《ゼノの夢》
ゼノの夢
夜のイズナの工房。
炉は落ちているが、鉄の熱は残っていた。
作業台の上に《零・改》が置かれ、補助回路と冷却板が並べられている。
ゼノはそれを見下ろしていた。
「触らねぇのか」
イズナが言う。
「見るのが先だ」
ゼノは答える。
レアとセレスは少し離れて立っていた。
「今日の出力、限界超えてたよね」
「超えてた。壊れなかったのは運だ」
「運じゃねぇ」
イズナが言う。
「骨組みが強ぇだけだ」
ゼノは《零・改》を指で軽く叩く。
「設計はいい。だが荒い」
「荒い?」
「古代兵器の理屈を、今の武装にねじ込んでる」
ゼノは回路を見る。
「方向は合ってるが、まだ“使ってる”だけだ」
「なら?」
イズナが問う。
「理解して作り直す」
「古代兵器の設計は合理的だ。出力の流れも、負荷の逃がしも、全部理屈でできてる」
セレスが静かに言う。
「戦うための設計ですね」
「そうだ。だが戦うためだけに使うのは安い」
レアが腕を組む。
「安い?」
「この技術で街を守れる。防護壁も作れる。魔力遮断装置も作れる。崩れねぇ橋も作れる」
ゼノは続ける。
「兵器は出力が高い。それ自体は悪じゃねぇ。使い方が悪いだけだ」
イズナは黙って聞いている。
「古代兵器を、壊す道具で終わらせねぇ」
ゼノは言う。
「守る側に回す」
レアが笑った。
「いいじゃん」
「お前らの武装は実験台だ」
「実験台って言うなよ」
「事実だ。戦場で使われる装備は嘘が通じねぇ」
イズナが炉を軽く叩く。
「つまり」
「ここでやる。イズナの工房に籍を置く。武装は俺が見る」
「クロス零専属整備士だ」
レアの表情が明るくなる。
「ほんとに?」
「条件がある」
「なに?」
「遠慮するな。壊せ」
レアが笑う。
「壊す前提なんだ」
「壊れねぇ武装は進化しねぇ」
セレスが小さく頷く。
「壊す力を、守る力に変える……」
「それが夢だ」
ゼノは言う。
「古代兵器を平和利用する」
イズナが鼻を鳴らす。
「でかく出たな」
「できる」
ゼノは工具袋を肩にかける。
「強さは手段だ。目的じゃねぇ」
工房の火が静かに揺れる。
戦場の裏側で、もう一つの進化が始まっていた。




