《五人の戦場》
崩れた石柱の向こうで、魔物が蠢いていた。
峡谷に溜まった群れ。数は二十を超える。
レアは一歩前に出て、全体を見渡す。
《認知加速》。
視界が広がり、敵の動線、突進角度、風の流れまでが同時に流れ込んでくる。
「ミーニャ、正面固定」
「了解にゃ!」
ミーニャが地面を踏み抜いた。
土が盛り上がり、即席の防壁が形成される。突進してきたオークが、壁ごと受け止められた。
「止まったにゃ!」
「アリエル、右側」
「……はい」
アリエルが杖を構える。
風に乗った魔力糸が広がり、横から回り込もうとした魔物たちを絡め取る。
引き寄せ、切断。
血飛沫が宙で散った。
「ルーク、奥の重装」
「分かっている」
ルークはすでに動いていた。
雷を纏った細剣が閃く。
敵の斧を受け流し、そのまま喉元へ一閃。
倒れる音すら小さい。
「セレス」
「補助、入れます」
淡い光がレアとミーニャを包む。
疲労が薄れ、踏み込みが軽くなる。
因果干渉。
わずかなズレが修正され、攻撃の当たる確率が底上げされる。
後方でゼノが端末を操作していた。
「重力ユニット、展開」
峡谷の中央に圧が落ちる。
魔物たちの動きが鈍り、足並みが崩れる。
「いい位置だ」
レアが小さく息を吐いた。
戦場は整った。
ミーニャが受け止め、
アリエルが削り、
ルークが強敵を潰し、
セレスが流れを安定させ、
ゼノが裏側を制御する。
その中央で。
レアは拳を握る。
「――行く」
地を蹴った。
雷音が遅れて響く。
一体、二体、三体。
弱点だけを正確に打ち抜きながら駆け抜ける。
最後に残った大型個体が咆哮した。
レアは正面から踏み込む。
「終わり」
拳が叩き込まれ、雷が走る。
巨体が崩れ落ちた。
静寂。
峡谷に風だけが残る。
「……制圧完了」
レアが振り返る。
ミーニャは土壁を解除し、尻尾を揺らした。
「楽勝にゃ」
アリエルは息を整え、杖を下ろす。
「……大丈夫、でした」
ルークは剣を収める。
「連携、悪くない」
セレスは光を引かせながら頷いた。
「安定しています」
ゼノは端末を畳む。
「武装データ回収済み。次は出力を二割上げられる」
レアは笑った。
「完璧だね」
五人が戦場を整える。
僕が駆け抜ける。
クロス零は、そういう布陣だ。




