《アリエルの笑顔》
ダンジョンを出て、外の空気を吸った瞬間。
アリエルの肩から、ようやく力が抜けた。
「……終わりました」
杖を抱えたまま、息を整える。
ミーニャが近づいてきて、顔を覗き込む。
「大丈夫にゃ?」
「……はい」
アリエルは小さく頷いた。
「途中……怖くなりました」
視線を落とす。
「また、暴走するんじゃないかって」
セレスが隣に立つ。
「でも、止まりました」
「……セレスさんが」
「違います」
セレスは首を振る。
「あなた自身です」
ルークが腕を組む。
「踏みとどまったのは、アリエルだ」
ゼノは端末を操作しながら言った。
「数値も戻ってた。完全に自制できてる」
アリエルは驚いたように目を瞬かせた。
「……私が?」
「そうにゃ」
ミーニャが胸を張る。
「ちゃんと戦えてたにゃ」
アリエルはしばらく黙っていたが、やがて杖を胸に抱いた。
「……私」
小さく息を吸う。
「初めてです」
顔を上げる。
その表情は、はっきりとした笑顔だった。
「怖いままでも、前に出られたの」
レアはそれを見て、少しだけ目を細める。
「うん」
一歩近づく。
「それでいい」
レアは拳を軽く握った。
「完璧じゃなくていい」
「暴走の可能性があってもいい」
「怖くてもいい」
アリエルを見る。
「一緒に戦えるなら」
そして、全員を見回す。
「これで」
はっきりと言った。
「僕たちは、本当の仲間だ」
ミーニャの尻尾がぴんと立つ。
「今さらにゃ!」
ルークが小さく息を吐く。
「ようやくだな」
セレスは微笑み、ゼノは端末を閉じた。
アリエルはもう一度、はっきり笑った。
それは、戦場で初めて見せた――
仲間としての笑顔だった。




