《魔力の糸で敵を切り裂く者》
「よし、僕の家でアリエルの武器を選ぼう!」
そう言って、僕たち三人はギルドを後にし、《鍛冶屋〈イヅナ〉》へと向かった。
「親父〜! 帰ったよ〜!」
扉を開けると、カウンターの奥で親父がやらしい“ニャンニャン雑誌”を読みながらコーヒーをすすっていた。
「おお〜、レア、おかえり」
満面の笑み。
「今頃出て来た発情期かよっ!」
思わず僕が突っ込むと、ミーニャが「にゃははっ」と吹き出し、アリエルも口元を押さえて笑っていた。
鍛冶屋の中に、笑い声が響く――。
「ど、どう? いい武器、ありそう?」
僕はアリエルに声をかけた。
すると、アリエルの耳がピクリと動き、足を止めた。
「……あ、これ……」
ナンバーズシリーズのNo.4、《スレッド・リーパー》。
彼女は慎重に手に取り、まじまじと見つめる。
「こ、これ……凄い……!」
「……これなら、戦える……かも……」
アリエルが手にしたNo.4《スレッド・リーパー》「魔力の糸で敵を切り裂く者」。
長さは彼女の身長ほどもある両手杖で、漆黒の杖身には銀色の細いルーンが刻まれている。
杖の先端は六芒星の形をした結晶で、魔力を込めると星の各頂点から光の糸が伸び、攻撃・拘束・防御・回復補助まで自在に操れる。
親父が目を細めて言った。
「エルフのおねーさん、いいの選んだな。そいつは高いぞ!」
それを聞いたミーニャが、くねくねと体を揺らしながらお色気ポーズを決める。
「おじさま〜、まけてにゃ!」
それを見たアリエルも、少し赤面しながら胸を支えて真似をする。
「ま、まけてほしい、にゃっ……!」
僕はため息交じりに呟く。
「何度も同じパターンに引っかかる親父じゃ…」
親父は鼻の下を伸ばしながら、ミーニャとアリエルの胸をちらりと見定めながら叫ぶ。
「売ったぁ〜〜〜!」
「売るのかよっ!!」
僕は思わずツッコむ。
鍛冶屋〈イヅナ〉の店内に笑いとツッコミが渦巻いた瞬間だった。




