《次の目的地》
工房の炉は、いつも通り赤く燃えていた。
イヅナは金床の前で腕を組み、ゼノの端末に映る青い文字を睨んでいる。
「……やっぱり同じだな」
石板の転写データ。
ゴブリン要塞で見つけた古代文字。
線の癖も、刻み方も一致している。
「この形式、地方じゃ追えん」
ゼノが言う。
「王都の中央魔導図書庫なら、同系統の記録が残ってる可能性が高い」
セレスが頷く。
「因果の流れも、あの方向に集まっています」
レアは工房の柱にもたれながら聞いていた。
「つまり」
顔を上げる。
「レガルタ中央大陸、王都だね」
ミーニャが尻尾を揺らす。
「都会にゃ!」
アリエルは少し緊張した顔になる。
「……人、多そうですね」
ルークは静かに言った。
「俺の身分は伏せたままだ。だが王都なら情報も集めやすい」
全員の視線がレアに集まる。
レアは一度、工房の天井を見上げた。
そしてイヅナを見る。
「親父」
「分かってる」
イヅナはため息をついた。
「止める気はねぇよ」
レアは笑った。
「ありがとう」
イヅナは頭を掻く。
「……ったく」
「まだガキだと思ってたのにな」
ゼノが工具袋を肩に掛ける。
「俺はここ拠点でいい」
「工房とクロス零、兼用だ」
「遠隔で解析データ送る」
「必要なら現地にも出る」
ミーニャが目を輝かせる。
「専属整備士にゃ!」
「職人だ」
ゼノはそれだけ言った。
セレスがレアの隣に立つ。
「私も同行します」
「因果の起点は、確実に王都です」
レアは頷いた。
「決まりだね」
イヅナは炉の火を見つめながら言う。
「王都は甘くねぇぞ」
「貴族も、宗教も、裏もある」
「魔導兵器の匂い嗅ぎつけた連中も動く」
レアは拳を軽く握った。
「それでも行く」
イヅナは小さく笑った。
「だろうな」
工具台から小さな金属プレートを投げる。
レアが受け取る。
「緊急用の回路キーだ」
「《零・改》が暴走しかけたら使え」
「……親父」
「しっかりな」
レアはプレートを握りしめた。
「帰ってくるよ」
イヅナは背を向けたまま手を振る。
「あったりまえだ!お前の家だからな」
工房の外。
クロス零は街道に並んだ。
レアが振り返る。
煙突から上がる白い煙。
育った場所。
「行こう」
仲間が頷く。
こうして。
古代文字の謎を追う旅は、
レガルタ中央大陸、王都へ向かって動き出した。




