《渓谷の激突!クロス零始動》
アスカの森をさらに東へ進むと、
霧をまとったような大きな滝が見えてくる。
その滝が流れ落ちる渓谷――
断崖の奥には、オークたちの集落があるという。
ギルド掲示板に貼られていた依頼書が頭をよぎる。
【討伐依頼】
対象:ブラックオークおよび渓谷のオーク群落
推奨ランク:D以上
パーティー編成:三名以上
報酬金:三十万円
僕ら《クロス零》は、その依頼を受け、
渓谷の手前――オークの集落のすぐ近くまで来ていた。
渓谷の集落から、金属がぶつかる激しい音が響いてきた。
「……誰か、もう戦ってる?」
崖の上から覗き込むと、すでに数名の冒険者チームがオークの群れと交戦していた。
炎と怒号が入り混じり、戦場の熱気がここまで伝わってくる。
「やばっ! 依頼がなくなるにゃ!」
ミーニャがしっぽを逆立てて焦る。
「よし! ここは――小細工なしで突撃しよう!」
僕は拳を握り、ガントレット《零》に魔力を流し込む。
雷光がほとばしり、髪がふわりと浮く。
「いくにゃーっ!」
「こ、こわいけど……頑張るっ!」
三人の声が重なり、チーム《クロス零》は渓谷の戦場へと飛び出した――!
ミーニャが大地を蹴った。
彼女の《ツインヘリックス》が風を裂き、ねじれた刃がオークの胸を十字に切り裂く。
土魔法で足場を盛り上げ、その反動で跳躍――回転しながら頭上のオークへ蹴りを叩き込む。
「《雷迅脚・ゼロブレイク》!」
僕も地を蹴り、稲妻の軌跡を描きながら空中で回転、踵を落とした。
閃光が渓谷を照らし、オークの頭部が弾け飛ぶ。
渓谷の奥へ進むと、鬱蒼とした岩陰の向こう――
無数のオークたちがうごめいていた。
戦いの喚声、鉄の匂い、血の臭い。
「……こっちはこっちで、まだまだたっぷりいるね」
ミーニャが土を踏みしめる。
その瞬間、大地がうねり、彼女の足元から石柱が突き上がる。
「いくにゃっ!」
その反動を利用して跳躍、空中で《ツインヘリックス》を回転させると、ねじれた刃がオーク三体を同時に貫いた。
僕はその背後から雷を纏い、
「――《雷迅拳・ゼロストライク》!」
稲妻の拳が閃き、オークの胴体を貫いた。
アリエルが《スレッド・リーパー》を掲げる。
星型の杖先が淡く輝き、空中に魔力の糸が幾重にも広がった。
光糸が舞い、十数体のオークを包み込む。
次の瞬間――糸が鋭く収束し、
絡め取られたオークたちの身体が一斉に切り裂かれた。
血飛沫が散り、アリエルの頬に汗が伝う。
僕はガントレットを構え直し、
「いいね、三人の連携――面白いよ!」
その時だった――。
渓谷の奥から、地響きのような咆哮が響き渡った。
「グオオオオオオオォォッ!!!」
怒り狂ったブラックオークが、
鉄板の胸当てと巨大な戦斧を携えて飛び出してくる!
その肌は黒曜石のように黒く、瞳は血のように赤く燃えていた。
「出た……!あれが群れのボスだにゃ!」
ミーニャが身構え、尻尾をピンと立てる。
「で、でかい……! あんなの、どうやって……」
アリエルの声が震えるが、
その手はしっかりと《スレッド・リーパー》を握っていた。
僕は雷を纏い、地を蹴り稲妻の閃光が空気を裂いた。
《電光石火》——稲妻を帯びたレアの飛び蹴りがブラックオークに炸裂する!
「ここからが本番――《クロス零》、行くよ!」




