《シャドウ・リバース》
王都南区、廃工房跡。
ゼノの端末が短く鳴った。
「魔力反応、複数。奥だ」
「行くよ」
レアが先頭に出る。
崩れた扉を蹴破ると、内部に四体の異形がいた。
狼の胴体に昆虫の脚。
別個体の頭部を無理やり繋げたような歪な構造。
魔力回路が外に露出している。
「縫い合わせ型にゃ」
ミーニャが《ツインヘリックス》を構える。
「散開!」
異形が同時に跳んだ。
「ミーニャ、左!」
「了解にゃ!」
地面を蹴り、回転刃で正面を受け止める。
土魔法で床を固め、突進を殺す。
「アリエル、中央!」
「……はい!」
《スレッド・リーパー》。
風に乗った魔力糸が二体を同時に絡め取る。
引き寄せ。
そのまま切断。
縫合部ごと裂け、二体が床に崩れた。
「ルーク、右!」
「分かっている」
雷剣が閃き、一体の中核を貫く。
残る一体が後方へ跳ねた。
セレスが前に出る。
「補助、入れます」
淡い光が全員を包む。
動きが軽くなる。
だが異形の内部で魔力が暴れ始めた。
ゼノが叫ぶ。
「三核構造!」
「普通の壊し方じゃ止まらん!」
レアはガントレットに手をかける。
「なら、まとめて潰す」
炎竜カード。
「武装展開!」
《零・改》にカードが刺さる。
雷が走り、炎が装備として連結される。
「一気に行く!」
レアが踏み込む。
一核。
拳で粉砕。
二核。
跳躍から踵落とし。
三核。
零距離雷炎拳。
異形は形を保てず崩壊した。
その瞬間。
奥の影が動いた。
黒い外套の人影。
「……面倒だな」
低い声。
床に魔導陣が浮かぶ。
「待て!」
ルークが踏み込むが、空間が歪み、人影は後退した。
同時に、床の残骸が一斉に発光。
「自壊プロトコル!」
ゼノが叫ぶ。
カード化前に魔力が消失する。
何も残らない。
焦げた床だけ。
「証拠消しか……」
ミーニャが舌打ちする。
セレスが周囲を見る。
「因果の痕跡、撤退方向を特定できません」
アリエルが拳を握る。
「……逃げました」
レアは炎装備を解除した。
《零・改》が通常状態に戻る。
ゼノが端末を見る。
「カードを残さない運用」
「完全に組織型だ」
ルークが剣を収める。
「シャドウ・リバース」
レアは焦げ跡を見下ろす。
「逃げたってことは」
顔を上げる。
「僕らを危険だと認識した」
セレスが頷く。
「向こうも、こちらを測っています」
レアは拳を軽く握った。
シャドウ・リバース。
名前だけが残った。




