《謎の組織》
王都西区。
市場から外れた倉庫街で、悲鳴が上がった。
「行くよ!」
レアが走り出す。
ミーニャとアリエルが続き、ルークが後方警戒。
セレスは空気の流れを読むように歩き、ゼノは端末を起動した。
崩れた木箱の向こう。
異様な魔物が蠢いていた。
狼の胴体に、昆虫の脚。
背中には水晶の突起。
魔力が不規則に噴き出している。
「……なに、あれ」
アリエルが息を呑む。
「キメラ系……でも違うにゃ」
ミーニャが構える。
レアは目を細めた。
《認知加速》。
構造が見える。
カードの縫合痕。
強引に重ねられた魔力回路。
「これ……自然発生じゃない」
ルークが剣を抜く。
「人工だな」
魔物が跳んだ。
「ミーニャ、受け!」
「任せるにゃ!」
土壁。
正面衝突。
だが反動が異常に重い。
「硬すぎにゃ!」
「アリエル、脚を!」
「……はい!」
魔力糸が絡む。
だが、糸が途中で焼き切られた。
「っ!」
セレスが前に出る。
「因果が……歪んでいます」
淡い光。
攻撃軌道がわずかにズレる。
レアが横から踏み込む。
拳に雷。
一撃。
だが魔物は崩れない。
内部で複数の魔力反応が暴れている。
「ゼノ!」
レアが叫ぶ。
「中心核、三つ!」
「通常構造じゃない」
「了解」
レアは息を整える。
「ルーク、右核」
「行く」
「ミーニャ、胴体固定」
「にゃ!」
「アリエル、補助」
風が流れ、体勢が整う。
セレスの光が全員を包む。
レアが突っ込んだ。
一核。
ルークの雷剣が貫く。
二核。
ミーニャのツインヘリックスが粉砕。
三核。
レアの拳が叩き込まれる。
魔物は形を保てず、崩壊した。
地面に残ったのは――
歪んだカードの破片。
焦げた魔導回路。
ゼノが拾い上げる。
「粗悪融合」
「誰かが、カードを無理やり組んでる」
セレスが周囲を見る。
「……因果の痕跡があります」
「ここじゃない」
「別の場所で“作られて”、運ばれた」
ルークが低く言う。
「組織的だな」
レアは破片を見つめた。
炎竜の融合とは違う。
思想がない。
設計もない。
ただ力を重ねただけ。
「カードを……武器にしてる」
ミーニャが歯を見せる。
「許せないにゃ」
アリエルが小さく言った。
「……こんなの、命じゃない」
ゼノは端末に記録を落とす。
「痕跡コード、未登録」
「黒系統の逆流パターン」
セレスが目を閉じる。
「“戻す”因果……」
レアは立ち上がった。
「影でカードを弄ってる連中がいる」
「王都に」
ルークが剣を収める。
「名前は?」
ゼノが短く答えた。
「まだ分からん」
「だが、この痕」
端末を見せる。
「俺の業界じゃ、こう呼ぶ」
レアを見る。
「シャドウ・リバース」
王都は広い。
敵は姿を見せない。
だが――確実に、動いている。
クロス零は、それを初めて“実感”した。




