《雷迅拳・ゼロストライク》
タクティカル・ガントレット《零》
静かに力を制す、戦闘補助型の試作グローブ。
従来の籠手とは異なり、人体工学と戦術思考を融合させた設計で、装着者の意志を最大限に増幅する。
名の「零」は**“力の原点に還る”**という開発理念から取られ、無駄な力を削ぎ落として正確な一撃を可能にする。
内部にはミスリルの芯を仕込み、雷魔法の導電性能を高めた。
サバトン・ブーツ《黒鉄甲》
鍛冶師の秘伝により打たれた黒鉄製の戦闘用足甲。
重厚な防御性能と踏撃による破壊力を兼ね備え、攻防一体の設計になっている。
その名の通り黒曜のような光沢を持ち、戦場の泥や血を吸ってなお鈍く輝く。
内部にミスリルを用いることで軽量化と雷魔法の導体性を両立させ、足捌きと攻撃力を同時に高めた。
親父と僕は夜通し炉を起こし、素材を打ち込んで武具を完成させた。
「これで、僕の雷と認知加速の能力をフルに活かせる!」
僕の胸は期待と高揚でいっぱいになった。
こうして、僕の冒険者としての一歩が、専用武具と共に始まったのだった。
僕はすぐさまギルド登録に向かった。
ラスティアの街にあるギルド――その名は、
南端の砦
Fort of the South End
ギルドの中は冒険者で溢れかえっていた。
こんな最南端の街では、漁師か冒険者かと言ったところだ。
僕はすぐに受付に向かい、登録用紙を書いて差し出す。
受付嬢が微笑んで言った。
「はい、あとは実施試験だけですね。地下の闘技場で試験官と模擬戦をしてもらいます。
負けても、試験官からの評価が良ければF級冒険者からスタートできますよ」
レアは地下闘技場へと向かった。
「よう、お前がレアか。俺はC級冒険者、試験官のガンツだ! 槍を使うが、お前は何を使う?」
「まさかそのガントレットか?」
「もちろんだよ! 僕、最強だから!」
ガンツは笑った。
「あっははは……最強か、そいつはいい。俺のスキルは防御障壁だ。攻略出来るかな?」
受付嬢が始まりの合図をする。
「はじめ!」
合図と同時に、炎の槍が連続でレアに向かって飛んでくる。
だが、僕は身を反転させ、槍の持ち手を蹴り飛ばす!
「ちっ!」ぐらついたガンツが防御障壁を展開するが、
認知加速で瞬時に距離を詰めての回し蹴りで、防御障壁ごとガンツを吹き飛ばす!
「な、なんだこのガキ……」
ガンツは呆然としながら立ち上がる。
僕は両拳をガチンと合わせ、正拳突きの構えをとる。
「行くよ!」
「これが僕が考えた、必殺技!」
《雷迅拳・ゼロストライク》!
ガントレットに雷を集中させ、認知加速で瞬時に距離を詰める。
そのまま、ガンツの防御障壁に拳をぶち込み、突き破る雷の衝撃波を放つ!
「うわっ!?」
ガンツは防御障壁ごと吹き飛ばされ、全身に電撃が走る。
感電の衝撃で身動きが取れず、闘技場の床に叩きつけられる。
ガンツが倒れたままの闘技場。
観客や他の冒険者たちは、一瞬息を呑む。
「……こ、これは……」
ガンツは床に這いつくばりながら、必死に立ち上がろうとする。
ガンツがふらつきながらも僕を見下ろし、絞り出すように言った。
「……認める……お前、F級冒険者からのスタートで問題なし。いや、もはや……E級でも十分すぎる実力だ」
受付嬢がにっこり笑いながら、登録用紙に判を押す。
「おめでとうございます、これで正式にF級冒険者、レア・ハーミットさんです!」
僕は胸を張って深呼吸する。
「よーし! これで冒険者としての一歩が始まったんだ!」
闘技場には歓声が響き、僕の心は期待と興奮で満ちあふれていた。




