《可能性》
ギルドの中庭。
復興資材が積まれ、石畳にはまだ焦げ跡が残っている。
特別な設備は何もない。
ただの空き場所だ。
レアは、炎竜カードを手に立っていた。
「……ここで、見る?」
「ええ。場所は関係ありません」
セレスは静かに答える。
視線はカードから一瞬も離れない。
「カードは“物”ではなく、結果の集合体です。
因果を辿れば、性質は分かります」
レアはカードを差し出した。
「壊れたりしない?」
「しません。
ただ――あなたが耐えられるかは、別です」
「……率直だね」
セレスは炎竜カードに触れず、半歩距離を取った。
「《因果干渉》――解析」
空気が静かに張り詰める。
レアの《認知加速》が、条件反射のように同期した。
「……召喚回路」
セレスが小さく呟く。
「存在します。しかも、かなり強固」
「じゃあ、普通に呼び出せる?」
レアの問いに、セレスは首を横に振った。
「“できます”。
ですが――」
指先で、見えない線をなぞる。
「このカード、召喚回路よりも内向きの流れが異常に太い」
ルークが即座に理解する。
「……主回路が、別にある?」
「ええ」
セレスは断言した。
「召喚は副次的機能です。
本質は――」
「融合」
レアの視界に、因果の像が重なる。
炎竜の“存在結果”。
筋力、骨格、反射、耐久。
それらが、召喚体ではなく使用者に向かって流れ込む構造。
「召喚すれば、外に出た炎竜として戦う。
でも融合すれば――」
セレスはレアを見る。
「あなた自身の身体能力が、
一時的に炎竜級まで引き上げられる」
ミーニャがごくりと喉を鳴らす。
「どっちが危ないにゃ?」
「融合です」
即答だった。
「ですが、最も効率的で、
最も“あなた向き”なのも融合」
レアはカードを見下ろし、静かに息を吐いた。
「……選べる、ってことか」
「ええ」
セレスは頷く。
「召喚もできる。
融合もできる。
ただし――」
声を低くする。
「融合は、あなた自身が前に出る覚悟が必要です」
レアは、カードを握った。
「……それでいい」
炎竜カードは、淡く光った。
召喚と融合。
二つの可能性を内包した切り札として。




