
「仲間でしょ」
拳を握る。
「王子狩りなんて、趣味悪すぎ」
ミーニャが《ツインヘリックス・改》を構える。
「次来たら、全員潰すにゃ」
アリエルも頷く。
「……一緒です」
ラスティアの夕焼けの中。
クロス零とセレスは、自然に円陣を組んだ。
追手は始まりにすぎない。
全員、分かっていた事だった。




