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《初めてのモンスターカード》

スライム三十体の討伐依頼──それが今日の仕事だ。

ラスティアの街門をくぐり抜け、レアは眩しい陽光に目を細めた。

見渡せば、街の外れには初心者冒険者たちの姿。剣を構え、スライムを相手に悪戦苦闘している。

「やっぱり、この辺は新人が多いな……」

レアは肩をすくめ、視線をもう少し先へ向ける。

人影の少ない方向に広がる森――アスカの森。

そこはスライムだけでなく、ゴブリン、ルビーラビット、ウルフなどの小型魔物が群生する狩場だった。

「……どうせなら、少し奥まで行ってみるか」

レアは森の奥へと踏み込んだ。


森に入ると、早速――3体のスライムがうごめいていた。

木漏れ日の下、ぷるぷると震える半透明の体が、地面の苔を飲み込むように這い回っている。

「……いたな」

レアは拳を構え、息を整えた。

ガントレットの表面が光を反射し、わずかに青白く輝く。

1体がこちらに気づき、ぬるりと跳ねた。

粘液が飛び散る。その粘り気が地面に触れると、じゅっと音を立てて草を焦がす。

「酸性タイプか。やっかいだね」

一歩踏み込み、両拳を合わせた瞬間、金属音が森に響いた。

レアのガントレットに魔力の紋が走り、衝撃波が放たれる。

スライムの体が弾け、粘液が飛散する。

「まずは一体」

残る二体が威嚇するように膨らんだ。

だが、レアの視線は冷静だった――


スライムがぴょん、と跳ねるよりも早く、

金属のこすれる音――。

レアの両腕が閃き、ガントレットが空気を切り裂く。


衝撃波が走り、二体のスライムが同時に弾け飛ぶ。

水飛沫のように散った粘液が草に吸い込まれ、静寂だけが残る。

「はい、終了っと。……もう少し歯ごたえあるやつ、いないかな」

スキップしながら、レアは森の奥を見やった。

その瞳の奥には、退屈と――ほんの少しの期待が光っていた。


飛び散った粘液の残骸が、じわりと地面に広がっていく。

レアはブーツのつま先でぬるつく地面を軽くつつき、ため息を漏らした。

「……ま、素材は素材か」

腰のポーチを開き、小瓶を取り出す。

しゃがみ込んで、溶け残ったスライムの核を器用に瓶へと掬い取る。

透明な球体の中心には、淡く青い光がまだ脈動していた。

「新鮮なうちに取っておかないと、ただのゼリーになるからね」

レアは瓶の口を布でぬぐい、栓をしっかり閉めた。

小さく振ると、核がころりと音を立てる。

「よし、これで三個目……残り二十七か」


「うわぁ〜! 助けてくれぇぇっ!」


森のさらに奥から、悲鳴が木霊した。

レアは即座に顔を上げる。音の方向へ、木々の枝を蹴って駆け出した。


数秒後、視界が開ける。

そこには、巨大な影――


筋骨隆々の熊の魔物。

額に一本の黒い角を生やした“一角ベアー”が、初心者冒険者風の男を追い詰めていた。

男の手にはひび割れた短剣。足は震え、もう動けそうにない。


「一角ベアー……こんな森に出るなんてね」


レアは認知加速を発動する、視界がスローモーションのように歪み、周囲の動きがゆっくりと流れる。

両足に黒鉄甲のブーツを固く踏み込み、跳躍。空中で体を旋回させ、一角ベアーに向けて飛び蹴りを叩き込む。


雷が足を駆け抜け、蹴り足が一角ベアーの顔面を直撃する。衝撃波が弾け、稲妻の閃光とともに一角ベアーは吹き飛ばされ、全身に雷の衝撃が走る。

感電と衝撃で身動きが取れず、咆哮も空しく――その体は光に包まれ、輝くモンスターカードとなって地に落ちた。


「うわぁ〜!モンスターカード!」

僕は目を輝かせ、光り輝くカードを手に取ろうと伸ばす。

――僕のもんだよね?

チラリと、さっきまで冒険者がいた方向を見たが、もう誰もいない。逃げたあとだった。

僕はカードを手に、にんまりと笑う。


「最初のモンスターカードだ!どうしよう……売ったらいくらになるかな?10万以上の値にはなるはずだ〜!わくわくする〜!」

僕はカードを握りしめ、頭の中で計算する。

「練習がてら、残りのスライムはこいつに狩らせちゃおうかな……」

夕刻、街のギルドに戻った僕は、受付嬢にスライム討伐の報告と、採取した素材を手渡す。

「はい、確かに」

受付嬢はにっこり微笑む。

「では、素材も含めたお値段は8,000円になります。ありがとうございました」

僕は小さくガッツポーズをしながら、胸の中で次の冒険を夢見るのだった。

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